2ntブログ
男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。

陸上部に所属する中学2年のカズキが部室を訪れたのは、部活動の時間も終わりかけた、夕方遅くなってからだった。
カズキは明るく元気な生徒だったが、成績が悪く、一昨日の抜き打ちテストでとんでもない点数を取ってしまったために、居残りの勉強を強いられていたのである。
部室の電気は消えており、外から見る限りでは、人の気配はしなかった。
陸上部には男子と女子、合わせて15人ほどが所属していたが、今日の練習はもう終わってしまったのだろうか。
カズキはとりあえず、部室のドアに手をかけてみた。すると意外にも、ドアの鍵は開いていた。

「あれ? 開いてる」

不審に思いながらも、ドアを開けた。
やはり部室の電気はついておらず、真っ暗で、カズキは電気をつけようとして、部室の中に入った。

ピシャッ!

カズキの背後で、部室のドアが勢いよく閉められた。
同時に電気がつき、カズキは目を細める。

「やっと来たわね」

部室の奥に、カズキと同じ2年生の女子部員マキが、同じく部員で1年生のユイが制服姿で立っていた。
さらに後ろでドアを閉めたのは、2年生のヨウコだ。

「な、なにしてんだ、お前ら。部活はもう終わったのか?」

「部活は今日は休みよ。緊急にね。もう、みんな帰った」

「休み? なんで?」

「それは、アンタが知ってんじゃないの?」

「そうそう。白々しいヤツ!」

「え? なんだよ。何のことだよ?」

ただならぬマキとヨウコの雰囲気に、カズキは動揺した。
とりあえず、二人はかなり怒っているようだったが、それがカズキとどう関係があるのか、まるで分からない。
この中学の陸上部には女子が多く、2年の男子はカズキ1人しかいない。3年生の半分は男子だったが、それも先日の大会を最後に引退してしまった。あとは1年生に3人ほどいるだけである。
自然と現在の陸上部は女子に牛耳られた形になっており、3年生引退後の新部長は、目の前のマキが、副部長には背後にいるヨウコが任命されていた。
マキは真面目で練習熱心な生徒だったが、かなりキツイ性格として有名で、黙っていれば大きな目をした、明るくてかわいいタイプだったが、一度口を開けば、彼女には教師でさえいい負かされることもあった。

「私たちはね、アンタをずっと待ってたの。遅いと思ったら、まさか居残りさせれてるとはね。これだから、バカズキには困るわ」

カズキは1年のころから、このマキとヨウコが苦手だった。二人はカズキと違って成績優秀で、陸上の大会でもマキは短距離走、ヨウコは走り幅跳びで、それぞれいい成績をおさめていた。
一方のカズキは、短距離走で大会に出ているものの、予選一回戦を突破したことはなく、勉強の方はさらに惨憺たるものだった。
そんなカズキを、マキとヨウコは「バカズキ」とあだ名をつけて、日頃から馬鹿にしていた。
カズキは持ち前の明るさで、ひどく落ち込むようなことはなかったにしろ、やはりこの二人とはあまり面と向かって話をしたくなかった。

「居残りのお仕置きは終わったの?」

「お、おう。まあな」

カズキはヨウコの言い方に、何か不穏な雰囲気を感じ取った。

「じゃあ、今度はこっちのお仕置きね」

「え? なんだよ、お仕置きって?」

カズキはわけがわからず、マキとヨウコを交互に見た。

「今日ね、部室に置いてあった、1年生の女子のユニフォームが無くなってたの。この、ユイちゃんのがね」

先ほどからマキの隣でじっとカズキを見つめている、1年生のユイを指した。
ユイは色白で線の細い、見るからにおとなしそうな女の子だった。しかし、しなやかで長い脚を持っていたので、短距離走とハードル走の選手に任命されて、以来、練習に励んでいる。

「え? ホントかよ。泥棒が入ったのか?」

「泥棒? フン! どんだけとぼけんのよ、アンタ!」

マキはカズキを鼻で笑って、見下すように睨みつけた。
ヨウコも背後でため息をついている。

「とぼける? いや、まさかお前ら、俺が盗ったっていうのかよ、そのユニフォーム」

「決まってんじゃない! ユニフォームは部室に置いてあったのよ。部室の鍵は隠してあって、それは部員しか知らないし、鍵が壊されたような様子もないの。てことは、部員の中に犯人がいるってことじゃない。つまり、アンタよ!」

恐るべき三段論法で、マキはカズキの有罪を決めつけた。
カズキはまったく身に覚えのないことに動揺し、全否定する。

「何言ってんだよ。俺がそんなことするはずないだろ! どこに証拠があるんだよ!」

「アンタ昨日、一番最後に帰ったでしょ。珍しく、居残り練習して。おかしいと思ったよ。バカズキが真面目に練習するなんて。意味ないのに」

ヨウコは吐き捨てるように言った。
確かにカズキは昨日、一番遅くまで練習して、最後に部室の鍵を閉めて帰った。

「それは、今日居残り勉強しないといけなかったから、昨日できるだけ練習しとこうと思ったんだよ。俺はいつも真面目に練習してるだろ! それだけでユニフォームを盗んだなんて、言いがかりだぞ!」

「どうだか。じゃあ、アンタが帰るときに、ユイちゃんのユニフォームはまだあったわけ?」

「いや、それは知らないけど…」

「いい加減にしなさいよ。ユイちゃんはね、昨日、確かに部室のロッカーに自分のユニフォームを置いて帰ったの。それが、朝練のときに無くなってるのに気がついて、すごい怖くなったのよ。昼休みになって、ようやく私に相談してくれたんだから」

マキの手はユイをいたわるように、その肩に置かれていた。
部長としての責任感が、カズキへの怒りに変わっているようだった。

「私たちも色々考えてみたけど、やっぱり陸上部には、アンタしかいないのよね。ユニフォーム盗むような男はさ」

「ユイちゃんは、まだ1年生なのよ。悪いと思わないの? まず、謝りなさいよ!」

まくしたてるマキとヨウコによって、すでに自分が犯人に仕立て上げられてしまっている状況に、カズキはどうしていいか分からなかった。
もともと頭の回転が早い方ではないが、この二人にかかれば、口喧嘩で勝つのは誰であろうと無理だった。

「ユイちゃん、ごめんね。こんなヤツが陸上部にいたせいで、怖い思いして」

「いえ…。あの…先輩、ユニフォーム、返してください。私、アレがないと大会に出られないんです」

1年生のユイまでもが、カズキが犯人だと信じこんでしまっているようだった。勇気を振り絞った様子で、カズキに頭を下げてくる。
カズキはもう、何がどうなっているのか分からず、とりあえず一刻でも早くこの場を離れたかった。




「もう、わけ分かんねえよ。俺、帰る!」

振り向いて部室から出ようとするが、その前にヨウコが立ちはだかった。
ヨウコはカズキとほとんど変わらない身長で、切れ長の目とショートカットの髪型が、どこか宝塚の男役ような雰囲気を出している美少女だった。
しかし今はその目が、冷たくカズキを見据えている。

「逃げるの? 逃げるってことは、罪を認めるってことね?」

「なんでそうなるんだよ。俺はユニフォームなんか知らないよ。もう一回、ちゃんと探したらいいだろ。どけよ!」

カズキはヨウコの肩を掴んで押しのけようとしたが、ヨウコもまた、カズキの腕を掴んで離さない。
二人で、押し合いのような形になった。

ズボッ!

と、カズキは自分の下腹部から、鈍い音がするのを聞いた。
ふと下を見ると、自分の股間にマキのスニーカーのつま先がめり込んでいるのが見える。
瞬間、カズキは強烈な痛みに襲われ、両ひざから力が抜けて、部室の床に尻もちをついてしまった。

「うえぇ…」

じわりじわりと、カズキの2つの睾丸から、重苦しい感触が全身に広がっていった。カズキは両手で股間をおさえて、背中を丸めてしまう。

「もう、やってらんない。早いとこ、吐かせちゃおう」

「バカズキのくせに」

二人は冷たい目で、苦しむカズキを見下ろした。

「おい、バカズキ! ユイちゃんのユニフォームは、どこにあるの? 言わないと、もっと痛い目に合うよ!」

カズキの苦しみなど意にも介さない様子で、マキは言い放った。

「だ、だから、知らないって言ってるだろ! ちくしょう、痛え…」

カズキは答えるのもままならない様子で、股間をおさえて苦しんでいる。
すると、ヨウコは苦しむカズキを尻目に、カズキが持っていた鞄を勝手に開けて、中を探し始めた。

「鞄には入ってないみたいね」

「おい! なんだよ! 勝手に人の鞄を開けるなよ!」

カズキはすぐにでも鞄を取り返したかったが、痛みが激しく、まだ足に力が入らない。

「うっさい、バカズキ。泥棒のくせに。ん? これ、この間のテスト?」

ヨウコはカズキの鞄の中から、くしゃくしゃになったテストの答案を取り出して、広げてみた。

「プッ! 見て。7点だって。こりゃ、居残りさせられるはずだ」

「マジで? ちょっと見せて。…ああ、こりゃひどいわ。アンタ、マジでバカズキなんだね。こんな問題、1年生のユイちゃんでもわかるよ。アハハハ!」

ヨウコから答案を受け取ったマキは、カズキの汚い字を見て、大笑いした。
ユイもまた、隣で小さく笑っている。
カズキの怒りは、頂点に達した。
まだ痛みは残っているものの、なんとか彼女たちに一矢報いてやろうと、意を決して立ち上がった。

「へー、立てるんだ。で、何か文句でもあるの?」

ブルブルと震えるひざをおさえて立ち上がるカズキの姿に、マキは少し驚いて見せる。
男のプライドと根性を見せてやろうという思いが、カズキを支えていた。

「この野郎! 返せ!」

カズキは全力を振り絞って、マキに掴みかかっていった。
しかしその努力もむなしく、無防備なカズキの股間に、後ろからヨウコの蹴りが突き刺さった。

バシン!

ヨウコの足は、カズキの金玉を正確にとらえた。前かがみになって腰が引けていたせいで、背後にいるヨウコから見れば、これほど狙いやすい的はなかったのである。

「ひえっ!」

カズキはまた、地面に這いつくばることとなった。

「はい、残念。大変だねー、男って」

「懲りないヤツ」

カズキは再び、両手で股間をおさえて、部室の床に転がってしまった。
先ほどのマキの蹴りのダメージがまだ残っているところに、ヨウコの強烈な背後からの一撃を受けてしまったのだ。カズキの金玉からは、先ほどを上回る強烈な痛みの信号が発せられていた。
横向きになって、ひざと頭をくっつけるように、丸くなる。つま先までピンと力が入って、細かく震えて、痙攣しているようだった。
そんなカズキの様子を、1年生のユイは、先ほどから目を丸くして見ていた。

「あの、先輩、どうなったんですか」

「ん? どうって、コイツ? 金玉蹴ったのよ」

何気なく言ってのけるマキに、ユイは少し動揺して、顔を赤らめた。

「あ、あの、急所の…ですか?」

「そう。男はさ、金玉蹴れば、イチコロだから。バカズキみたいな根性なしでも、一応男だから、痛いんじゃない? アハハ!」

マキはおかしそうに笑って、カズキの背中をつま先で軽く蹴った。
カズキは腹が立ったが、今は痛みに耐えることしかできない。

「ユイちゃんは、男子の金玉を蹴ったないの?」

「は、はい。私、そういうのは…」

ヨウコの問いに、ユイは顔を真っ赤にして答えた。

「そうなの? 面白いから蹴りなよ。アタシもヨウコも、しょっちゅう蹴ってるよ。男子って、金玉やればコロコロ倒れるから。超弱いよ」

「後で、コイツのを蹴りなよ。練習台に」

「あ、はい」

「いいね。そういえば、前にも一回、アンタの金玉蹴ったことあったね? アンタが、部室で変なことしてるときか」

カズキの脳裏に、金玉の痛みとともによみがえってくる記憶があった。




あれはカズキが1年生の時、誰もいない部室で着替えをしている時だった。陸上のユニフォームを着るときには、下着も専用のインナーをつけるので、下を全部脱がなければならない。カズキがまさにインナーをつけるために全裸になったところで、マキが部室に入ってきたのである。

「あ…!」
 
カズキは慌てて服で前を隠したが、完全にマキに見られてしまった。しかしマキは1年生のころから気が強く、少し驚いた顔をしただけで慌てる様子もなかった。
ジャージ姿のまま入口に立ち止まって、少しカズキを見つめた後、何か言おうとして、ツカツカと歩み寄ってきた。
折り悪く、カズキのスポーツバッグの中から、友達から初めて借りたグラビア雑誌がはみ出ていた。マキはカズキの側まで来て、それを発見すると、無言のままカズキを軽蔑したような目で見つめた。

「あ、あの…。着替え…」

カズキの言い訳に聞く耳を持つ気など、マキは毛頭なかった。

「変態!」

ゴスッ!

マキのひざ蹴りが、問答無用でカズキの股間に深々と突き刺さった。
カズキはそれまで金玉を蹴られたことなどなかったため、一瞬、何が起こったのか分からなかった。しかし、やがてこみ上げてきた猛烈な痛みに思考は停止し、マキの足元にひざまずくように崩れ落ちてしまった。

「部室で、エロいことするとか、最低だな!」

もだえ苦しむカズキにそう言い放って、マキは部室を出て行った。
ピシャリと閉めたドアの外には、部員が使う「着替え中」の札がかかっていた。


あれ以来、マキはヨウコとともにカズキのことを「バカズキ」と呼ぶようになり、部内の女子たちのカズキを見る目も、少し変わってしまったような気がしていた。
あの時もマキの誤解。そして今回も、誤解と呼ぶにも馬鹿馬鹿しい決めつけで、再び金玉を蹴られてしまったのだ。カズキは痛みと屈辱で泣いてしまいそうになるのを、かろうじてこらえていた。

「しばらくおとなしいと思ってたら、今度は人のユニフォームを盗むとはね。やっぱりバカズキの変態は治らないか」

「ホントだよね。ちょっと今回は、部長として本格的にシメてやろうと思ってるんだ。とりあえず、コイツ、また逃げようとすると思うから、服を脱がしちゃおうか」

「そうだね。いくら変態でも、裸で外には逃げられないでしょ」

二人はゆっくりと、カズキに手を伸ばした。
カズキは二人の会話を聞き、必死で抵抗する意思を示した。
金玉の痛みに耐えながら、残る力を振り絞って、全力で自分のズボンのベルトをおさえたのである。

「何してんの? 変態のくせに」

「そうそう。ホントは脱ぎたいんでしょ、女の子の前で」

二人は言葉でなぶりながら、カズキの制服を脱がしていく。くすぐったりしながら、あっという間に上半身は裸にしたが、カズキが必死で抵抗するため、ズボンだけは脱がすことができなかった。

「ちょっと! いい加減にあきらめなさいよ。バカズキが」

カズキは何と言われても、必死でズボンをおさえていた。

「ふーん。バカズキのくせに、生意気じゃない。でも、後悔するよ」

マキは不敵な笑いを浮かべて、カズキのそばにしゃがみ込んだ。

「ユイちゃん、よく見ててね。男を懲らしめるには、これが一番効くから」

そう言って、マキはおもむろにカズキの股間に手を伸ばすと、そこにある2つの塊を、ズボンの上からギュッと握りしめた。
カズキは瞬間、はっと目を見開いた。マキは意地悪そうな微笑みを浮かべている。

「ぐえぇぇ!」

マキがカズキの金玉を握る手に力をこめると、カズキは苦しそうに呻き始めた。

「どう、ユイちゃん? 男には、これが一番効くからね。覚えといて」

「は、はい」

ユイは思わずうなずいた。
カズキはその間も、喉の奥から絞り出すような声を上げている。

「あぐぐぐ!」

「おい、バカズキ! お前が抵抗するから、こうなるんだよ」

「そうそう。無駄な抵抗はやめて、さっさとズボン脱ぎな!」

「い…いやだ…!」

カズキに残された男のプライドが、断固として拒否していた。
マキとヨウコはカズキの予想外の抵抗に少し驚いたが、すぐに鼻で笑った。

「そう。それならもうちょっと、痛くしてあげようか? 言っとくけど、私はまだ、全然力こめてないんだからね。それ!」

マキがさらに強い力で、カズキの金玉を握りしめた。

「はうぅぅ!」

カズキは激痛でさらに背中を丸めて腰を引くが、マキの手を振りほどけるわけではない。マキの手首を握って抵抗するが、金玉を握られた状態では、力が入るはずはなく、意味がなかった。

「これで40パーセントくらいかなあ。もっといけそう?」

マキは苦しみにゆがむカズキの顔を見て楽しそうに笑い、さらに手のひらの中でグリグリと金玉をもてあそんだ。

「ふう…ふう…」

カズキの呼吸が荒くなってきた。
2つの睾丸から発せられる痛みは、下腹部全体に広がり、さらに胃の方にまで響いてきて、吐き気を誘う。重苦しく、それでいて電撃のようにしびれる痛みだった。

「あんまり意地はってると、金玉潰れるよ?」

ヨウコもまた、男の最大の痛みに苦しむカズキの姿を、面白そうに眺めている。

「あの…その、それが潰れたら、どうなるんですか?」

ユイは少し離れてカズキの様子を観察していたが、いかにも不思議そうな様子で素朴な疑問をぶつけた。

「え? 金玉が潰れたら? んー、どうだろう。女の子になるのかな?」

「バカズキが女の子になるの? ありえないね」

「だよね。まだチンポはついてるんだし、男のままなんじゃないの? まあでも、かわいそうだから、カズコちゃんって呼んで、少しは仲良くしてあげるか」

「そうだね。チンチンが勃たなくなるくらいのもんでしょ。エロいこともできなくなるから、ちょうどいいじゃない」

「そうか。じゃあ、潰しちゃおうか、こんな金玉。よーし!」

マキは嬉々として、さらに力をこめるそぶりを見せた。
カズキは3人の無邪気な会話に、背筋が寒くなる思いがして、慌てて声を上げた。

「ま、待って! 脱ぐよ。脱ぐから、もうやめて…」

カズキはついに降参した。
実際、睾丸の痛みは限界に達していたし、これ以上強い力で握られるとなると、想像もしたくない。
カズキの目には、痛みと悔しさで涙がにじんでいた。

「なーんだ。もうギブアップすんの? 最初から、抵抗すんなよな、バカズキ」

マキはちょっと残念そうな様子で、カズキの股間から手を放してやった。
カズキはすぐさま金玉の無事を確認するように、両手で股間をおさえたが、女の子たちにそんな男の気持ちと痛みが分かるはずはなかった。

「何してんの? 早く脱ぎなさいよ」

無情なほど冷静に、ヨウコは命令する。
カズキは痛みと恐怖に震えながら、ズボンのベルトを外して、ずり下げた。
白いブリーフが、3人の女子の前にあらわになる。
ユイは恥ずかしがりながらも、横目でチラチラと観察し、マキとヨウコは動じる様子もなく、カズキの下着を観察した。

「プッ。やっぱり、白ブリーフか。ダッサイなあ」

「何してんの? 早くパンツも脱ぎなよ」

え? と、カズキは下から3人を不思議そうな目で見た。

「全裸になるの。フルチンよ、フルチン。パンツ一丁だと、アンタくらいの変態なら普段着でしょ。また逃げちゃうじゃん」

「早くしてよ。それとも、今度は私に握られたいの?」

ヨウコはカズキのブリーフのもっこりした部分に、軽く手を当ててみせた。
カズキは死ぬほど恥ずかしかったが、先ほどの金玉の痛みはまだ鮮明に体に残っており、あれをもう一度経験するくらいなら、全裸になることを選ぶしかなかった。
カズキはついに、ポロポロと涙を流しながら、パンツを脱いだ。
同級生ばかりか、下級生の女の子にまで全裸姿を見られてしまうというのは、なんという屈辱だろうか。
しかしそれ以上に、金玉を潰されるのは恐怖だし、あの痛みはすべての選択肢を閉じさせるものだった。

「おいおい、泣いてんの? ウケる! バカズキ、泣いちゃった」

マキは楽しそうに笑った。
カズキは歯を食いしばりながら、全裸で部室の床にあおむけになった。
周りには3人の女の子たちが、自分の裸を見ている。
しかし最後の抵抗で、両手でイチモツだけは隠していた。

「なに隠してんの? 手、どけなよ」

「おい、バカズキ!」

カズキはやむなく、両手を放して、気を付けの体勢になった。
カズキのイチモツが、女の子たちの前にあらわになる。

「うわあ。相変わらず、小っちゃいチンポコだな。1年のころと、全然変わってないじゃん」

「弟のより、だいぶ小さい。毛も生えてない。ツルツルの、お子様チンポだね」

「ヨウコの弟って、小学6年生だっけ? ヤバいじゃん、バカズキ。小学生にチンポ負けちゃってるよ」

カズキは屈辱的な言葉を浴びせられても、言い返すことなどできなかった。

「まあ、バカズキだからね。しょうがないか。じゃあ、ユイちゃんのユニフォームをどこに隠したのか、正直に言ってもらおうか」

あまりの苦しみと恥ずかしさのために、忘れかけていた濡れ衣だった。カズキは最後に残った人間としてのプライドで、これは否定したかった。

「だから、それは俺じゃないって…ぐぎゃあ!」

マキが再び、カズキの金玉を握りしめた。



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「アンタ、まだ分かってないの? いい? ここから先は、アンタがウソをつくたびに、こうやって金玉を痛めつけていくからね。ホントに潰れたって知らないから。アンタみたいな変態の金玉なんて、潰れた方が世の中のためよ」

「ぐ、え…!」

カズキは苦しみにあえぐ。

「コイツ暴れるだろうから、もう縛っちゃおうか。なんか、縛れるものあるかな?」

「テーピングがあるよ。これで縛ろう」

「いいね。両手を後ろで縛るか」

マキがカズキの金玉を握ったまま、ヨウコが陸上で使うテーピングを取り出して、両手首をグルグルと縛りつけた。
テーピングは関節を固定するためのものだから、かなり丈夫で、カズキの力で引きちぎれるものではない。
カズキは抵抗したかったが、体を動かすたびに、マキにしっかりと握られた睾丸が引っぱられる形になってしまい、激しい痛みが体の自由を奪ってしまった。

「さあ、これで尋問が始められるわね」

両腕が後ろで縛られると、カズキはまさしく何の抵抗もできない状態になってしまった。
3人の女の子たちに、自分の急所を晒し続ける恥ずかしさと恐怖は、言い表しようもないものだった。

「そうだ。ユイちゃんに、男の金玉の仕組みを教えてあげる。見てて」

ヨウコはそう言って、カズキの股間の側にしゃがみこんだ。
ユイは先ほどまで恥ずかしそうに、カズキの裸を直視できないでいたが、やがて慣れ始めたのか、カズキの側まできてしゃがみこんだ。
ユイはおとなしい子だったが、同時に年頃の女の子として、男の体への好奇心は強く持っているのだ。

「これが、男のチンチン。チンポとかポコチンとかとも言うね。コイツのは小さいけど、大人になると、もっと大きくなるの」

ヨウコには小学生の弟がいて、特に仲が悪いというわけではないのだが、気の強い姉に、弟はずいぶん被害を受けているらしい。
弟を裸にして遊んだりしているうちに、ヨウコは男の体のことに詳しくなっていったようだ。

「あ、はい。なんか、カワイイですね。ソーセージみたい」

カズキは次々と投げつけられる屈辱的な言葉に、顔を真っ赤にして耐えていた。
すぐにでもうつ伏せになって隠したかったが、そんなことをすれば、またどんなに金玉を痛めつけられるか、わかったものではない。

「で、この下にあるのが、金玉袋。この中に、金玉っていう玉が二つ入ってるの。ほら、触ってみて」

ヨウコはおもむろに、カズキの金玉袋を指でつまんで、ユイに示した。

「え、いいんですか?」

ユイも恐る恐る、手をのばしてみる。
ユイがカズキの金玉袋をつまんでみると、意外なほどヒヤリとした温度と、ブヨブヨとした感触が伝わってきた。
そのまま手のひらで掴んでみると、中でコロコロと転がる、堅い楕円形の玉を発見した。

「あ! これが、金玉ですか? 二つある。」

ユイはつい、羞恥も忘れて、嬉しそうに叫んだ。

「そう、それ。意外と弾力があるでしょ」

「はい。なんか、コリコリしてます。ちゃんと、左右の袋に一個ずつあるんですね。面白い。これを蹴られると、痛いんですか?」

ユイは無邪気に言いながら、カズキの金玉を軽く揉み続ける。
先ほどまでマキの強烈な力に握られていた金玉も、ユイの柔らかい手の感触に触れたことで、心地よいものを感じつつあった。

(ヤバイ!)

カズキがそう思った時には、すでに男のスイッチが入ってしまった後だった。
性格はキツイとはいえ、ルックスの面では申し分のない陸上部の美少女3人が、自分の全裸を見て、金玉を揉みしだいている。
痛みと恐怖で忘れかけていたが、これほど恥辱的な興奮をそそる場面は、カズキの人生にはかつてなかったことだった。

(ヤバイ! 勃っちゃうよ)

そう思った時、カズキのペニスはすでに膨らみつつあり、ヨウコたちがそれに気がつかないはずはなかった。

「あれ? なんか、先輩のチンチンが…」

「あ! 勃ってきたね。おい、バカズキ! なに考えてんの!」

「あ、これ、勃ってるっていう、アレなんですか? どうしよう…」

そう言いつつも、ユイは金玉を揉む手を離さない。
カズキの勃起は、もう止める術がなかった。

「お仕置きされてんのに勃起するとか、マジで変態だな。キモい、バカズキ! しかも、勃っても全然小さいし」

マキはしゃがみこんで、カズキのペニスを指で弾いた。
確かにカズキのペニスは、勃起してもさほどサイズは変わらず、しかも皮を被ったままだった。

「うう…。しょうがないだろ! なんか、自然となるんだよ。もう、離してくれよ」

「ユイちゃん、金玉が痛いかどうか、それ、握ってみたら?」

ヨウコはカズキを無視して、ユイが握ったままの金玉を指差した。

「え? いいんですか? さっき、すごく痛がってたから…」

「大丈夫、大丈夫。こんな変態、ちょっと懲らしめた方がいいよ。ユイちゃん、ユニフォームを盗られてるんだよ?」

「あ、はい。…いいですか?」

ユイは律義にカズキの顔を見て確認するが、カズキは当然、必死に首を横に振る。

「バカズキも、ユイちゃんに金玉握ってもらって嬉しいよね? アンタいつも、ユイちゃんが練習してるとこ、エロい目で見てたじゃない」

カズキはギクッとして、マキの方を見た。

「ハハッ! 何、その顔? バレてないとか思ってた? 馬鹿じゃないの? アンタみたいな変態、2年の女子はみんな警戒してるんだからね。こないだ、ユイちゃんがユニフォーム着てたときも、後ろからお尻をジッと見てたでしょ。エロい目で!」

カズキはまずいと思ったが、心当たりのあることなので否定もできず、ユイの方を見ると、ユイは驚いた表情で、カズキの方を見ていた。
やがてカズキと目を合わせると、恥ずかしそうにうつむいてしまう。

「ゴメンね、ユイちゃん。近いうちに注意しようと思ってたんだけど、まさかこんなことするとは思わなかったから」

カズキは再び、恥ずかしさで顔を真っ赤にしてしまった。
確かにユイはカズキの好きな女の子のタイプで、練習中に密かに目で追っていたことはある。
陸上部の女子のユニフォームは、ビキニの水着と間違えるくらいピッチリとした面積の狭いもので、女子は下着をつけずにそれを着用するため、年頃の男子にとっては、相当刺激の強いものとなっている。
それを週に一度、タイムを計測するときには、全員が着用することになっていた。その日は、カズキにとって密かな楽しみとなっていたのである。
ユイのすらりと長く伸びた、白い太もも。スタートラインに構えたときの、美しいヒップライン。ハードルを飛び越えるときに垣間見える股間のしわなど、カズキはユイの入部以来、さりげなく目に焼き付けておいて、夜には家で自慰に励んだことがあった。
そんな自分の心の内をマキたちに見透かされて、カズキはまた死にたいくらい恥ずかしくなった。
一方のユイは、初めて知らされるカズキの自分へのいやらしい欲望を、顔を伏せて黙って聞いていた。

「だから、ユイちゃん。遠慮しないで、金玉握り潰しちゃいな。そうすれば、もうユイちゃんのことを変な目で見る事もなくなるから」

「…はい! 私、潰してやります!」

ユイは突然顔を上げて、大きくうなずいた。
カズキを見たその顔は、恥ずかしさと怒りで満ちている。

「ちょ、ちょっと待って…」

「ええい!」

カズキの叫びも空しく、ユイはカズキの金玉を、右手で思い切り握り込んだ。

「ぐえぁぁ!」

電撃のように走る痛みに、カズキは背中をのけぞらせて反応した。
さきほどまで優しく撫でてくれていたユイの手は、一転して万力のように強烈にカズキの金玉を締め上げている。
マキやヨウコと違って、不器用ではあるが、手加減のない握りに、カズキは泣き叫んでしまった。

「うおお! やめて! 放して!」




「ユイちゃん、ダメよ。放さないで。握り潰しちゃえ!」

「はい! んんっ!」

ユイは怒りを込めて、さらに金玉を握りしめる。
カズキは動かない体をくねらせて逃げようとするが、マキとヨウコがしっかりとおさえているため、逃げられない。

「放して! 放してぇ!」

カズキはボロボロと涙を流し、叫んだ。

「私のユニフォーム、返してください!」

「だ、だから、それは、俺じゃないって…はうぅう!」

「まだ、そんなこと言うんですか! えいっ! えいっ!」

ユイは泣き叫ぶカズキを見ても躊躇せず、金玉を握り続けた。
すると次の瞬間、グリッと、カズキの金玉がユイの手の中を泳いで、すり抜けてしまった。

「ううっ!!」

短い叫び声を上げて、カズキはビクッと体を大きく震わせた。今までとは段違いの痛みが、カズキの睾丸を襲ったのだ。

「あれ…? 金玉、潰れちゃった?」

ユイは自分の手の中に金玉が無いのを感じると、ハッと我に返って、手を離した。

「ううん。これは、玉が逃げたんだ」

ユイの様子とカズキの青ざめた顔を見て、ヨウコは言った。

「え? 逃げた…って?」

「金玉って、コリコリして堅いようでも、思いっきり握ると、形が変わるみたいなのよ。そうすると、手の隙間からスルッと逃げちゃう時があるの」

「え? でも、手に隙間なんて…」

確かにユイは思い切りカズキの睾丸を握りしめていて、その右手にはわずかな隙間しかなかった。とても、金玉が抜けられるような大きさではない。

「そう。小さな隙間でも、逃げちゃうことがあるの。その分、金玉の形が変わって、ものすごい痛いらしいんだけどね」

「はあ…。大変なんですね、金玉って」

ユイは先ほどの怒りをすでに忘れ、自分にはついていない金玉という不思議な器官の得体のしれない機能に、素直に感心していた。
一方のカズキは、金玉が変形したことによる猛烈な痛みに、体を震わせていた。
ヨウコの言うとおり、今までとは段違いの痛みである。
すぐにでも両手で金玉を守りたかったが、縛られているため、それもできない。ただ内股になって、脂汗を流して、この地獄のような痛みに耐えることしかできなかった。

「さすが、ヨウコは金玉博士だね。ハハハ!」

「やめてよ。弟ので遊んでるうちに、いつの間にか覚えただけなんだから」

「それにしても、しぶといなあ、コイツ。まだ、自分の罪を認めない気なんだ」

「そうだね。これじゃあ、ユイちゃんのユニフォームを取り返せないな」

「ユイちゃんゴメンね。陸上部の部長として、ユニフォームは必ず取り返してあげるから。ねえ、聞いてんの、バカズキ! 言っとくけど、早めに白状しちゃった方が、痛みが少なくて済むんだからね!」

「アンタがユニフォームのありかを白状するまで、私たちは尋問をやめないからね」

尋問というより、徹底的な拷問だった。
カズキは金玉の痛みに震えながら、か細い声でつぶやいた。

「俺は…知らないって…」

「もう! まだ言ってんのか! ねえ、コイツ、ちょっと立たせよっか。金玉握るのは、逆に喜んでんのかも。変態だから。立たせて、蹴りを入れよう」

「そうね。ユイちゃんも、手伝って」

「はい」

3人の勝手な判断で、カズキはさらなる拷問を受ける事になった。
もちろんカズキの体は、まだ立つことなどとてもできない状態だったので、3人の女子に抱えられて、無理やり立たせられることになる。

「重たいなあ! アンタ、ちょっとは自分で立ちなさいよ。男でしょ! いつまでも痛がってんじゃない!」

マキの無茶苦茶な命令にも、カズキは反論する気力がなかった。
男だけが持つ金玉の痛みを、女の子たちに説明するのは不可能だったし、口答えするたびに痛めつけられるなら、もう出来る限り沈黙していようと思った。

「ねえ、これを使えばいいんじゃない? これをあそこの柱に通せば」

ヨウコはふと、ロッカーに置いてあったトレーニング用のゴムチューブを手に取った。
引っぱって瞬発力を鍛えるためのもので、自転車のチューブほどの太さと丈夫さがある。これを壁際にあるむき出しの鉄骨の柱に通せば、カズキ一人くらいは余裕で支えられそうだ。

「いいじゃん。そうしよ、そうしよ」

女の子たちは驚くべき手際の良さで、恐怖の拷問セットを整えていった。
両腕を背中で結ばれたカズキの両脇に、トレーニング用のチューブを通し、さらにそれを柱にくくりつけて、カズキを柱に寄りかからせる形を作った。
さらにカズキの足元にハードルを横倒しに置いて、その両端にカズキの両足をテーピングで結びつけて、足を閉じることができないようにする。
金玉の痛みを知らない女の子だけが作りだせる、情け容赦ない拷問場所が出来上がった。

「さあ、これで思いっきり金蹴りができるね」

「私たち、今日練習してないから、動きたくてしょうがなかった」

嬉々として語るマキとヨウコの姿を、カズキは涙ぐんだ目で見ていた。
すでにカズキの金玉は十分痛めつけられている。しかもそれは、正当な理由もなく、まったくの濡れ衣によるものだった。さらに彼女たちは、その濡れ衣を白状させるために、さらに厳しい拷問を始めると言う。
カズキは自分がいったいどうすればこの地獄から解放されるのか、見当もつかなかった。

「おい、お願いだから信じてくれよ。ユニフォームは、ホントに知らないんだよ。そりゃあ、俺も部活中にちょっとはエッチなこととか思ったりしたけど、それだけなんだよ。ホントに何もしてないんだよ」

哀願するように、カズキは女の子たちに訴えかけた。
真実、カズキはユニフォームなど盗ってはいなかったが、女の子たちは、カズキの言葉を信用するつもりなど欠片もなかった。

「今さら何言ってんの? 私たちが知りたいのは、アンタがユイちゃんのユニフォームをどこに隠してるのかってことだけなんだけど。家にあるの? 学校に隠してあるの?」

「第一アンタ、まだユイちゃんに謝ってもいないじゃない。許してもらおうとするなら、まず謝りなさい!」

「だからあ。俺じゃないんだって。謝るとかじゃないじゃ…うげぇ!」

カズキが言い終わらないうちに、マキの足がカズキの金玉を蹴りあげた。
スニーカーのゴツゴツした感触が、カズキの金玉の痛みをえぐり出す。

「まーだ、そんなこと言うか!」



「あの、先輩。もう謝るとかは、私、気にしないので、とにかくユニフォームだけ返してくれませんか? アレがないと、困るんです」

股間を手で守ることも、両足を閉じて防ぐこともできなくなってしまったカズキは、ただ冷たい柱に寄りかかって、痛みに震えることしかできなかった。

「優しいね、ユイちゃんは。でも、こんなヤツに優しくすることないよ。こんなヤツはこうして、懲らしめてやればいいの!」

ヨウコはそう言って、右足のスニーカーと靴下を脱ぎすて、大きく振りかぶって、カズキの金玉を足の甲で蹴りあげた。

パチーンッ!!

と乾いた音がして、カズキの金玉袋が、大きく跳ね上がった。

「えぐッ!!」

カズキの呼吸が一瞬止まって、ひざから力がガクンと抜けた。
しかし両脇をチューブで支えられているため、ひざをつくこともできず、踵を浮かせた状態で、プルプルと震えている。

「おお、いい音! さすが、ヨウコ」

「ユイちゃん、見えた? 金玉を蹴るときはね、下から蹴りあげるの。前から蹴ると、チンチンに当たって、大して痛くないのよ。下から、玉だけを狙えばいいよ」

「軽く蹴るのがコツだよね。足首の力を抜いて、スピードを出す感じで」

「は、はい」

マキとヨウコの解説が続いている間も、カズキは男の痛みと必死に戦っていた。金玉を蹴られるたび、最初は鋭い痛みが走り、次に重苦しい痛みが、全身にじわじわと広がっていく。ひざと全身の力が抜けて、立っていられなくなるのだ。
何度蹴られても慣れるということはなく、蹴られるたび、男であることを心から後悔するような思いをすることになるのだ。

「ユイちゃんも蹴ってみなよ。裸足の方が、感触が分かりやすくていいよ。狙いも付けやすいし」

「あ、はい。じゃあ…」

ユイは言われたとおりに裸足になって、カズキの前に立った。
ヨウコがカズキの側によって、金玉を指差しながら、説明を始める。

「ここね。この金玉を狙って」

「はい! え…と…下から。こうかな…」

ユイは素足で、まずはカズキの金玉に狙いを付けるため、ピタピタと軽く当ててみた。
ユイの足の甲はカズキの金玉袋を持ち上げて、先ほどまで靴下に包まれていたその暖かい体温が、カズキに伝わる。

「あの、これって、右と左と、どっちがいいんですか?」

ユイがまたも、無邪気な顔で素朴な疑問をぶつけた。

「えー、どっちだろ。考えたことなかったな。バカズキ、どっちが痛いの?」

カズキはユイの素振りに、ただただ恐怖を感じていたが、不意に質問されて、叫ぶように答えた。

「知らないよお。もう、やめてくれよお。右も左も、どっちも痛いんだよお。お願いだから…」

「うん。どっちも変わらないみたいだけどね。両方蹴っちゃいなよ、ユイちゃん」

「はい!」

3人とも、カズキの言葉に耳を貸す気はまるでなかった。
ユイはしなやかな長い右足を下ろすと、じっとカズキの金玉を見つめて、マキたちの教え通り、力を抜いて、スピードを重視した蹴りを放った。

「えい!」

パチーンッ!!

またも乾いた音がして、ユイの蹴りは、きれいにカズキの金玉袋を跳ねあげた。
ハードル走を練習し、日頃から柔軟体操を怠らないユイの蹴り足は、カズキの金玉にヒットした後もその勢いを殺さず、カズキの胸のあたりまで振りぬかれた。

「あっ!!」

カズキは先ほどと同様、短い叫び声をあげて、息を詰まらせた。
ユイの足に捉えられた金玉袋は、そのままユイの足の甲に乗り、ちぎれるほどに上に跳ねあげられた。裏側にある副睾丸までえぐるようになぞられ、やがて定位置に戻ってきたあとも、まだブルブルと震えていた。

「やった! ユイちゃん、やるう!」

「キレイに入ったね。これは効くよ」

「は、はい! ありがとうございます」

ユイは、思った以上にうまく蹴りが入ったことが、自分でもわかった。
足の甲には、まだカズキの二つの睾丸の感触が、しっかりと残っている。
カズキの痛みこそ、生き地獄そのものだった。

「うっ! ぐえっ!! うえっ!!」

もはやカズキの全体重は、両脇のゴムチューブが支えることになり、その食い込みも相当なものだったが、それすら金玉の痛みに比べれば、針で突いたほどのものだった。
神経の集中する副睾丸をえぐられたカズキの金玉は、今日最大の痛みの信号を発し、それはもはや下腹部だけでなく、頭の芯まで痛みで覆うほどの強烈で重苦しい激痛の波だった。

「今、ユイちゃんの足が、金玉袋の裏側に入ったよ。私もよくわかんないけど、そこが一番痛いポイントらしいの。男はね」

「そ、そうなんですか? …先輩、すいません。痛かったですか?」

つい、頭を下げるユイ。
当のカズキは痛かったどころではなく、意識が朦朧として、気絶寸前だった。
だらしなく両脇でゴムチューブにぶら下がり、半分口を開けて、涎をたらしている。

「さすが、ユイちゃんは、陸上部の期待のエースだよね。おい、バカズキ! 相当痛かったみたいだね? どのくらい痛いのか、私らには分かんないけどさ」

マキは鼻で笑って、カズキの顔を覗きこんだ。
涙と鼻水と涎で、カズキの顔はぐしゃぐしゃになっている。

「うわっ! 汚なっ! アンタ、そんなになっても、まだとぼけるつもりなの? もう一発、ユイちゃんに蹴ってもらう? それとも私?」

カズキは終わることのない金玉の痛みに苦しみながら、それでも何とか声を振り絞って、哀願した。

「ホントに知らないんだよお。勘弁してくれよお。金玉、潰れちまうよお」

そんなカズキを見て、3人は一瞬、呆気にとられて顔を見合わせた後、声を上げて笑った。

「アハハハ! 何、その顔! 情けな! やっぱ、男って弱いなあ。ちょっと金玉蹴れば、すぐこんなんだよ。ハハハ!」

「潰れちまうっていうか、潰してるからね。ハハ! 今ごろ気づくなって」

「先輩、ちょっと大げさですよ。もうちょっと男らしくしてください。フフフ」

女の子たちの笑い声が、カズキには遠い世界のことのように聞こえた。
このまま、自分は金玉を潰されてしまうのか。
しかし、それで気絶して、今のこの痛みから解放されるとするなら、もうそれでもかまわない。
そんなことをぼんやりと考えていると、再びあの痛みが股間から襲ってきた。

ドスッ!

マキのスニーカーが、カズキの金玉を恥骨の間に押しつけるように蹴りあげてきたのだ。

「ふッ!」

もはや叫び声を上げる力もなく、ただ、下から突き上げられるように息を吐き出すことしかできなかった。

「何、寝ようとしてんの? 起きて! カズキくん!」

マキがおどける。
間髪いれず、ヨウコがまた素足で金玉を跳ねあげた。

パチーンッ!

「まだまだ、こんなんじゃ潰れないから。安心して」

「先輩、ユニフォームを返して下さい!」

ユイもまた、慣れた様子で金玉の裏側をえぐるような蹴りを当ててくる。
カズキの地獄は、その後、10分ほど続いた。


「うわあ。なんか、金玉、腫れてきたね。赤くなってない?」

「うん。蹴り続けると、こうなるみたい。触ると、熱いよ」

「そうなんですか? 大丈夫なんですか?」

10分後、3人に蹴られ続けたカズキの金玉は、内出血を起こして、真っ赤に腫れあがってしまっていた。
カズキは絶え間ない痛みに、意識が飛びそうになっていたが、その度に金玉を跳ねあげられ、再び意識を戻される。その繰り返しで、もはや何も考えられないようになってしまっていた。

「まあ、大丈夫じゃないの? たかが小っちゃい玉二つだし。寝れば治るよ。ねえ、バカズキ。アンタ、まだユイちゃんのユニフォームがどこにあるか、言わないつもりなの?」

「これ以上やると、ホントに潰れるよ。まあ、私たちはかまわないけど」

カズキは痛みと吐き気にえづきながら、絞るようなか細い声を出した。

「もう、やめて…。俺がユニフォーム、盗りましたから…。ごめんなさい。もう、許して…」

これ以上の苦しみを与えられるよりは、泥棒の汚名を着る事を、カズキは選んでしまった。
まったく身に覚えのないことでも、今のこの状況から解放されるのであれば、喜んで受け入れる。そういうところまで、カズキは追い詰められていた。

「まったく! 初めからそう言えばいいのに」

「そうそう。てか、アンタが盗ったのは、もう分かってるから。早く返しなさいって言ってんのよ」

ため息交じりで、二人はカズキに問いただした。
カズキはユイのユニフォームなど持ってはいなかったが、こうなった以上、弁償するしかないと思った。

「ユニフォームは、捨てちゃいました…。ごめんなさい…。弁償しますから、許して…」

「ええ! 捨てたって? どういうことよ、バカズキ!」

マキの剣幕に、カズキは再び怯える。

「すいません。すいませんでした…。弁償するから…」

マキはその姿に、ため息をついてユイを振り向いた。

「ユイちゃん、コイツ、ユニフォーム捨てちゃったって。どうする?」

「あ…はい…。捨てちゃったんですか。どうしよう…」

ユイは本当にショックなようで、涙を浮かべて顔を伏せた。
そんなユイを見て、マキとヨウコは難しい表情を浮かべる。

「どうしようか。弁償してもらうのは当然として、やっぱり金玉を一個くらい潰しとくか」

「そうだね。ちょっと本気で思い知らせないと、コイツはダメかもね」

いとも簡単に相談する二人の様子に、カズキは慌てた。

「や、やめて! 謝ってるだろ! 弁償するから。明日、買ってくるから!」

「うるさい! アンタが悪いんでしょ! 謝って済む問題じゃないのよ! だいたい、なんで捨てる必要があるのよ。アンタまさか、変なことにユイちゃんのユニフォームを使って、汚したりしたんじゃないでしょうね!」

マキの言葉に、ユイはハッと顔を上げて、再び大きく泣き始める。

「そ、そんなこと、ぜんぜん言ってない…。だいたい、ホントは俺は盗ってなんか…」

「また、そんなこと言うか。よし、私に任せて。一度、本気で潰してみたかったの。今だったら、ひざを押し付けて、グリッとやれば、一発でしょ」

ヨウコは容赦なく、カズキの前に立って、ひざ小僧をカズキの腫れあがった金玉に押しつけた。

「やめて! やめて!」

泣き叫ぶカズキ。
そのとき、マキの制服のポケットから、携帯の着信音が鳴った。
マキはすぐに携帯を取り出してみると、もう一人の副部長、2年生のシオリからだった。

「もしもしぃ? シオリ? 何かあった? …うん、そう。今、バカズキをシメてるところ。シオリもくる? …え? 何? ちょっと、バカズキ、黙れ!」

カズキのうめき声のせいで、マキは電話がよく聞き取れなかったらしい。
ヨウコはとりあえずカズキの股間からひざを外し、マキの方を見た。
カズキはぐったりとして、声を上げるのをやめた。

「だからぁ、ウチが間違えて、ユイちゃんのユニフォーム、持って帰ってたみたいなんだぁ。ほら、ウチのユニとユイちゃんのって、色がおんなじじゃん? だからぁ、ウチが昨日、洗濯しようと思って持って帰ってたのが、ユイちゃんのだったみたいなんだぁ。ウチのママが気づいて、教えてくれたわけ。でも、もう洗濯しちゃったらしいんだけどぉ。マジウケるよね」 

「マジで? お前、ふざけんなよ。こっちはユイちゃんが泣いちゃって、大変なんだよ」

「だから、ゴメンってば。ユイちゃんにも謝っといてくれるぅ? あ、バカズキにも? じゃあね」

シオリは一方的に電話を切った。

「なんだよ、アイツ! 信じらんない!」

マキは怒りながら電話を切った。

「どうしたの? シオリも来るの?」

「ううん。ユイちゃん! ユイちゃんのユニフォーム、シオリが持って帰ってたんだって。ゴメンね。ユイちゃんのユニフォーム、シオリのと色が一緒だったから。でも、それでも間違えないんだけどね、普通は」

ユイはマキの言葉を聞いて、泣き顔のまま顔を上げた。

「え? じゃあ…私のユニフォームは…?」

「明日、シオリが持ってくるって。シオリのお母さんが、洗濯しちゃったらしいよ。ウケるよね」

「あ、ありがとうございます。良かった…」

「そっか。良かったね、ユイちゃん。シオリの馬鹿。明日、ちゃんと言っとくから」

3人はカズキを忘れたように明るく喜びあった。
カズキはぼんやりとそれを聞いていたが、やがてゆっくりと顔を上げて、3人に声をかけた。

「あ、あの…。ほどいて…ください…」

「あ! バカズキ!」

「ああ、忘れてた。ゴメン、ゴメン」

3人は我に返り、カズキの拘束を解いてやった。
カズキはチューブとテーピングを外されると、すぐに部室の床に横たわり、ようやく自由になった両手で腫れあがった金玉をおさえた。
マキたちはさすがに少しバツが悪そうに、カズキの服を拾って、裸のカズキにかぶせてやった。

「ま、まあ、ユイちゃんのユニフォームも見つかったし、結局、良かったんじゃない?」

「そうそう。バカズキがエロいことをしてたのは、事実なんだし。疑われるようなことをしてるのが、良くないよね」

「先輩…すいませんでした…。金玉、まだ痛いですか?」

ユイがカズキを覗きこむと、カズキは口をパクパクとさせて、何か言っているようだったが、ユイにはそれは聞き取れなかった。

「いいの、いいの。たかが金玉くらい、すぐ治るって。男なんだから。ね、バカズキ?」

「金玉、ちょっと大きくなって、逆に良かったじゃない。ね?」

マキとヨウコは、無理やり自分を納得させるように言った。

「じゃあ、私たちは先に帰るから、バカズキ、鍵を閉めていってね? 一人で帰れるでしょ?」

「明日は、部活休んでもいいから。先生には言っとくね」

「すいません、先輩。お先に失礼します」

3人の女の子たちは、どこか他人事のように、金玉の痛みに呻くカズキを置いて、部室を出ていった。
カズキがなんとか立ちあがって歩けるようになったのは、それから2時間ほど経った、夜も遅くになってからのことだった。

終わり。



中学一年生の小林ヒロトがこの学校に転校してきたのは、親の仕事の都合によるもので、ヒロトにとっては小学校時代から数えて四回目の転校で、特に珍しいことではなくなっていた。
ヒロトは中学生にしては背が小さく、色白で華奢な体つきをした、一見してひ弱そうな男の子だった。
最近は少なくなったが、もっと小さい頃は、女の子に間違われることもあった。本人もそれを気にして、日頃から男らしくしようと心がけているつもりだったのだが、転校の多い学校生活では、一つの部活動に打ち込むようなこともできず、ヒロトは相変わらず、か弱い中性的な印象を与える男の子だった。

「ヒロト君、一緒に帰ろう」

転校から三日目。ホームルームが終わった後のヒロトに声をかけてきたのは、学級委員の広野ユウマだった。
ユウマは明るくて快活な少年で、学級委員らしい、どこか大人びた落ち着きを持っていた。ヒロトの転校初日から真っ先に声をかけてきてくれたのは、ユウマである。
それが学級委員の責任感からくるものだとしても、ヒロトには純粋にありがたかった。

「うん。帰ろう」

ヒロトとユウマは、靴箱のある玄関にいたるまでの渡り廊下を、話しながら歩いた。

「ヒロト君、学校にはもう慣れた?」

「うん…。まだかな。でも、楽しいよ。みんな、声をかけてくれるし」

「そっか。でも、ウチのクラスの人たちは大人しいから、もっとヒロト君から声をかけてくれてもいいかもよ」

「うん。そうする」

他愛のない会話をしていると、背後から声をかけてくる者がいた。

「ユウマ君」

ユウマはその声に、ハッとして振り向いた。
ヒロトもつられて振り向くと、そこには襟に三年生のバッジを着けた、女子生徒が立っていた。

「と、東条さん。こんにちは」

ユウマは突然、全身を強張らせて、この女子生徒にあいさつした。

「こんにちは。今、帰りなの?」

「は、はい。そうです」

ユウマはやはり、極度に緊張している様子だった。
東条アカネは、モデルのような長身とグラマーなスタイルを持った美しい女子生徒だった。大きな瞳は少し茶色がかり、ハーフのような雰囲気で、スッと通った鼻筋もまた、日本人離れしている。艶のある唇は常に微笑を絶やさず、しゃべるたびに白い歯が輝いて見えた。長い黒髪には美しくウェーブがかかり、彼女の小さな顔を縁取るようにして、胸まで伸びている。
その胸は、制服の上からでも分かるほど豊満なもので、およそ中学生のものとは思えなかった。
ヒロトは今までにこれほど美しい女性を見たことがなかったので、つい見とれてしまった。

「そう。今日はこれから、2年生の男の子たちと遊ぶの。お天気も良さそうだしね。フフッ」

アカネはユウマの強張った顔を見て、笑いかけた。
そして隣にいたヒロトに気がつくと、ヒロトにもまた、にこやかにほほ笑んで見せた。

「あなたは…初めてお会いするかしら。ユウマ君のお友達?」

「は、はい。一昨日、転校してきました。小林ヒロトです。は、初めまして…」

ヒロトは急に話しかけられて動揺し、早口に叫んでしまった。
アカネが近くに寄ってきただけで、いい香りが辺りに広がり、なんとなくうっとりとした気分になってしまう。
アカネはそんなヒロトの様子に、歯を見せて笑った。

「そう。初めまして、ヒロト君。私は三年の東条アカネといいます。よろしくね」

アカネは軽く会釈をし、ヒロトもまた、慌てて会釈を返した。
ヒロトが顔を上げたちょうど目の前に、アカネのバストが揺れており、ヒロトは驚きながらも、不器用な様子でそれに見入ってしまっていた。
アカネはそんなヒロトの視線に気づいているのかどうか、微笑は絶やさなかった。

「ユウマ君。今日は約束があるんだけど、明日、私に付き合ってくれないかしら? また、ユウマ君と一緒に調べたいことがあるの」

ユウマはそう言われると、ヒロトの目にも分かるくらい動揺して、顔を強張らせた。

「あ、あの…」

「お願い、ユウマ君」

アカネはユウマの手を握って、懇願するような目で見る。
ユウマはそんなアカネを見て、やがて諦めたように目を伏せた。

「はい…。わかりました」

「やったぁ。助かるわ、ユウマ君」

アカネは大げさに両手を振って喜んだ。大きな胸が魅惑的に揺れたのを、ヒロトは不躾に見つめてしまったが、ユウマはそんなことは気にならないように、目を伏せたままだった。

「じゃあ、明日の放課後、屋上でね。あ、それと、転校生のヒロト君? あなたもよければ、来ない?」

え? と、ヒロトとユウマは同時にアカネを見た。
しかしその表情は、明らかに対照的だった。

「あ、はい! なにするんですか?」

ヒロトはアカネのような美しい先輩に声をかけられたことが、単純にうれしかった。先ほどからのユウマの緊張した態度は気になるが、アカネに気に入られるチャンスを、逃したくなかった。

「簡単な調べものよ。私の個人的なことなんだけど。ユウマ君と一緒に、お手伝いをお願いしてもいいかしら?」

「は、はい。喜んで!」

ヒロトは二つ返事で了承した。
それを悲しそうな目で見つめる、ユウマの視線にも気づかずに。

「じゃあ、二人とも、また明日ね。さようなら」

アカネは手を振って、去って行った。
その後姿に、ヒロトはしばらく見とれてしまっていた。
その後、帰り道でユウマはアカネのことをまったく口にせず、ヒロトに何を聞かれても、「明日、分かるよ」と言うのみだった。


翌日の放課後。ユウマはホームルームのときからすでに緊張し、沈んだ顔で時計の針が回るのをチラリチラリと見ていた。逆にヒロトは、時間が過ぎるのをひそかに楽しみにしている様子だった。

「ユウマ君、屋上に行かないの?」

クラスメイトが大方帰ってしまった後、いつまでも腰を上げようとしないユウマに、ヒロトはたまりかねて尋ねた。

「う、うん。行くよ。行かないと」

ユウマはヒロトに言われて、意を決したように立ち上がり、鞄を持って、教室を出た。
ヒロトはユウマの後に続いて、廊下を歩いていく。
やはり、ユウマの様子はかなりおかしかった。
あんなキレイな先輩と何か共同作業ができるのだから、もっとテンションが上がっても良さそうなものだと、ヒロトは疑問に思いながら、ユウマの後をついていった。
屋上に上がる階段の前で、ユウマは突然立ち止まり、振り返った。

「や、やっぱり、ヒロト君は帰った方がいいよ。東条さんには、僕からうまく言っとくから。帰った方がいい」

いつものユウマらしくない、落ち着きのない態度だった。
顔からは血の気が引いていて、よほど勇気を振り絞って発言しているように見えるが、ヒロトにはなんのことか、さっぱり分からなかった。

「え? なんで? ユウマ君、東条さんと、何するの?」
 
「それは…言えないんだ。言ったら、大変なことになるから…。でも、ヒロト君は早退したって言っとくから。じゃあね。帰った方がいいよ。来たらダメだ」

ユウマはそう言って、ヒロトの静止を振り切り、階段を登って行った。
ガシャン、という音がして、屋上の扉がしまったのが分かった。
ヒロトは一人取り残され、わけもわからぬまま、立ち尽くしていた。
一体、ユウマとアカネは、屋上で何をしているというのか。
ヒロトは今年の初めに精通がきたばかりで、性やセックスについての知識はほとんど持っていなかったが、何回か不器用な自慰行為もして、女の子に対する興味はそれなりに持っている。学校で初めて出会った、東条アカネという魅力的すぎる女性に、心惹かれないはずはなかった。
ユウマとアカネは、何かよく分からないけど、男と女がやる、キスとかそういったことをしているのではないか。そして、自分もそこに誘われたのは、どういうことなのか。
そう考え始めると、ヒロトの乏しい知識では事態を想像することもできず、やはりこの目で確かめたいという思いが強くなった。
ヒロトはユウマの忠告を無視して、ユウマが駆け上がったおよそ5分後、ゆっくりと屋上の扉を開けたのだった。




「あら。ヒロト君」

扉を開けると、そこには東条アカネと5,6人の女子が立っていた。先ほど屋上に上がったユウマが、女子たちに取り囲まれるようにして、地面に座り込んでいる。

「いらっしゃい。来てくれると思ってたわ」

アカネは優しい笑顔を、ヒロトに向けた。
ヒロトはその笑顔に心を奪われる思いがしたが、その後ろでユウマがしゃがみこんで、どうやら何か苦しんでいるらしいのが気になった。

「ユウマ君…?」

ヒロトは扉を閉めて、ユウマに近づいて行こうとした。

「あ、ユウマ君はちょっと待ってあげて。あと3分はしゃべることも苦しいのよ。かわいそうだわ」

「え?」

アカネの言うとおり、よく見ると、ユウマは下腹のあたりをおさえて、呼吸を荒くしているようだった。
ヒロトが来たことに気がつくと、残念そうな顔をしてうつむいてしまった。

「大丈夫、ヒロト君。早退したそうだけど。どこか悪いの?」

「え? いや…はい。もう大丈夫です。あの、ユウマ君はなにを…」

「そう。良かった。じゃあ、私の調べものに付き合ってもらえるわね?」

「あ、はい」

ヒロトは何か不穏な空気を感じ取って、口ごもった。
苦しむユウマ。微笑を絶やさないアカネ。アカネの周りで、無表情に押し黙ったまま、じっとヒロトを観察している上級生の女子たち。
なにかヒロトの想像を超えたことが、ここで行われているらしかった。

「じゃあ、これからヒロト君の金玉をひねり潰すわね」

アカネは微笑みながら言った。
思わず、ヒロトは聞き返す。

「え?」

「あ、心配しないで。ひねり潰すっていうのは、言い方のひとつよ。実際には、ヒロト君の金玉を潰したりはしないわ。ただ、痛めつけるだけ。何か疑問があるかもしれないけど、それは実験を進めながら、解決していきましょう。だって今日は、二人も協力者がいるんだもの。急がないと、日が暮れてしまうわ」

ヒロトは呆気にとられて、言葉が出なかった。
アカネの口から金玉という言葉が何気なく出たのも意外だったし、その後に言われたことも、ヒロトには急に理解できるものではなかった。

「まずは、ヒロト君の金玉をひざ蹴りするわね。いい? ひざ蹴り、されたことないでしょう?」

「え、あ、はい。ないです…」

ヒロトは戸惑いながらも答えた。
というより、ヒロトは金玉を蹴られた経験など、一回もなかった。スポーツなどもほとんどしてこなかったので、何かで打ちつけてしまったというようなこともない。金玉の痛みに関しては、奇跡的に無垢な状態だったのだ。

「そうよね。たぶんヒロト君は、金玉を蹴られたこともないと思うわ。いいの。最初はみんなそうよ」

アカネはおもむろにヒロトの両肩に手を置いて、距離を縮めた。
昨日も感じたアカネの香水の匂いと、その豊満な胸を鼻先の距離に感じて、ヒロトは先ほどまでの疑問も忘れて興奮してしまった。

「あのね、よく聞いて。金玉を蹴られると、男の子はすごく痛いの。なぜなら金玉は内臓で、内臓を直接蹴られるってことは、すごく痛いことだと思わない? それなのよ」

アカネはゆっくりと、子供に諭すようにヒロトに説明を始めた。

「その痛みはね、最初はしびれるようにヒロト君の金玉を突き抜けて、そのちょっと後で、重苦しい痛みがお腹全体に広がり始めるの。男の子はその時には、みんな金玉をおさえて、ひざをついて丸くなっちゃうのよ。ヒロト君もそうなるわ。そして、しばらくは息もできないほど苦しくて、泣きたくなるの。当たり所が良ければ、吐き気を催すこともあるから、そのときは遠慮なく吐いてね。わかった?」

ヒロトはわけが分からなかったが、とりあえずうなずいた。

「そう。じゃあ、始めましょうか」

言うと同時に、アカネは右ひざを跳ね上げて、深々とヒロトの股間に突き刺した。
それは強烈なひざ蹴りで、小柄なヒロトの体は一瞬、宙に浮いてしまった。

「うっ!」

その瞬間、ヒロトは目の前の景色がズレたことに気がついたが、何が起こったのか分からなかった。
足の間に突然、異物感を感じ、それがアカネの白い太ももだと気がついたが、その時でもまだ、微笑みを浮かべるアカネの美しい顔を眺め続けることができた。
しかし次の瞬間、激しい痛みが股間から下腹部へ、さらに体全体に突き抜けるのを感じ、反射的に股間を両手でおさえてしまった。

「え…あ…!!」

金玉を蹴られるという、人生で初めての出来事だったが、ヒロトの男の本能が、すぐそこまで来ている危険を察知した。
ヒロトの不安げな表情に、アカネは満足そうな笑みを浮かべる。
じわりと重苦しい波が一つ、金玉から放たれたと思うと、それはとてつもない大津波となり、ヒロトの体全体に広がっていった。

「うあ…あぁっ!」

ひざから力が抜けて、前のめりに倒れこんでしまった。
今まで経験したことのない痛み。二つの小さな玉から発せられる痛みの波は、下腹をねじるように掻き回し、胃を突き上げ、喉にいたって呼吸をも止めた。
ヒロトはアカネの言った通りに、ひざをつき背中を丸めて、涙を流して屋上のコンクリートに這いつくばってしまった。

「やっぱりね。初めてでも分かるんだわ。痛みが来るのが。男の本能みたいなものかしら。不思議ね」

アカネは満足そうに苦しむヒロトを見下ろして、自分の観察の結果を述べた。
その背後で、女子生徒が一人、せわしなくメモを取っている。どうやら、アカネの言葉を記録しているようだった。

「あ…ぐう…」

ヒロトはアカネの言葉を聞いても、ますます何のことかわからなくなった。
とりあえず、なぜ自分はこんな苦しみを受けなくてはならないのか。ユウマの忠告を無視して屋上に来てしまったことを、心から後悔した。

「ヒロト君、聞いて。あなたは今、金玉を蹴られたの。初めてだから、そうね、あと10分は起き上がることもできないわ。でも、男の子はみんなそうなのよ。安心して」

アカネは優しく話しかけたが、言っていることはヒロトにはまったく意味不明だった。

「あなたは不思議に思ってるでしょう。私がなんでこんなことをするのかって。フフ。ヒロト君、転校生のあなたに説明してあげる。私はこの学校を支配しているの。女子も男子も、生徒は全員、私の言うことは何でも聞くのよ。聞かなければいけないの」

アカネは突然、とんでもないことをごく普通の調子で語り始めた。

「つまり、私は学校の番長っていうのかしら。古い言い方だけど、分かりやすいと思うわ。私の言うことを聞かない子がいると、こうやって呼び出して、今のヒロト君みたいな目に合わせているのよ。でも、怖がる必要はないの」

ヒロトはひざまずいたまま、上目づかいでアカネの顔を覗き込んだ。
相変わらず、アカネの顔からは笑顔が消えていない。

「私は見ての通り、容姿端麗だし、勉強の成績も全国トップクラス、スポーツも万能なのよ。つまり、私にはこの学校を支配する資格があって当然だし、あなたたちは私を恐れつつ、目標にして学校生活を送っていくべきなのよ。でもそんな私でも、すぐには理解できないことがあるの。それが、男の子の体の仕組みよ」

ヒロトはようやく、呼吸を取り戻し始めた。
喉の奥から湧き出てくる苦しみを吐きだすかのように、激しく咳き込む。
そんなヒロトの姿を、アカネは冷静に観察していた。

「もちろん、解剖学上の知識は十分持ってるわ。でもそれだけじゃ、実際に男の子がどんな感覚で生活しているのか、分からないでしょ。私はそこに、すごく興味をそそられるのよ。例えばほら」

アカネはおもむろに、自分の制服のスカート裾をつかむと、チラリとめくって見せた。
ヒロトの目に、黒いレースの下着の端が飛び込んできて、つい凝視してしまう。

「男の子って、こんなときでもエッチなことには必ず目が行くでしょ。そういうことを、実際にデータとして調べてみたいのよ。今、ヒロト君を蹴ったのは、そのデータ収集の一つ。男の子が初めて金玉を蹴られる時って、どんな反応をするのか、すごく興味深かったわ。ありがとう」

アカネは満面の笑みで、微笑んだ。
ヒロトは話を聞いて、だいたいは理解できたが、なにか意見を考えられるほどに頭は回復していない。とにかく今は、金玉の痛みに耐えることだけで精いっぱいだった。

「あ、いいのよ、ヒロト君。今はしゃべれる状態じゃないでしょ? 分かってるわ。今まで何百回も金玉を蹴ってきたから、感触でだいたいのダメージは分かるつもり。ゆっくり休んでて」

アカネはそう言うと、今度はユウマの方に歩み寄った。

「さあ、ユウマ君。もう、ある程度ダメージは回復したはずね? でもまだ、立てはしないはずだわ」

「あ…は、はい」

ユウマは確かに先ほどよりも回復した様子だったが、まだ下腹をおさえて、しゃがみこんでいた。

「そうでしょうね。ところでユウマ君。あなた、私にウソをついたわね。ヒロト君は早退した。今日は来られないって」

ユウマは動揺した様子で目を伏せた。
それを聞いたヒロトは、痛みの中で、ユウマが自分に忠告してくれた真意をようやく理解した。そして自分がそれを無視したせいで、今はユウマに危険が迫っていることも直感した。

「あ、でもいいのよ。あなたが言ったことがウソだってことは、私は最初から分かってたわ。ユウマ君は優しい子だもの。ヒロト君を助けたかったのよね。同じ金玉を持つ男同士の友情、素敵だわ」

アカネは心底感心したようにユウマにほほ笑んだ。

「でもね、ユウマ君。理由はどうあれ、私に反抗したということは見逃せないの。これを見逃したら、ユウマ君が他の子たちからも恨まれてしまうことになるわ。私に従う者は、誰であれ、平等よ。私はみんなを平等に愛して、平等に罰を与える。分かるわね?」

ヒロトにはアカネの言っている理屈はさっぱり理解できなかったが、周囲にいる女子生徒たちは、無言ながら目でうなずいているようだった。
ユウマもまた、アカネの言葉に反論する様子を見せない。

「だから今日は、ユウマ君の金玉を潰します。これは、言葉どおりの意味よ」

ここにいたって、ユウマはさすがにハッとして顔を上げた。
そんなユウマを、アカネは微笑みを絶やさずに見つめる。




「あ、そんな顔しないで、ユウマ君。私も悲しいのよ。あなたは今まで、私のデータ収集にずいぶん協力してくれたんだもの。いつも礼儀正しく私に接していたし、私はあなたに対して不快に思ったことなんか、一度もないのよ。それを思うと、とても心が痛むわ」

アカネは演技かどうか、少なくともヒロトとユウマの目には、心底悲しそうな表情をしているように見えた。

「だから、考えたの。ユウマ君の金玉を潰すのは、一個だけにしてあげる。それならユウマ君も男の子のままでいられるし、また私のデータ収集にも協力できるでしょう。私も、金玉が一個しかない男の子を蹴ったことはないから、興味深いわ。ね、そうしましょう、ユウマ君」

アカネは満面の笑みで、ユウマに語りかけた。その美しい大きな瞳は、いつものようにキラキラと輝いて、自分の言動に何の疑いも持っていないようだった。
ユウマは何も言うことができず、ただアカネの顔を見て、呆然と座っていた。
ヒロトは今さらながら、自分が足を踏み入れた世界の恐怖を感じ、自分を助けようとしてくれたユウマの気遣いを無にした愚かさを悟った。

「じゃあ、始めましょうか。そろそろ、立てるでしょ、ユウマ君。データによれば、ユウマ君が私の30%の金玉蹴りを受けて立ちあがれるまでの時間の平均は、7分23秒。間違いないかしら?」

アカネは背後にいた女子生徒に尋ねた。

「はい。その通りです」

その女子はどうやら、データを管理している係らしく、先ほどから分厚い手帳にひっきりなしに書き込みをしている。
その手帳は、いわばアカネの男の子たちへの拷問記録ともいうべきもので、今までにアカネが行った「実験」のあらゆるデータが記録されているようだった。
そしてアカネも、その大部分を頭の中に記憶しているらしい。

「私がユウマ君の金玉を蹴ったのは、だいたい6分前ね。あの感触からすれば、いつもよりダメージは浅いはずよ。ユウマ君の金玉は、ちょっと逃げたもの。私の蹴りのタイミングを、ユウマ君が覚えてしまったのかしら。ユウマ君も成長してるのね。フフフ」

アカネは楽しそうに笑う。
ユウマは無言でうつむいていたが、やがて周囲をうかがうように見渡し、屋上にある唯一の出入り口に目を向けた。
このままここにいては、確実に自分の金玉は潰されてしまう。一個でも二個でも、気絶するほどの痛みに変わりはない。もう、この場から逃げ出すしかなかった。
ユウマは入学してすぐに学級委員になったが、そのせいで生徒会長を務めるアカネに目を付けられ、今まで何度となくアカネの「実験」に付き合わされ、痛い思いをしてきた。
先生や親に訴えたかったが、そんなことをすれば、学校の生徒全員から陰湿ないやがらせを受ける事になるということを、ユウマはすぐに思い知らされた。
アカネの支配を受けているのは、十人や二十人ではなく、本当に生徒全員なのだ。だから逆に言えば、月に一回か二回まわってくる、「自分の番」を乗り越える事が出来れば、あとは問題なく生活することができるのである。
アカネは気まぐれで、ときに痛みのない「実験」をすることもあったし、たまに他の女子生徒やアカネ自らと、性的なことをさせられることもあると聞いている。何よりアカネはあと一年で卒業なのだから、ユウマは静かに、耐えるつもりでいたのだ。
しかし今回、ユウマが転校性のヒロトをかばおうとしたせいで、アカネの不興を買ってしまったのである。ユウマはヒロトを助けようとしたこと自体は後悔していないし、自分の忠告を無視したヒロトを恨むつもりもなかった。呪うべきは、東条アカネという女子の存在で、その行動と思想はユウマなどには予測もつかないものだったのだ。
とにかく、ユウマはこの場から逃げ出すことを考えた。
逃げだせたとして、後にはヒロト一人が残されてしまうが、そこまで考えている余裕はない。自分の金玉をまもるために、ユウマは行動に出た。

「うわあぁぁ!」

ユウマは突然、叫びながら立ち上がると、アカネの横をすり抜け、屋上の出入り口に向かって走り出した。
まだ金玉に痛みは残っていたが、ここで逃げられなければもうチャンスはないという、必死の行動だった。
ヒロトは驚いたが、しかし這いつくばったまま、ひそかにユウマを応援した。
ユウマは無我夢中で走り、扉まであと数メートルのところまで来た。しかし、素早くその行く手をさえぎったのは、アカネを取り巻く上級生の女子たちだった。
女子の一人が無言のまま、走ってくるユウマの肩を両手で突き飛ばした。

「あっ!」

ユウマは行く手をさえぎられて、動揺した。回り込もうとしたが、さらに他の女子たちに三方を囲まれてしまう。
正面に立った女子が、ユウマの肩をぐっと掴んだ。
ユウマはアカネの記憶があるために、反射的に両手で股間をガードしてしまう。
しかし、肩を掴んだ女子は予想に反して、ユウマの脇腹に強烈なパンチを打ち込んだ。

「うっ!!」

ユウマは予想外の攻撃に息を詰まらせ、脇腹をおさえてよろけてしまう。
次の瞬間、いつの間にかユウマの背後に来ていたアカネが、ユウマの股間に鋭い蹴りを打ち込んだ。

バスッ!!

ユウマの制服のズボンが股の部分で上に押し上げられ、同時にユウマの踵が少し宙に浮いた。

「ぷっ!!」

完全に意識の外からの金的蹴りに、思わず息を漏らして、脇腹をおさえたまま、ストンと地面に尻もちをついてしまった。
しかし数瞬後には、いつものごとく金玉の痛みが全身にこみ上げてきて、小さなうめき声を上げながら、顔面をコンクリートにこすりつけることになった。

「くうぅう…」

「ダメよ、ユウマ君。逃げるなんて。金玉の痛みで結ばれた、男の友情はどうしたの?」

アカネは自分の方に尻を突き出して這いつくばっているユウマに向かって、言った。

「50%くらいの力で蹴ったわ。でも、今度は後ろから蹴ったから、あと20分は自力で動くこともできないはずよ。頑張ってね」

ユウマは額をコンクリートにおしつけたまま、尻を持ち上げて、両手で股間をおさえ、必死に痛みに耐えた。汗が全身からとめどなく流れ、顎を伝って地面に落ちていく。これからこの痛みに20分も耐えなければならないと思うと、いっそ殺してくれ、とユウマは思ってしまった。

「さあ、ユウマ君はしばらく置いておいて、そろそろヒロト君も元気になってきたかしら」

アカネはそう言うと、まだうずくまっているヒロトのところまで来て、しゃがみこんで顔をのぞいた。
ヒロトはユウマの逃避行が失敗に終わったことに、大きなショックを受けていて、金玉の痛みも伴い、顔色は真っ白になってしまっていた。

「フフッ。かわいいわね、ヒロト君は。昨日、初めて見たときから思ってたの。こんなかわいい顔をした男の子も、金玉を蹴られたら、他の男子みたいに痛がるのかしらって」

アカネはその白く細い指で、ヒロトの顔を優しく撫でた。

「そうしたら、やっぱりヒロト君も男なのね。ちょっと金玉を蹴られたら、情けなく倒れてしまうし、私のオッパイからは目が離せないし。男の子って、みんな一緒なのよね。昨日は、私のオッパイを想像して、オナニーしたの? フフフッ」

まったくの図星をさされて、ヒロトは痛みの中でも恥ずかしくなって、顔を背けた。昨夜は確かに、オナニーをした。それもアカネの言うとおり、目に焼き付いてしまったアカネの大きな胸の、制服の下にある姿を想像して。

「あ、恥ずかしがらないで。いいのよ、私でオナニーしても。それは、この学校のほとんどの男子がやっていることだから。年頃の男の子だものね。しょうがないわ」

恥ずかしげもなく、そう言った。
呆れるほどの自負心だったが、実際にアカネに面と向かえば、なんとなく納得してしまうものがあった。

「さあ、ヒロト君、そろそろ立てるかしら。次の実験をしたいんだけれど」

「あ、あの…許して下さい。僕、何でもしますから…」

ヒロトはやっとそれだけ、言うことができた。
アカネはそれを聞くと、きょとんとした顔でヒロトの顔を見つめた。

「あ、ヒロト君、誤解しないで。私は別に、ヒロト君に怒ってるわけじゃないのよ。ただ、私の知的好奇心のために、ヒロト君に協力してもらってるだけなんだから。それはユウマ君だって、他の男子だってそうよ。これは、単なる私の趣味なの。安心して」

安心どころか、ヒロトはますます背筋が凍る思いがした。
趣味でこんなことをしているということは、どうやらどれほど謝ったりしても、見逃してもらえるわけではないらしい。




「そうね。ヒロト君は転校してきたばかりだし、まだ一年生なんだから、何も知らないのよね。いいわ。今日は特別に、私の方からいろいろと教えてあげる。今まで私が男の子たちに協力してもらって集めた、貴重なデータよ。ちょっと、あなたたち」

アカネが合図すると、周囲にいた女子生徒たちが一斉に動き始めた。
無言のまま、ヒロトの周りを取り囲み、ヒロトの体を掴んで、制服を脱がし始める。
ヒロトは突然のことに、最初は抵抗するのも忘れてしまったが、すぐにわめきながら暴れ始めた。

パチーン!

と、屋上全体に乾いた音が響いた。
アカネが右手で、ヒロトの頬をひっぱたいたのだ。
ヒロトは何が起こったか分からず、呆然としている。

「ダメよ、ヒロト君。キミも男の子なんだから、男らしくしなさい」

アカネは毅然とした表情で言い放った。
ヒロトはもう、抵抗する気力を失ってしまった。
自分は常日頃から男らしくありたいと思ってはいるが、今、ここで堂々と金玉を痛めつけられることが、果たして男らしいことなのかどうか。男なら、金玉を守るのが当然ではないだろうか。そんな考えが、ヒロトの頭の中を、グルグルと回っていた。
しかし状況は残酷に進んでいく。
ヒロトはあっという間に制服を脱がされ、下着のブリーフと靴下のみの格好になり、両脇を女子に抱えられ、立たされる形になっていた。

「まあ。やっぱり、男の子はブリーフが似合うわね。私、トランクスよりブリーフの方が好きよ。特に、このもっこりした部分がかわいくてね」

アカネは恥ずかしげもなく、ヒロトの白ブリーフの前のふくらみの部分を撫でた。ヒロトは一瞬、ビクッと体を震わせたが、やがてアカネの巧みな指づかいに身をよじって反応した。

「は…ふぅ…」

ヒロトはもちろん、今まで女の子に股間を撫でられたことなどなかった。まったく未知の大きすぎる快感が、ヒロトの脳髄を満たしていった。

「あらあら。もう、こんなに興奮しちゃうの? 昨日、ちゃんと抜いたはずなのにね」

アカネは笑いながら、ヒロトの勃起したペニスをまさぐる。
なめらかで、それでいてまとわりつくようなアカネの指先の動きに、ヒロトはすぐにでも射精してしまいそうだった。

「あ…はあ…」

「でもね、ヒロト君。このレッスンは、また今度にしましょう。今日はこっちの方よ」

そう言うと、アカネはヒロトのペニスから突然手を離し、同じ指で、ヒロトの金玉を弾いた。

「う!」

とろけるような快感から一転して、いきなり金玉を攻撃されたヒロトは、一瞬、息を詰まらせてしまった。

「フフ…。痛かった? 今からじっくりと教えてあげるわ。ヒロト君も知らない、男の子の金玉の秘密をね」

ヒロトはアカネの微笑みに、再び恐怖を感じた。
アカネが合図を送ると、ヒロトの両脇を抱えていた女子たちは、ヒロトのブリーフを掴んで、一気に脱がしてしまった。
ヒロトのペニスと金玉が露わになる。ヒロトは隠したかったが、両手をおさえられ、さらに足も開かされてしまっていた。

「かわいいチンチンね。ヒロト君らしいわ」

アカネはヒロトの前にしゃがみこんだ。
アカネの顔の目の前に、自分のペニスがある恥ずかしさで、ヒロトは真っ赤になった。

「いい、ヒロト君? これがあなたのチンチンと金玉よね。この中に、睾丸っていう楕円形の玉が二つ、入っているの。ヒロト君のはまだ小さいけど、大人になれば、だいたい4㎝から5㎝くらいの大きさになるのよ」

アカネは遠慮も何もなく、ヒロトの金玉袋をつまみながら説明した。

「睾丸はね、精子を作るためにあるの。一日に作られる精子の量は、5000万から1億にもなるのよ。ヒロト君は昨日、オナニーしちゃったから、今はこの金玉の中で、一生懸命精子が作られているところね」

ヒロトはアカネの言うことなど、あまり頭に入っていなかった。
女の子に金玉をつままれて、その機能の説明を受けるなど、想像もしたことがなかったが、何か気持ちいいような、恥ずかしいような、とにかく耐えがたい気分だった。

「でもこの金玉は、いわゆる男の急所でもあるの」

アカネは再び、ヒロトの金玉を指で弾いた。
ヒロトはまた、息を詰まらせて反応する。

「ね? ちょっと指で弾いただけで、お腹に響くような痛みがくるでしょう? さっきも言ったけど、睾丸は内臓の一つなの。だから金玉を蹴られると、お腹を壊したときのような痛みが、内臓全体に響いてしまうのよ」

アカネはヒロトの反応を見て、淡々と説明を続けた。
金玉のついていないアカネが、ここまで詳しく正確に金玉の痛みを把握していることが、ヒロトには驚きであり、不気味だった。
今まで何人の男が、アカネの「実験」につき合わされ、金玉の痛みの詳細を喋らされてきたのだろう。

「でも、もっと痛い部分があるのよ。それがここ、副睾丸」

アカネはそう言うと、おもむろにヒロトの金玉袋の裏の部分を、指先でつまんでみせた。
電撃のような痛みがヒロトの金玉に走り、ヒロトは腰を引きそうになるが、支える女子たちが、それを許さない。

「ほら。痛いでしょ? ちょっとつまんでるだけなのよ。ここはね、睾丸でできた精子を溜める場所なの。でも、神経が集中してる場所でもあるから、ちょっとしたことでも、ものすごく痛いのよ。これが、男の急所中の急所というわけなの。知らなかったでしょう?」

アカネは副睾丸をつまんだまま、ヒロトの顔を見上げる。
ヒロトは口をパクパクとさせて、声を出そうとしてるが、息が詰まってしまっていた。

「ん? どうなの? ヒロト君?」

「し、知りませんでした! すいません! は、離して下さい!」

ヒロトは必死にそう叫んだ。

「あら、ごめんなさい。ちょっと強かったかしら」

アカネは笑いながら、副睾丸から手を離した。
ヒロトは息を荒げて、汗びっしょりになっている。

「フフフ。ちょっと痛かったかしら。つままれただけでこれなんだから、ここを蹴られたらと思うと、ゾッとするでしょう? さっきのユウマ君がそれなのよ」

アカネはにこやかに話すが、ヒロトは副睾丸の痛みを想像して、真っ青になった。確かに先ほどのユウマへの蹴りは、金玉の裏側を蹴りあげているように見えた。あれは少なからず、副睾丸にヒットしたに違いなかった。
アカネはそれを狙って蹴ったというのだろうか。

「見て、ユウマ君を。あっちでまだ苦しんでるでしょう?」

ヒロトがユウマを見ると、確かにまだ、先ほどと変わらぬ姿勢のまま、コンクリートの地面に額をつけて、尻を持ち上げるような形で震えていた。

「あれから少し経つのに、まだあの体勢から動けないでいるのよ。フフフ。さっき、私はユウマ君の副睾丸を擦るように蹴りあげたの。もちろん、本体の睾丸の方も、ギュッと変形するくらい、足と骨で挟み込んであげたわ。痛いでしょうね」

アカネは詳細に語ってはいるが、そのすべてがヒロトの恐怖をそそるもので、ヒロトの金玉は縮みあがってしまった。

「それでも、潰される痛みに比べれば、まだマシなはずよ。私ね、前に二回だけ、男の子の金玉を潰してしまったことがあるの。すごかったわよ。パチンッて手の中で弾けたかと思ったら、それまで暴れてたその子は、ガクッて気を失って、口から泡を吹き始めたの。足がガクガク痙攣して、赤く濁った液体がチンチンから出てきたの。あれって、金玉の中身なのかしらね。次は調べてみましょう。フフフ」

アカネは相変わらず、楽しそうに語るが、ヒロトは先ほどまでの副睾丸の痛みも吹き飛ぶほどに背筋に冷たいものを感じ、奥歯を震わせていた。

「それじゃあ、ユウマ君の金玉が潰れるところを、ヒロト君にも見てもらいましょうか。いいレッスンになるはずよ」

アカネは振り向いて、ユウマのもとに歩き出そうとした。

「あ、あの! ユウマ君を助けてあげて下さい! お願いします!」

ヒロトは恐怖に震えながら、しかし勇気を振り絞って叫んだ。
アカネはヒロトを振り向いた。その表情には、驚きが見える。

「あの…ユウマ君は、僕を助けるために、ウソをついたんです。だから…東条さんに逆らうとか、そういうのじゃなくて…。だから、お願いします! 助けてあげて下さい!」

ヒロトの弁明は稚拙なものだったかもしれないが、その声と表情は、真に迫るものがあり、それはアカネのプライドと支配欲をかえって絶妙にくすぐるものだった。

「ああ! ヒロト君、素晴らしいわ。男の友情って、感動的ね。ユウマ君を助けるためなら、自分が犠牲になってもかまわないというつもりなのね?」

アカネはしかし、ヒロトの言葉を拡大して、ほとんど自前で感動していた。

「え! いや、それは…」

アカネの口から思わぬ言葉が出たことに、ヒロトは焦った。

「ホントに優しい子ね、ヒロト君は。男らしいわ」

心底感動した様子でヒロトに近寄ると、突然、金玉を鷲掴みにした。
ヒロトはうっと呻いたが、アカネはヒロトを抱き寄せて、その顔面を自分の胸の谷間に押しつけてしまった。
ヒロトはアカネの柔らかい胸の感触を、顔面に感じた。

「見なおしたわ、ヒロト君。あなたもやっぱり、男の子だったのね。でも、もうすぐ男の子じゃなくなっちゃうかもしれないけど。フフフ」

アカネはそう言いながら、ヒロトの二つの睾丸を、恐ろしい力で圧迫し始めた。
ヒロトはアカネの胸に埋もれながら、大きな叫び声を上げる。

「うおぁ! むうぅ! つ、潰れる…」

「フフ。大丈夫。まだ、潰れないわよ。金玉はね、40キロくらいの圧力をかけると、潰れてしまうと言われているわ。でも、私の経験だと50キロくらいまで大丈夫なの。今、ヒロト君の金玉を握っている私の握力は、だいたい25キロくらい。まだまだ、この程度では潰れないわ」

そうはいっても、ヒロトの苦しみは女のアカネにはまったくわからない想像を絶するものだった。

「あう…うぅ!!」

昨日、あれだけ羨望の眼差しで見つめていた、アカネの胸に顔をうずめることができるなんて、ヒロトにとっては天国のような出来事のはずなのに、今はそれを楽しむ余裕など、微塵もなかった。

「はい。これで、30キロかしら。でも、ヒロト君の小さいタマタマじゃ、このくらいが限界かもしれないわね。これ以上やると、パチンって弾けちゃうかも」

「はい! 限界! 限界です! 助けてください! お願いします!」

ヒロトが必死に叫ぶと、アカネは微笑んで、手を離した。
合図を送り、ヒロトを掴んでいた女子にも、ヒロトを離すようにさせる。
ヒロトはようやく地獄のような苦しみから解放されると、力なく地面に倒れ込んだ。
アカネが金玉を掴んでいたのは、それほど長い時間ではなかったが、ヒロトにとっては途方もなく長い出来事に感じられた。

「フフフ。お疲れ様。今日のレッスンは、これで終わりよ。ゆっくり休んでね」

言われるまでもなく、ヒロトは痛みに震えながら、ただ横たわることしかできなかった。足元に引き下げられたままのブリーフを上げる余裕もなかった。
アカネは再びユウマの方に歩み寄り、しゃがみこんでユウマの顔を見た。
ヒロトにはもう、ユウマを助けようとする元気はなかった。



「ユウマ君、聞こえてたかしら? ヒロト君が、あなたを助けてほしいって言ってくれたのよ。男の子って、自分の金玉と引き換えにしても、友達を助けたいと思うのね。私、感動したわ」

ヒロトもユウマも、その点に関しては容認することをためらったが、あえて黙っていた。

「だから今日は、ユウマ君の金玉を潰すのをやめてあげる。でも、他の子たちには内緒よ。ひがんでしまうといけないから。守れるかしら?」

ユウマはうずくまったまま、真っ白い顔で懸命にうなずいた。

「良かったわね。ヒロト君に感謝しないと。でもその代わり、私が今日やるつもりだった実験には、最後まで付き合ってくれるわね?」

アカネはユウマの返事を待たず、再び女子たちに合図を送り、苦しむユウマを無理やり引き起こして、立たせた。
女子たちは先ほどのヒロトと同じように、素早くユウマの制服をむしり取り、全裸にしてしまう。

「あら。やっぱり、ユウマ君は立派になってたわね。これなら、大丈夫そうだわ」

アカネはユウマのペニスを観察して、言った。
ユウマのペニスはすでに半分ほど剥けていて、うっすらとした毛がそれを囲み、すでに大人と変わらぬ状態と言っても良かった。

「ユウマ君。今日の実験はね、男の子が射精する時って、金玉が袋の中でグッと上にあがるでしょう? あのときに衝撃を与えたら、どうなるかということを確かめたいの」

ユウマは、まだ一向にひかない金玉と副睾丸の痛みに朦朧としながら、アカネの話を聞いていた。射精する時に金玉があがるなど、気づいたこともなかった。ユウマはもちろん童貞だったが、オナニーは週に何回かしている。しかし射精する瞬間など、男にとっては何も考えらず、自分の体のこととはいえ、気がつくはずがない。

「だからユウマ君、ちょっと今、オナニーしてもらえないかしら。射精する少し前になったら、教えてもらいたいの。金玉を叩くタイミングは、こっちで合わせるわ」

ユウマは呆然と、アカネの顔を見ていた。

「ユウマ君! 聞いてるの? あなた、今日はまだオナニーしてないでしょ?」

「あ、は、はい…」

学校でどうオナニーするというのか分からなかったが、ユウマは正直に答えた。

「じゃあ、いいわね。さあ、早くオナニーして」

ユウマはそう言われても、先ほどからの痛みで、ペニスは勃起するどころではなく、そんな気分にもなれなかった。
しかしここでアカネの気分を損ねる事だけは避けたかったので、なんとか縮こまったペニスを右手で擦ることだけはしてみせた。

「いいわ。その調子よ、ユウマ君」

しかしユウマのペニスは一向に膨張せず、いつまでも勃起しなかった。

「どうしたの? ユウマ君くらいの男の子なら、一日何回でも射精できるはずよ。早く勃起しなさい」

普段なら、確かにそうかもしれない。しかし今は、アカネに蹴られた金玉は痛むし、機嫌を損ねたくないという恐怖から、なかなか興奮するというわけにはいかず、焦るほど、逆に縮こまってしまった。

「しょうがないわね。じゃあ、これでどうかしら?」

そう言うと、アカネはおもむろに制服を脱ぎ始めた。
スカートに手をかけると、ホックをはずして、一気に足元に落としてしまう。先ほどヒロトにチラリと見せた、黒いレースの大人びた下着が、ユウマの目に飛び込んできた。

「あ、ユウマ君、そのままよ。そのままゴシゴシしていなさい」

思わず手を止めて見入ってしまったユウマに、アカネは注意した。
そして次に、長い髪をなびかせながら上着を脱ぐと、やはり黒いブラジャーに包まれた、いまにもこぼれ落ちそうな大きな乳房が顔を出した。

「どう、ユウマ君? 少しは興奮してきたかしら?」

アカネはさらにユウマに近づいて、両手を組んで前かがみになり、その豊満な胸を持ち上げてみせる。目の前に迫った、柔らかそうな白い乳房に、ユウマは鼻息を荒くした。まだペニスを擦るたびに金玉に痛みが響いたが、それでもなお、ユウマの右手はペニスを擦るのをやめなかった。
アカネの背後から、その様子を見ていたヒロトも同様である。
ヒロトの目には、官能的な黒い下着に包まれたアカネのキュッとしまった尻と、前かがみになったことで見える股間のなだらかな膨らみが飛び込んできた。ヒロトは金玉をおさえる手を自然とペニスに移動させ、すでに勃起していたペニスをゆっくりと擦り始めた。

「あ…」

思わず、声が出てしまった。
アカネはそれに気がついて、振り向く。

「あら。もしかして、ヒロト君も実験に協力してくれるのかしら。フフフ。ありがたいわ。こっちに来なさい」

アカネが言うと、ユウマを取り囲んでいた女子たちの半分が、ヒロトの元に走り、ヒロトをひきずって、ユウマの隣に立たせた。

「でも、二人が同時にイクとは限らないわね。特にヒロト君は、早そうだわ。そうだ。特別に、私がお手伝いしてあげましょうか」

アカネはそう言うと、勃起したペニスを晒して全裸で並び立つ男の子たちの間に座り、両手で二人のペニスを掴んだ。

「ふわっ!」

「はうっ!」

二人は思わぬ快感に、声を上げる。

「私なら、二人がイクのを調節しながらできるわね。さあ、二人とも、遠慮しないで」

言われなくても、ヒロトとユウマには、すでに思考能力はなくなっていた。
ただ、なめらかに動くアカネの指先にすべてを委ねて、快感に喘ぐことしかできない。
アカネの指づかいは見事で、ヒロトとユウマの感じるポイントを正確に見切り、二人の快感のレベルを冷静に観察しながら、同時に射精するように調整してペニスを擦りあげていった。

「さあ。そろそろかしら?」

あっという間に、二人のペニスは射精寸前になってしまった。
ここにきて、確かに二人の睾丸は、袋の中でゆっくりと上方に動き始めている。

「あ…あ!! 出ちゃう!」

「い、いく! いきます!!」

二人は同時に、絶頂を迎えようとしていた。
アカネはほほ笑んで、二人のペニスから手を離すと、腕を目いっぱい下ろし、次の瞬間、二人の金玉に真下から拳を叩き込んだ。

「ああ!!」

「ううっ!!」

二人は呻いたが、同時に勢いよく射精してしまった。
かつてないほどの快感がペニスを包んだが、同時に金玉からは、また鋭い痛みが押し寄せてきて、二人はひざをついて倒れてしまった。

「あ、ああ!!」

ひざをついて前かがみになったヒロトのペニスからは、さらに大量の精液が溢れだしていた。痛みと快感が同時にヒロトを襲い、ヒロトはもう、何も考えられなくなった。

「あら。これは面白い現象ね。金玉がびっくりしちゃったのかしら?」

アカネは冷静な態度で、うずくまって射精するヒロトを観察した。

「ユウマ君も、いつもよりたくさん出たんじゃないの? そうよね?」

「は、はい…」

アカネは満足そうにうなずいて、服を着始めた。

「いいデータが取れたわ。二人とも、ありがとう。二人の男の友情にも、感動してしまったしね」

ヒロトとユウマは、快感と苦痛と入り混じった感覚の中で、ぼんやりとアカネの言葉を聞いていた。

「私、あなたたちのことが気に入ったわ。これからは、私の友人を名乗ることを許可します。私の事は、名前で呼んでいただいて、かまわないわよ」

アカネは堂々と、そう言い放った。

「これからも友人として、どんどん実験に協力してもらいますから、そのつもりでいてね」

ヒロトとユウマは、ぼんやりとうなずいた。

「じゃあね。もう遅いから、早く帰るのよ。さようなら」

「さようなら…」

「さようなら」

アカネと女子たちは、うずくまる全裸の男の子たちを置いて、屋上を出ていってしまった。
残されたヒロトとユウマは、しばらくうずくまったまま、何の言葉も交わさなかった。


終わり。



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