エリカの言う「テスト」が始まって数分。 カズシは自分の男としての本能をおさえるのに、精いっぱい神経を集中していた。エリカたちはただ、机に座ってカズシの様子を眺めているだけである。 しかし、女の子たちの視線が自分の下半身に集まっているという感覚が、これほど厄介なものだとは思わなかった。 しかも相手は、問題児ではあるがクラスでも飛び切りの美人で、スタイルも良く、机の上で足を組み換えるたびに、その短すぎるスカートから下着が見えてしまいそうだったのだ。
「おい、なに目瞑ってんだよ。開けろよ」
ちょっとでも目をそらしたり瞑ろうとしたりすると、注意される。 エリカが決めた「テスト」の制限時間は15分だった。 その間、カズシは真面目なことだけを考え続けていようと誓った。
「数学のユキエちゃんさあ。超美人じゃん。アンタ、年上が好きなの?」
女の子たちは、どうやらじわじわとカズシをいたぶるつもりらしかった。 男の性欲の象徴であり、最大の急所でもある性器を支配することは、男そのものを支配するような感覚があるのかもしれない。
「あ…いや…そういうわけじゃ…」
数学教師の村田ユキエは、教師になってまだ2年目という新人だったが、その大人の色気に溢れた外見が男子生徒たちに人気だった。 単なるタイトスカートやパンツスーツでも、着る人が着ればこんなにいやらしくなるという見本のようだった。
「ユキエちゃん、キレイだもんねー。ていうか、エロい?」
「そうそう。胸も大きいしねー。いつもユキエちゃんでシコシコしてるんだ?」
「そ、そんなことは…」
図星を指されたようで、カズシは焦った。 いつもというわけではないが、ユキエでオナニーしたことは一度や二度ではない。しかしそれを思い出すと、カズシのペニスは反応してしまいそうになるのだった。
「あれ? チンコ勃ってない?」
「ん? そうかな。小っちゃくてわかんないね。でも、とりあえず蹴っとこう。軽くね。えい!」
カズシのペニスが、少し膨らんだように見えた。 ちょっとでも勃起すれば、金玉を蹴られるというルールになっていたので、アイコは有無を言わせずカズシの股間を蹴り上げた。
「はうっ!」
ほんの軽い蹴りだったが、カズシは手で股間をおさえてしまう。
「おい、隠すなよな。見えないだろ」
「言っとくけど、お前が倒れたら、それでテストは終了だからね。その時はキンタマ潰すから」
あまりにも無慈悲な女の子たちの言葉に、カズシは戦慄する思いだったが、とにかく痛みに歯を食いしばって、体を起こすしかなかった。
「そうそう。頑張って。キャハハ!」
アイコの無邪気そうな笑いが、何よりも恨めしかった。
「お前さ、女の子のパンチラとか好きなの? さっきからアタシのスカートの中覗いてるけど」
エリカの言葉に、カズシはギクッとした。 見ないようにはしていたが、目をそらすと怒られてしまう。 視界の中に、あんなにも短い女子高生のスカートがあれば、目が行ってしまうのが男の本能だった。
「あー、男子って好きだよねー。パンチラ」
「なんでパンツなんかで興奮するんだろうね」
すると、イズミが立ち上がって、カズシの目の前にきた。
「興奮すんの? 女子のパンチラ見て?」
カズシは必死に首を横に振った。 イズミもエリカに負けず、なかなかの美人だった。エリカよりも長身で、キレイ系が好みの男子なら、むしろエリカより評価は高いかもしれない。 普段、短いスカートで長い脚を晒して歩いている姿に、多くの男子生徒たちは密かに興奮してるのだ。それを思い出すと、カズシのペニスは反応してしまいそうだった。
「じゃあ、パンチラとオッパイと、どっちが好きなの?」
答えようがない質問だったが、答えないわけにもいかなかった。
「その…オッパイの方が…」
「ふうん。じゃあ、見てみる? アタシのオッパイ」
イズミはおもむろに、上着のカーディガンとブラウスの襟を広げた。 ちょうどカズシの鼻先に、ツンと盛り上がった形の良い胸の谷間が見えそうになった。
「あ…」
思わず覗き込もうとすると、ズン、と重たい衝撃が股間に走った。
「ぐえっ!」
イズミの膝が、カズシの股間を打ち抜いたのである。
「見てんじゃねえよ、ヘンタイ!」
さっと胸を隠して、イズミは背を向けた。
「うぐぐ…」
金玉の痛みは、小さなものでも長く下半身にとどまり続ける。 先程からいたぶられ続けているカズシの金玉には、相当な量のダメージが残っており、それがジンジンと腰に響いていた。そこへまた、強烈な膝蹴りをくらったのである。 倒れてしまわないように、カズシは近くにあった机に手をつくしかなかった。
「あー。痛そー。チンチンもしぼんじゃったねー」
「今のは、半勃ちくらいまでいってたね。もう潰しちゃっていいんじゃない?」
「うーん。まあ、ガチガチに勃起したら、潰すって言っちゃったから。とりあえず、様子見ようかなあ」
女の子たちは、明らかに楽しんでいた。 そもそもカズシが授業中に勃起したことも、恥ずかしいことだが、彼女たちに責められる筋合いはないはずだった。 それがなぜ、こんなことになってしまっているのか。カズシにはいくら考えても分からなかった。
「そっかあ。オッパイは好きだけど、パンチラはあんまりなんだあ。じゃあ、こういうのもダメかな?」
アイコが立ち上がって、クルリと振り向いた。 そしてそのまま前屈するように前かがみになると、アイコの短いスカートの中は丸見えになってしまう。
「あ…」
アイコは学校指定の黒いタイツを履いていたのだが、タイツの奥に透ける白いパンティーは、むしろ生のパンティーよりもエロティックだった。
「お、勃ってきた!」
「え? ホント? なんだ。パンチラも好きなんじゃん。ほらほら。女子高生のパンティーだよー。触ってみるー?」
アイコは後ろ向きのまま、おどけるように腰を振って、カズシに近づいてきた。 カズシの股間はまだ痛み、まっすぐには立てない状況だったが、それはそれとして、アイコのお尻からは目が離せない。
「えい!」
本当に手が届きそうなところまで迫ってきたとき、アイコの右足が後ろに跳ね上げられた。 堅い踵が、カズシの股間をひしゃげさせる。
「うぐっ!!」
カズシが最初に感じたのは、痛みではなくアイコの黒タイツのザラッとした感触だった。 その後で、大きな波紋が広がるようにして、痛みが体中に伝わってくるのである。
「あぁうう…!!」
ハンマーで腰骨を叩かれるような鈍痛。しかしカズシは股間をおさえることも、座り込むこともできず、机を抱えるようにして、足踏みを繰り返した。
「後ろ回し蹴り! 決まったぁ! カッコいい? キャハハ!」
アイコがはしゃぐ間も、カズシの鈍痛はますます彼の体力を奪っていった。 もはや立っていることさえ辛く、体中から冷たい汗が流れ始めていた。
「今のも、半勃ちくらいだったね。やっぱりヘンタイだよ、コイツ」
「そうだね。これはもう、確定だね」
真打登場というように、いよいよエリカが立ち上がった。
「ハア…ハア…。あの…もう、ホントに…」
憐れみを乞うように、カズシはエリカの顔を見上げた。 しかしエリカは、そんなカズシの顔を見ると、むしろますます苛めてやりたくなるようだった。
「何? もうやめてくださいって? どうしようかなあ。ほら!」
言いながら、カズシの股間を軽く蹴り上げた。 ほんのかする程度の蹴りだったが、すでにカズシの睾丸は、ちょっとしたダメージすら許容できなくなってしまっている。
「はうっ!」
思わず、股間を両手でおさえて丸まってしまう。 強烈な痛みに、脂汗を流し、歯を食いしばって痛みに耐えるしかない。 ふと見上げると、そんな自分の姿を、女の子たちが面白そうに見つめていた。
「あーん。キンタマ、いたーい! アハハハ!」
女の子たちは、カズシと同じように股間を両手でおさえ、内股になり、声をそろえて笑った。 それは、急所である金玉を持たない女の子たちが、男に対して最も優越感を感じる瞬間だったかもしれない。 逆にカズシの方は、自分が今味わっている痛みや苦しみを決して味わうことのない女の子という存在に、心から羨望を感じざるを得なかった。
「ったく、男ってホントに情けないね。ちょっとキンタマ蹴られたくらいでさ」
「そうだねー。アタシ、女に生まれて良かった―。絶対ヤダもん、キンタマとか。邪魔じゃない?」
笑い転げた女の子たちは、目に涙さえ浮かべていた。
「アハハハ! あー、ウケた。面白かったあ」
エリカも、先程までの冷たい表情が消えて、若干顔が明るくなったように見えた。
「スッキリしたんじゃない? 良かったね」
「ホント。まあ、なんかありがとね。実はさ、昨日彼氏と別れて。なんかイライラしてたんだよね。浮気されたからさ。男とか、マジでありえないと思ってたから」
「そんな時にエロい男見たら、そりゃあイラつくよねえ」
「そうそう。でもなんか、コイツの情けないトコ見て、スッキリしたかも。男ってバカだね。みんな、エロくてバカ。ハハハ」
エリカたちは、何やら納得したように話していたが、それがもし事実だとしたら、カズシにとってはとんだとばっちりだった。 そんなことで、自分は金玉を潰すと脅され、弄ばれるようなテストをさせられて、トラウマになりそうな痛みを与えらえているのだ。 それを思うと、カズシにも怒りが込み上げてきたが、ここで終わってもらえれば、それに越したことはない。ヘタな抵抗はしない方がいいと、カズシは思った。
「じゃあ、もうそろそろ時間だね。最後にアタシがやってあげるよ」
そう言うと、エリカはおもむろにカーディガンのボタンを外し、さらにブラウスのボタンまで外し始めた。 ベージュのブラジャーに包まれた、豊満な乳房が露わになる。
「おー。エリカ、やっぱ胸大きいねー」
「マジで? ユキエちゃんほどじゃないけどね。ほら。大好きなオッパイだよ? 触りたい? 触ってみる?」
エリカ自らの手で下から持ち上げると、乳房は柔らかそうに揺れた。 痛みに喘いでいたカズシだったが、その様子から目をそらすことはできなかった。
「あ、勃ってきた。早いなあ。もう半勃ちくらい」
アイコがしゃがみこんで、カズシのペニスを指さす。
「ふーん。でもまだ半勃ちか。じゃあ、こういうのはどう?」
エリカは胸をしまうことなく、スカートの中の下着に両手をかけた。 何をするかとカズシが見ていると、なんとそのまま、下着を降ろし始めてしまった。
「ほら。アタシのパンティー。欲しい? 匂い嗅いでみる?」
たった今脱いだばかりのベージュ色の下着を、カズシの目の前でブラブラと振って見せた。
「やだあ。匂い嗅ぐとか、ヘンタイじゃん」
「いいじゃん、コイツ、ヘンタイなんだから。嗅ぎたいでしょ?」
「あ…いや…その…」
さすがにためらいがちに目を伏せると、なんとエリカが自ら、カズシの頭に自分の下着を被せてしまった。
「あっ! ん…」
鼻を突き抜ける、ほのかな汗の匂い。額にはかすかな温かみを感じた。
「はーい。ヘンタイの出来上がりー! アハハハ!」
下半身を露出して、女子高生の下着を頭にかぶったその状態は、言い逃れようのない変態の姿だった。
「キャハハハ! マジでヘンタイだね。写メろう、写メろう」
「あ、アタシも」
女の子たちが携帯を構えだすと、カズシはハッと我に返って、下着を頭からとろうとしたが、エリカの手がそれを制した。 さらにエリカは、カズシの耳元で囁く。
「アタシ、今ノーパンだよ。お前のガチガチのチンコ見て、濡れちゃってるかも。それも見せてあげようか?」
気がつくと、カズシのペニスは天を突き刺すように勃起していた。 カズシはそれが何を意味するか理解したが、目の前にぶらさげられた餌を見逃すことはできなかった。
「は、はい…」
とめどない痛みと激しい興奮を同時に味わい、カズシの頭はもうパニック状態だった。 エリカは小さく笑うと、そのスカートにそっと手をかけた。
「あ…」
いつも目で追っていた、超ミニのスカートの奥、白い太ももの付け根に、ささやかな茂みが見えたかと思った瞬間、カズシの意識は飛んだ。 紺のハイソックスに包まれたエリカの脚が、しなる鞭のようにカズシの股間に突き刺さったのである。
ズゴッと、骨と骨がぶつかるような音がして、カズシの体は一瞬、宙に浮いた。 ザワッとした感覚が背中を突き抜け、それは脳天にまで達する。 痛みと呼ぶにはあまりに大きな苦痛の波が、カズシの全身にくまなく広がってくのが分かった。
「ぎゃうんっ!!」
得体のしれない叫び声を上げて、カズシはそのまま仰向けに倒れてしまった。 もはや股間をおさえようとする意識もなく、カエルがひっくり返ったように股を開いて、ビクビクと痙攣している。 その目は虚ろで、半分白目をむいているようだった。
「おおー! なんか、すごかったね」
「白目むいちゃってるよ。キャハハ!」
「うーん。なんか、手応えあったかも。潰れたかな?」
女の子たちは興味深そうに、しかしどこか面白そうに、痙攣するカズシを見下ろしていた。
「でも、まだ勃ってるよ。これ、気持ちいいってこと?」
「マジで? うわあ。コイツ、ヘンタイだな」
「相当溜まってんのかな。やっぱり、ちょっと懲らしめといて良かったね」
カズシのペニスは、確かにまだ上を向いて、その膨張が静まる気配は無かった。それは興奮によるものではなかっただろうが、どうして勃起し続けているのか、カズシ自身にも理由は分からないだろう。 その時、エリカのポケットで携帯電話が鳴った。
「あ、彼氏だ…」
昨日、別れたという彼氏からの電話をとった。 その様子を、アイコとイズミも興味深そうに見ている。
「もしもし? …うん。今? 学校。…うん、うん。今から? …いいよ。行くよ。…はい。じゃあね」
拗ねたような顔をして、エリカは電話を切った。
「どうしたの? 彼氏? ていうか、元彼?」
小さく笑いながら、アイコが尋ねた。
「うん…。今から、会いたいって。アイツの家で」
「へー。良かったじゃん。より戻すんだ?」
そう言われても、エリカの表情は曇っていた。
「うん…。いや、決めた。今から行って、アイツのキンタマ蹴っ飛ばしてくる」
「え? 彼氏の? いいの?」
「いいよ。今さら呼び出しとか、アタシのことなめすぎでしょ。今のでコツ掴んだから、マジで潰してくるわ」
エリカが決意に満ちた表情をしているので、アイコとイズミは口出しようがなかった。 その間も、カズシは痙攣しながら苦しみ続け、口の端から泡のようなものさえ吐き出してきた。
「じゃあ、アタシたちも帰ろうか。途中まで一緒に行くよ」
「うん。ていうか、見てみたいなあ。キンタマ潰されるところ。家の前まで行っていいでしょ?」
「まあ、それは別にいいけど。じゃあね、久野。お前、もう授業中に勃起とかすんなよ!」
「あ、そうだった。じゃあねー。バイバイ!」
「エリカ、アンタ、パンツいいの?」
「あ、うん。久野にあげるわ。なんか、ちょっと勉強になったし。お礼に」
「それ、いいかもね。匂い嗅いで、いっぱいシコシコしな。じゃあね」
女の子たちは、楽しそうに話しながら教室を出て行った。 カズシが意識を取り戻したのは、下半身丸出しで寝ているところを、戸締りにきた用務員に発見される数時間後のことだった。
終わり。
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