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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。


とある高校の放課後。
教室に残っているのは、金子タツヤと板木キョウヘイの二人だけだった。
二人はサッカー部に所属していたが、この日は雨で練習が中止になった。時間を持て余した彼らは、教室に残って他愛のない話をしていたのである。

「そういや、知ってるか? 吉岡のヤツ、援交してるらしいぜ」

突然、タツヤが驚くべきことを口走った。

「え? 吉岡って、このクラスのか? ヤバイな…」

「ああ。俺の中学の友達が言ってたんだよ。ウチの制服着た女が、サラリーマンのオッサンとホテルに入ってくの見たってさ」

「マジかよ…。それ、ホントに吉岡なのか?」

「ああ。俺、吉岡の写真、そいつに見せたんだよ。そしたら間違いないってよ」

「うええ。ヤバイな…」

二人が話しているのは、同じクラスの吉岡ハヅキという女子のことだった。
ハヅキは学年でも1、2を争う美人で、スタイルもよく、とても高校生徒は思えない色気があった。
しかし彼女はいわゆる問題児で、髪の毛は茶色に染め、制服はだらしなく着崩し、スカートは常にギリギリまで短くしていた。
朝の一限目から学校に来ていることは稀で、欠席も多く、教師からは常に目をつけられていた。
このままでは近いうちに学校を辞めるだろうと、クラス中が思っていたが、かといって彼女に話しかけるような友達もいないようだった。

「まあ、吉岡ならやってそうだと思ったけどなあ。アイツ、月曜日はだいたい休むだろ? どっかのオッサンとホテルに泊まってるんだよ、きっと」

タツヤは机に腰かけながら、腕組みしてつぶやいた。
クラスメイトの秘密を握ってやったという優越感が、そこにはあった。

「マジでヤバイな…。相手はサラリーマンかよ」

タツヤの向いに座ったキョウヘイは、しきりと「ヤバイ」を繰り返している。
事実、援助交際をしていることがバレれば、ハヅキが学校を退学になることは間違いなかった。

「その時はな。まあ金さえ払えば、誰にでもやらせるんだろ。アイツ、見るからにヤリマンだからな。あれだけの美人でさ。たまんねえだろうなあ」

ハヅキが援助交際でセックスしているところを、タツヤはその頭の中にありありと描いているようだった。どうやらすでに、この想像は何度か経験済みらしい。

「まあ、確かにあの胸はデカいよなあ。あれじゃあ、いい年したオッサンだって…ん?」

キョウヘイの目の端に、教室に入ってくる人影が見えた。
ちょうどタツヤの体に隠れて見えなかったが、どうやら女子の生徒らしいことだけ分かった。

「だよなあ。吉岡のあの胸は一回揉んでみたいよなあ。超デカいぜ。あと、アイツのパンツ見たことあるか? アイツ、いつもスカート超短いだろ?」

タツヤは興奮した様子で話し続けるが、キョウヘイはその陰に隠れた人影の方が気になった。
タツヤは全く気がついていない様子だったが、直観的にまずいと感じていたのだ。

「あ…! おい、ヤバイぞ!」

小声でそう促したが、タツヤには通じなかった。

「ああ。マジでヤバイよな、あのスカート。俺が見たときは、黒いパンツだったんだぜ。黒とか、超エロいよな」

「ヤバイって!」

必死に目で振り向くように合図したが、タツヤはそれすら目に入らなかった。

「マジでヤバイ。アイツ、援交でいくら稼いでるんだろうなあ。俺もやりたくなってきたなあ」

「何で知ってんの?」

不意に、背後から女の子の声が聞こえてきた。
自らの言葉に興奮してしまっていたタツヤは、ハッと我に返って振り向くと、今まで話していた噂の張本人、吉岡ハヅキがそこに立っていた。

「あ…! よ、吉岡…!」

さすがに驚いて、タツヤは座っていた机から落ちそうになった。
先程から気づいていたキョウヘイは、苦い顔をして、下を向いてしまう。

「何で知ってんの? 私のこと」

ハヅキの顔は、冷静そのものだった。
というよりも、ハヅキはこの顔以外、クラスメイトに見せたことはなかったかもしれない。
教師に叱られようが、クラスメイトから無視されようが、いつも無表情で、何かあってもニコリともしなかったのだ。
それはクールとか無口だとかいうよりも、タツヤや他のクラスメイトから見れば、自分たちを子供だと思ってバカにしているような、そんな大人びた冷静さだった。

「い、いや…別に…。何のことだよ?」

「だから、何で私のこと知ってるのって。援交のこと」

ハヅキ自身の口からはっきりとその言葉が出たから、タツヤたちは焦ってしまった。
ハヅキの方がむしろ淡々とした口調で重ねる。

「誰かに聞いた? 誰にも話してないつもりだったけど」

「あ、いや…まあ、その…」

キョウヘイは口ごもって、タツヤの顔を見た。
タツヤもばつが悪そうにしていたが、やがてためらいがちに話した。

「見てたらしいぜ。俺の知り合いがさ。吉岡が、その…ホテルに入るところを…」

「ホテル? それって、いつの話?」

「え? 聞いたのは、先週だけどな」

それを聞いて、ハヅキは何か思い出すように目線をそらした。
どうやら心当たりがあるようだった。

「…やっぱり、ホントなのか…?」

すっかり黙り込んでしまったキョウヘイと比べると、タツヤの方は好奇心を抑えきれない様子だった。恐る恐る、ハヅキに尋ねる。

「…まあね。そうかもよ」

わずかな沈黙の後、意味深な返答をする。
その顔がいつにも増して妖艶に見えたのは、タツヤとキョウヘイがすでに一人の女を見る目で、ハヅキを見ていたからかもしれない。

「へ、へー。 やっぱり、そうなのか。ハハ…すげえな」

「ホント…。ヤバイな」

二人は、自分が泥棒だと堂々と告白する人に出会ったような、ちょっと気を呑まれた様子だった。

「それで? ホントだったら、どうするの? 誰かに言いふらす? それとももう、言いふらしてるか」

先手を打たれて、タツヤはギクッとした。
まさしくそれを考えないでもなかったが、それはあくまで噂話としてのことで、ハヅキの援助交際が事実と分かった以上、逆に軽はずみなことは言えないような気がしてきた。
むしろこれを秘密のまま利用することはできないかと、タツヤは考え始めていたのだ。

「いや、まあ…そんなことしたら、吉岡が退学になっちまうかもしれないだろ? クラスメイトが退学になるってのは、まずいなって思うよ。だから別に、言いふらすとかは…な」

ハヅキは無言のまま、ちょっと小首を傾げた。
何か言いたいなら、はっきりと言え。そんな風に思えるジェスチャーだった。

「だからこれは、俺たちだけの秘密ってことで、いいんじゃないか。なあ?」

「あ? ああ…」

キョウヘイを振り向くと、彼はタツヤの意図が分からずに、適当にうなずいていた。

「…そう。ありがとう」

そう言いながら、ハヅキの表情は不遜だった。

「それで、私は何をすればいいの?」

タツヤが待ちに待っていたであろうセリフを、すべてお見通しの上で言ってやる。
確かにハヅキから見れば、タツヤなどは子供っぽい存在に思えたかもしれない。
くだらない駆け引きで時間を潰すつもりはないようだった。

「い、いやあ。何って。別に、そんな…」

「パンツでも見せようか? アンタが好きな黒じゃないけど。ほら」

ハヅキは無造作に、自分でスカートをめくって見せた。
短すぎるそのスカートの下から、薄いピンク色の下着が顔を出した。

「写真撮ってもいいよ。ほら。アンタも。好きなポーズ言ってよ。お尻でも何でも見せてあげるから」

そこに恥じらいなどは微塵もなく、むしろタツヤとキョウヘイを小馬鹿にしたような様子だった。
「男はこんなもので興奮するんだろ」というハヅキの心の声が聞こえてきそうだったが、そうと分かっていても、女子高生の下着姿から、男子高校生が目をそらせるはずがなかった。
レース地の下着は、ハヅキの股間に鋭角に食い込んでいて、タツヤたちが思っているよりも、その面積はずっと小さかった。
グラビアやネットなどで見慣れているはずが、目の前にするとこんなにも違うものかと、二人の鼻息は荒くなっていった。

「い、いや…。そういうことじゃないって。そんなんされても、なあ? 困るっていうか…」

「う、うん…。まあ、ヤバイな…」

「…じゃあ、こうしようか。今日帰ったら、私の裸の写真を送ってあげるよ。顔は出さないけど、体だけ。何枚か送るから、ライン教えて」

それでオナニーでもしてろ、と言わんばかりの態度に、さすがにタツヤはプライドを傷つけられたような気がした。

「そ、そういうことよりもよ。お前その…いくらなんだよ?」

「え?」

「い、いくらでやってんだよ。その、援交を…」

ハヅキの表情が一瞬、固くなったように、キョウヘイは感じた。
しかしタツヤは相当な思い切りで言ったらしく、ハヅキが返事の代わりにその目を見据えても、動じる気配は無い。

「お、俺とやれよ。いくらか知らねえけど、秘密にしといてやるかわりにさ…」

重苦しい沈黙が流れた。
興奮したタツヤの息遣いだけが、教室に響いているような気がした。

「…1万」

「え?」

「口だけだったら1万。セックスなら3万。生で入れるんだったら、5万もらうよ」

あまりにも毅然としたハヅキの態度に、タツヤはつい呆然としてしまった。
それはキョウヘイも同じで、自分と同じクラスの生徒がこんなことを平然と言ってのけるとは、今まで思ってもみなかったのだ。

「どうすんの?」

二人の心中を見抜いているのか。ハヅキは憮然とした表情で重ねた。

「あ、ああ…。じゃあ、まあ…その…3万のヤツで…」

「セックスってこと?」

タツヤはためらいがちにうなずいた。ゴクリと唾を呑みこむ音が、隣にいるキョウヘイの耳にも聞こえた。
ハヅキは黙ってその顔を見つめていた。その目には敵意か、蔑んだような冷たさが見えた。

「いいよ。じゃあ、やろっか」

いとも簡単に、ハヅキはうなずいてしまった。
タツヤたちが呆気にとられている間に、さっさと着ていたセーターを脱ごうとする。

「え? こ、ここでかよ?」

「そうだよ。誰も来ないし。まとめてやらせてよ。サービスなんだから」

放課後に教室に残っていたら、クラスメイトの女の子と3Pすることになった。
アダルトビデオのタイトルのような状況が、二人の目の前に突然現れた。
実のところ、タツヤもキョウヘイも恋人がいたことはなく、童貞だったから、この突然すぎるチャンスに戸惑うしかなかった。

「アンタ、ゴム持ってる?」

「え? い、いや…」

「そっか。じゃあ、アタシの使うね。ズボン脱いで」

「あ、ああ…」

二人は言われるままに、ベルトを緩めてズボンをずり下げた。
学校の教室で、しかもいきなり3人でという若干のためらいはあったが、若い二人はこのチャンスを逃したくないという気持ちの方が強かった。
二人がズボンを足首までおろすと、すでにそれぞれのトランクスの前は大きく盛り上がっていた。

「ふうん。もう勃ってんじゃん。口で一回抜いてあげようか?」

タツヤとキョウヘイは鼻息を荒くしながら、無言でうなずいた。
ハヅキは無言のまま、男たちに近寄るように手招きした。

「じゃあ、こっちからね」

盛り上がったトランクスの頂点に、そっと手をかけると、思わずタツヤはビクッと体を震わせた。
初めて、ハヅキが小さく笑ったように見えた。
しかしハヅキは、勃起しきったタツヤのペニスには手を触れず、その下、キュッと縮まった金玉袋の方に手をかける。

「う…はぁ…」

タツヤが思わず快感に身をよじり目をつぶった時、隣でキョウヘイがうっと呻くのが聞こえた。

「あ…かぁっ…!」

それは快感を感じての呻きではなかった。
タツヤが目を開けると、隣に立っていたはずのキョウヘイが、その場にうずくまってしまっている。
そして正面にいるハヅキを見た瞬間。

「ぎゃあぁぁっ!!」

下半身に激痛が広がってきた。
ハヅキの右手が、無防備なタツヤの金玉を捻り上げたのである。
その前、キョウヘイはハヅキからいきなり膝で金蹴りをくらい、その場に座り込んでしまっていたのだ。

「たまにいるんだよね。ケチ臭いオヤジがさ」

ハヅキの手は、トランクス越しにタツヤの股間にしっかりと食い込んでいた。
それは握力にすれば20キロかそこらのものだったろうが、男の金玉にとって、それは絶望的な圧力だった。

「直前で値切ってきたり、終わった後、金払わなかったり。そういうヤツには、私は毎回こう言ってる。アンタ、キンタマついてんのってね」

「あ…あぁ…! 離せ…!」

タツヤは必死に腰を引いたり、ハヅキの手首を掴んだりするが、金玉を掴まれた男の体には、普段の力強さはまったくなかった。

「離してほしいの? 離してあげようか?」

いたぶる様な質問だったが、タツヤには選択肢はなかった。
歯を食いしばりながら、全力で首を縦に振った。

「じゃあ、離してあげる」

言葉通り、ハヅキはタツヤの金玉から手を離した。
しかしその離し際、タツヤがまだうずくまってしまわないうちに、先程キョウヘイに打ち込んだのと同じ膝による金蹴りを繰り出した。
高校指定の紺のソックス。ハヅキはそれとは微妙に違う、ニーハイソックスに近いものを履いていたのだが、ちょうどその一番上の部分で、タツヤの金玉は二つとも押しつぶされた。

「ぎゃあっ!!」

強烈な衝撃にタツヤは踵を浮かし、そのまま前のめりに崩れ落ちてしまった。

「く…あぁぁ…」

腰から下が溶けてしまったかのように、力が入らない。それでいて、鈍器で殴られるような痛みだけは、とどまることなく股間から発し続けられる。男が男であることを心から後悔する時間だった。

「うう…」

「ああ…」

ハヅキの目の前で、二人の男子たちは無様にうずくまり、呻き続けた。
体の他の場所を蹴られた時には、どんなに痛くても、徐々にその痛みが薄れていくことが分かる。
しかし金玉だけは、その感覚がまったくないのだ。
蹴られた直後の痛みより、むしろその後に訪れる疼くような鈍痛の方がつらい。そしてそれは、いつ終わるともしれず、場合によっては数十分も続いてしまうのだった。





「キンタマの痛みってさ、世界が終わるような痛みだって、何かの本に書いてあったけど、そんな感じなの?」

ハヅキはすでに、傍らの机に腰を下ろしていた。
苦しみ続ける二人を見下ろして、長い脚を持て余すようにブラブラと揺らしている。
「世界が終わるような痛み」を自ら与えたにも関わらず、まったく意に介していない様子だった。

「うぅ…お前…だましたな…! みてろよ…!」

タツヤは振り絞るような声で言った。

「何が?」

「お前が援交してること…言いふらしてやるからな…! 先生とかに知られたら、お前は…」

「…ふうん」

ハヅキはちょっと鼻を鳴らすようにうなずいて、机から降りると、タツヤの目の前にしゃがみ込んだ。

「じゃあ、これからしてあげようか、続き?」

「え?」

タツヤの鼻先に、ハヅキのシャンプーの匂いが漂った。
その辺のグラビアアイドルなどよりも、よっぽど美しいといわれている顔が、すぐ目の前にある。

「…くっ! ふ、ふざけんな! もう、だまされるかって…」

一瞬、心を奪われそうになったタツヤだったが、股間から疼いてくる痛みで、すぐに気を取り直した。

「ほら。触っていいよ」

ハヅキは突然、制服のシャツのボタンを外し、胸をはだけさせた。
先程見た下着と同じ、薄いピンク色のブラジャーに包まれた、大きな白い乳房が、タツヤとキョウヘイの目に飛び込んできた。
それは彼らがいつもシャツの上から見て想像していたよりも大きく、乳首と思われる頂点がツンと上を向いた、弾力のありそうな乳房だった。

「……!」

二人の息が、思わず止まってしまう。

「ほら、どうしたの? 触んないなら、しまっちゃうよ?」

と、ハヅキはシャツのボタンをとめようとする。

「あ! いや…まあ、そんなに言うなら…」

「まあ…うん」

タツヤとキョウヘイは顔を見合わせると、おずおずと手を伸ばし、二人で左右の胸にほとんど同時に手をつけた。
スベスベしたブラジャーに包まれたその中に、この世のものとは思えない柔らかい素材があった。
写真や動画では決して伝わらない、リアルな女性の体だった。
二人は一瞬、股間の痛みも忘れて、ハヅキの乳房に触れた指を、ピアノでも弾くかのように波打たせてしまう。

「はい、アウト。これ、動画撮ってるから」

「え?」

思いもかけぬハヅキの言葉に、現実に引き戻された。
ふと見ると、先ほどタツヤが座っていた机の上に、いつの間にかスマートフォンが置いてあり、そのレンズはジッと彼らの方を見ているようだった。
ハヅキはすっと立ち上がると、そのスマホを手に取った。

「うん。アンタらのエロ顔が、よく撮れてるね。悪いけど、アタシ慣れてんだ、こういうの。色んなヤツがいるからさ。そういうときは、これを警察に持ってくよって言うわけ。アタシが襲われたって言えば、困るのは男の方でしょ?」

言葉通り慣れた手つきで、ハヅキはスマホの画面を操作していた。
確かに女子高生に手を出したとなれば、大人はどういう場合でも犯罪になるし、タツヤたちも同級生とはいえ、ただではすまないだろう。

「ま、触らせなくてもよかったんだけど、ちょっとしたサービスかな。童貞くん達には嬉しいご褒美だったでしょ? この顔…。フフフ…」

動画に映った二人の顔を見て、ハヅキは笑っていた。
その言いぐさに、さすがにタツヤも腹が立った。

「この…! いい加減にしろよ!」

カッとなり、ハヅキの手からスマホを奪おうとする。
自分がトランクス一枚で、ズボンを下まで下ろしていることを忘れてしまっているようだった。

「おっと! 届くの? フフ…」

ハヅキがスマホを高く上げて、挑発するように笑った。
タツヤがそれを奪おうと手を伸ばした瞬間、またしてもハヅキはタツヤの股間を鷲掴みにした。

「うっ!」

「学習しないヤツだね、アンタ。また痛い思いしたいんだ?」

ぐっと股間を握る手に力を入れると、それだけでタツヤの全身から力が抜けた。

「うあ…! あ…!」

「おい! お前…!」

キョウヘイが立ち上がろうとすると、ハヅキは威嚇するように脚をスッと上げた。
真っ白な膝小僧が股間を狙っているような気がして、キョウヘイは思わず、両手でおさえてしまう。

「アンタは座っときな。痛い思いしたくないならね」

言われるまでもなく、キョウヘイの股間には、まだ先ほど蹴られた痛みがしっかりと残っていた。
完全に心を折られ、キョウヘイは言われた通り、おとなしくその場に座ってしまった。

「さあ。アンタのコレはどうする? 今度こそ潰しちゃおうか?」

ハヅキが冷めた目でそう言うと、冗談や脅しに聞こえなかった。
タツヤの顔から、サッと血の気が引いて、緊張が走る。

「男ってホント、なんていうかさ、バカだよね。やらせてあげるよって言えば何にも考えずに喜ぶし、潰すぞって言えば、縮み上がってビビっちゃうし。全部この、キンタマのせいでしょ?」

グイッと、ハヅキが金玉袋を握る手をひねり上げた。
タツヤはうめき声を上げながら、全身を反り返らせる。

「でもさ、そんなバカな男のおかげで、アタシはお金がもらえてるんだよね…」

ハヅキはふっと冷たい目で、金玉の痛みに苦しむタツヤの顔を見た。
何か哀愁の混じるような、そんな目だった。

「金を払わないで逃げようとするヤツに、アタシがどうするか教えてあげようか? こうやって! キンタマを掴んでさ!」

ハヅキは右手に力を込めて、タツヤの睾丸を二つともひねり上げた。
タツヤの呼吸が、ヒュッと音を立てて、一瞬、止まる。

「アタシは体を売ってんだから、アンタにも体で払ってもらうよって言うの。アンタのキンタマをもらうよってさ。どう? その方が公平でしょ?」

タツヤは天を仰ぎ、細い細い呼吸をしながら、必死に首を横に振った。
その間も、ハヅキの指の長い爪が、彼の金玉袋にグリグリと食い込んでくる。

「ぐあぁ…! そんな…の…」

「イヤなの? じゃあ、アンタは自分のキンタマにいくら払う?」

「い…いくらって…」

タツヤは自分の最も大切な部分を、平然と握り潰そうとしているハヅキに恐怖を感じた。

「キンタマを離してほしいなら、いくら払うって聞いてんの」

さらにグイッと、ハヅキは金玉袋をねじりあげた。
タツヤはとめどなく溢れてくる苦しみに呻きながら、ようやく声を絞り出した。

「い、いちまん…えん…とか…」

「1万? たったの1万? アタシは3万でやらせてあげるって言ったよね? それなのに、アンタはたったの1万なんだ。へー。やっすいキンタマなら、なくてもいいんじゃない? このまま潰すね?」

ハヅキがタツヤの股間を握る右手に、さらに左手を重ねて、両手で握りつぶそうとしてきた。
タツヤは必死に声を張り上げた。

「や、やめて! やめてくれ! 3万払うから! それで勘弁して…」

今にも泣きださんばかりの涙声だった。
痛みもそうだが、金玉を潰される恐怖に勝てる男はいない。
それは自分が男でなくなってしまうかもしれないという、根源的な恐怖だった。
懇願するタツヤの顔を見て、ハヅキはフッと微笑を浮かべる。

「最初からそう言えばいいのに。大事なキンタマなんでしょ? はい、離してあげるよ」

と、ハヅキはタツヤの睾丸から、食い込ませた指を離してやった。
ただし、一つだけである。

「ふあっ!」

わずかな解放感と、いまだ続く強烈な圧迫感に、タツヤの口から吐息が漏れた。
片方の睾丸を解放されたが、もう片方はまだ握られたままという状態に、期待を裏切られたような感覚になったのか、その目から今にも涙がこぼれ落ちそうだった。

「フフ…。なに、その顔? だって、キンタマって二つあるじゃん。一つ3万でしょ? 高いモノを二つもぶら下げて、男って大変だね」

ハヅキは愉快そうにタツヤの顔を見て笑っているが、その手は決して緩めなかった。
実際、二つ掴まれていようが一つ掴まれていようが、男の痛みにそれほどの違いはない。
それすらも経験で分かっているのか、ハヅキは意地悪そうな笑いを浮かべていた。

「う…ぐあ…!」

「さあ、どうすんの? 一つ3万のキンタマでしょ? 二つで6万。きっちり払ってよね?」

掴む睾丸が一つになったことで、かえって握りやすくなったようだった。
指を食い込ませるのとはまた違う、睾丸全体を圧迫される苦しさが、タツヤの下半身を襲っていた。

「うぅ…! ろ、6万なんて、持ってない…。あぁっ!」

「へー、そう。それは残念だね。じゃあ、片っぽだけもらっとくね。せーの!」

なんのためらいもなく、ハヅキがタツヤの睾丸を握り潰そうとしたとき、タツヤが必死に叫んだ。

「か、借りるから! キョウヘイから借りるって! な? 貸してくれ、キョウヘイ!」

タツヤが金玉を握り潰されるのを、キョウヘイは子供のように呆然と座って見ていた。しかしその両手だけは、しっかりと股間を守っている。
ハヅキはチラリとキョウヘイの方を振り返った。

「え…!? いや、俺…は…。ごめん。二万くらいしかない…」

泣き出しそうな顔で答えた。

「だってよ。一万足りないじゃん。どうすんの?」

「ごめん! ごめんなさい! 絶対払うから! ちょっと待って…! 頼む…」

鼻水を流しながら、タツヤは叫んだ。
ハヅキはちょっと首をかしげて、考えるような仕草をした後、うなずいた。

「しょうがないね。二つで5万で勘弁してあげるよ」

すっと、タツヤの睾丸を握る手から力を抜いた。
タツヤがほっとしたのもつかの間だった。

「じゃあ、これで足りない分ってことね」

ぐいっと、左手でタツヤの金玉袋を引き寄せ、逃げ場のない状態になったその睾丸に、右の掌を叩きつけた。

パンッ! 

思い切りビンタされたタツヤの睾丸は、一瞬、楕円形から真円に形を変えた。
その瞬間、タツヤの腰から背中にかけて、うすら寒い空気が突き抜けたような気がした。
次に襲ってくるのは、他に例えようもない、絶望的な痛みと苦しみである。
ハヅキが言うように、世界が足元から崩れていき、暗黒の世界に落ちていくようなような感覚を、タツヤは感じた。

「んんっ!! あはっ…!」

ハヅキがようやく手を離してやると、タツヤは何の躊躇もなく床に這いつくばり、両手で股間をおさえながら、バタバタと足を何度も打ちつけた。
尻を高くつきだしてみたり、背中を丸めてみたり、どんな姿勢になればこの痛みが治まるのか、自分の体とはいえ、まったく見当がつかないようだった。

「うわー。痛そー」

その動きが、ハヅキにとっては冗談のように見えるらしい。
決して痛みを分かち合えない女として、まったく同情のこもっていない感想と共に笑っていた。

「……!」

逆にキョウヘイはタツヤの痛がりようを、十分に想像できるものとして見ざるを得なかった。
今はただ、自分にもその痛みが与えられないことを祈り、黙っていることしかできない。

「じゃあ、5万ね。明日、ちゃんと持ってきてよ? あと、アタシがやってることも、黙っといてくれるんだよね?」

ハヅキはしゃがみこみ、脅すように二人の顔を覗き込んだ。
タツヤはまだ返事をするどころではないが、キョウヘイは当然、何度もうなずく。
それを見て、ハヅキは満足したように薄く笑った。
男にゆすられて、一度でも体を許してしまえば、その後もずっとゆすられ続ける。
女の体を目当てにすると、男は際限のない欲望の塊になるということを、ハヅキは知っていた。
だから男にゆすられた時には、逆に脅して、痛めつけてやる方がいい。
リスクは伴うが、女の武器を上手に使えば、男を嵌めることはできる。そして金玉を痛めつければ、男は女に屈服する。
その痛みと苦しみは男にとってトラウマになるほどのものだということも、彼女はよく分かっているようだった。

「そう。ならいいや」

すっと立ち上がると、脱いでいたセーターを羽織り、一仕事終えたかのように、シャツと髪型を整えた。

「あ、そうだ。まあ、一応クラスメイトだし、黙ってるって約束もしてもらったし、抜いてあげてもいいよ? サービスで」

と、ハヅキは二人を振り向いて、右手でペニスをしごく真似をして見せた。
伏し目がちに様子をうかがっていたキョウヘイの肩が、ピクリと反応したのが分かった。

「アタシ、けっこううまいって評判だから。しごきながらキンタマ揉まれると、気持ちいいんでしょ?」

右手でペニスをしごき、左手で金玉を揉むふりをする。
その手の動きを見ると、キョウヘイはもちろん、金玉の痛みにうめくタツヤさえ、わずかながら興奮を覚えざるを得なかった。

「フフ…。ま、すぐには無理かな。また今度ね」

男を操るには、痛みでも快感でも、要するに金玉なのだと、ハヅキは改めて思った。
金玉から男の欲望が湧き出て、その欲望に男は支配される。
しかし欲望にまみれた男を止めるのも、また金玉の痛みなのだ。
女は男の金玉を支配する方法を覚えておくべきだと、ハヅキは思った。
そうすれば、一方的に奪われることはない。

やっかいな金玉を持たない女としての優越感と、男へのわずかな哀れみを感じながら、ハヅキは教室を出ていった。

「じゃあね」

残された二人の哀れな男は、彼女の後ろ姿を、呆然と眺めることしかできなかった。





終わり。



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