「もう! なんでこんなことになってるのよ!」
「今日こそ逃がさんぞ、ナツキ! お前にはこの道場を継いでもらうため、みっちりと稽古をしてもらうからな!」
ここはとある拳法道場。師範をつとめる父親と向かい合っているのは、進藤ナツキ・17歳だ。 彼女は道場の一人娘で、類まれな運動神経を持っていたが、父親が無理矢理教える伝統拳法になど興味はなかった。しかし父親のコウジはナツキの才能を惜しみ、どうしても自分の道場を継がせようと、しつこいほどに迫ってくる。 今日もまた道場にうまくナツキをおびきだして、力ずくで稽古をつけようとしているのだった。
「ていうか、アタシの携帯はどこなのよ、お父さん!」
「ん? 携帯か。俺に勝ったら、返してやってもいいぞ」
コウジはナツキの携帯をこっそり奪い、隠し持っているのだった。
「しかしその前に、この弟子たちも倒さなければいけないぞ。勝てるかな?」
道場には、コウジがいつも鍛えている弟子たちが、道着姿で集結していた。その数はざっと20人。いずれも屈強そうな男たちで、ナツキの前に立ちはだかっていた。
「はあ? ちょっと、いい加減に冗談やめてよ。待ちあわせに遅れるでしょ。返して!」
「ふん。どうせ、男と遊びに行くんだろうが。そんなことは許さんぞ! お前達、怪我をさせない程度に稽古をつけてやれ!」
「押忍!」
弟子たちはうなずいて、ナツキを取り囲むようにして構えた。
「ちょっと…。もう! どうなっても知らないからね!」
ナツキは少し焦ったが、特にこわがる様子もなく、やがて覚悟を決めたように拳法の構えをとってみせた。
「ほう。やる気になったか」
ナツキは丈の短いジャケットを羽織り、プリーツのミニスカートにハイソックスという可愛らしい出で立ちだった。 メイクや髪のセットもばっちりで、いかにもデートに行きますという格好だったのが、父親であるコウジの勘に触ったのだった。
「どうした! いけ!」
弟子たちはナツキを取り囲んだものの、攻撃をためらっていたのだが、コウジの檄で一人が飛びかかった。
「うおぉ!」
「えい!」
弟子の一人が間合いを詰めて正面から向かってきたが、ナツキは落ち着き払った態度で、前蹴りを放った。
パァン!
と弾けるような音がして、ナツキの蹴りが弟子の股間に炸裂した。
「はぐぅ!」
飛び込んできた弟子はナツキの眼前で立ち止まって、股間をおさえて崩れ落ちてしまう。
「おお!」
背後から、続けざまに別の弟子が飛び込んできた。 ナツキは素早く振り向いて、弟子が放った正拳突きを左腕で払いのけた。
「はっ!」
密着した弟子の股間に、ナツキの右ひざが容赦なく突きささる。 一瞬、体が浮き上がるほどの衝撃だった。
「うげっ!」
この弟子もまた、股間をおさえてしゃがみこむ羽目になってしまった。 ナツキはこんな調子で、次々と襲いかかる父の弟子たちをノックアウトしていった。 この道場において金的攻撃は反則ではなく、れっきとした技の一つだった。 コウジはナツキが幼いころから無理矢理に拳法を教え込んでいて、ナツキが拳法に興味が無くなった今でも、彼女の体がそれを覚えていたのだ。
「えい! やあ!」
いったんスイッチが入ってしまえば、ナツキは拳法家の顔になる。金的蹴りを放つたびに、ミニスカートの裾がめくれて、下着が見えてしまっているのだが、それを気にする様子もなかった。
「……」
ナツキの足元でうずくまる弟子たちは、今までに何度となく彼女に金玉を蹴られていたが、今日は特に容赦のない金蹴りだったように思えた。 しかし、少し目を上げれば見えてしまうナツキの薄いピンク色のパンティーに包まれた小ぶりな尻の曲線と、すっきりとした股間、そして金玉の痛みの中に残るハイソックスの感触は、弟子たちの嗜虐心を刺激し、密かに興奮させるに十分なものだった。
「もう! 金玉潰れても知らないからね!」
次々と向かってくる弟子たちに、ナツキはうんざりした。 しかし一人の弟子の攻撃をかわした時、いきなり後ろから左腕を掴まれてしまった。 そしてナツキの腕を掴んだ弟子はそのまま、両手で肩の関節を極めてしまった。 この道場では、打撃だけでなく関節技も十分に指導している。しばらく稽古をしていなかったナツキの油断だった。
「あっ!」
さすがのナツキも前のめりになって、痛みに顔をしかめた。 ナツキの腕をとった弟子は得意げな表情で、勝利を確信した様子だった。
「いいぞ! そのまま、肩を外してもかまわん。男と遊びに行くような尻軽娘は、反省するんだな!」
コウジは興奮のあまり、およそ父親とは思えない指示を弟子に出した。 さすがに弟子はナツキの肩関節を外してしまうのはためらっていたが、その間に、ナツキの怒りが頂点に達した。
「なんだって、この馬鹿オヤジ!」
ナツキは肩の痛みも忘れて、鬼のような形相になった。 弟子はあわててナツキの関節をさらに捻りあげようとしたが、それよりも早く、ナツキの右手が背後にいる弟子の股間に伸びた。
「はうっ!」
ナツキは弟子の金玉を素早く握りしめ、思い切り力を込めた。
「あぁぁ!」
弟子は絶叫し、ナツキの腕を離してしまった。 しかしナツキは弟子の金玉から手を離さず、ますます強く握りしめるのだった。
「娘の関節を外してしまえなんて、それが父親の言うことなの!」
悲鳴を上げる弟子を無視して、ナツキはコウジを睨みつけた。
「もう、許さない! お父さんも痛めつけてやるから、覚悟しなさいよ!」
「む…」
娘の剣幕に、コウジはちょっとひるんだ様子だった。
「は、離して下さい…。お嬢さん…」
金玉を掴まれた弟子は、涙目になりながら懇願した。 ナツキは弟子の顔を睨みつけると、最後にグリッと金玉を弾くようにして、手を離してやった。 金玉を解放された弟子は、糸が切れた人形のように床に突っ伏してしまった。 残った弟子は、あと二人となった。
「……」
彼らはナツキの剣幕に完全にひるんでしまい、顔を見合わせて、どっちが先に行くか迷っている様子だった。 しかし彼らが決断するよりも早く、ナツキが二人に飛びかかった。
「やっ!」
ナツキは二人の前に立った状態から、両脚を抱えて飛び上がり、二人同時に金的蹴りを打ち込んだ。
「ぷっ!」
「あっ!」
常識では考えられない両脚の飛び蹴りだったが、ナツキの運動神経がそれを可能にした。 しかもナツキの足は正確に二人の金玉を捉え、これまで以上の苦しみを彼らに与えるのだった。
「ぐええ…」
金玉を蹴られた瞬間、二人の目にはナツキのスカートの中が丸見えになったのだが、もはやそれを認識する余裕もなかった。二人は涎を流しながら、道場の床に転がることになった。
「…さ、これで後はお父さんだけね」
ナツキは無表情な顔で、父親のコウジに振り向いた。 一歩ずつ近づいてくるその姿には、静かな怒りがうかがえる。
「す、すごいじゃないか。あんな蹴りは教えたことがないぞ。やっぱりお前には才能がある。もっと稽古すれば、俺よりも強くなれるかもしれんぞ」
コウジはナツキの運動神経に、素直に感心しているようだった。 しかし今のナツキは、そんなことを言われても嬉しくもなんともなかった。
「はあ? 興味ないんだけど。てか、今でもお父さんより強かったりして」
この言葉には、コウジはさすがにカチンときた様子だった。
「何だと? うぬぼれるなよ。お前なんか、まだまだだ。金的がちょっと使えるくらいで調子に乗るな!」
「十分でしょ。男なんて、金玉蹴れば一撃なんだから」
ナツキはコウジの前に立ちはだかった。 手を伸ばせば届く距離であるが、ナツキからは攻撃しない。カウンターを狙っていることは明らかだったが、コウジは父親のプライドをかけて、あえて受けて立つことにした。
「うりゃあ!」
コウジは渾身の右回し蹴りを放った。 ナツキはそれを予測していたかのようにしゃがみこんでかわし、目の前にきた父親の股間を睨みつけた。
コウジは渾身の蹴りがあっさりかわされたことに驚いたが、すぐに自分の状況の危険さを知り、全身の毛が逆立つ感覚があった。
「お父さんの…」
ナツキは力を溜めている。
「ナツキ、やめ…」
「バカァ!!」
コウジの願いも空しく、ナツキは渾身の裏拳を父親の股間に叩きこんだ。 コウジが教えた金的攻撃の中でも、最も正確に金玉を捉えることができ、破壊力の高い技だった。
ベチィン!
と、ナツキは手の甲に父親の金玉袋が乗っかる手ごたえを感じた。 コウジの金玉は袋の中で二つとも跳ね上がり、数瞬後に強烈すぎる痛みをコウジに与えることを約束した。
「ふぐぅ!」
コウジは反射的に息を詰まらせて前かがみになったが、ナツキの攻撃はそれでは終わらなかった。 自らが跳ね上げた金玉を、今度は掌を返して追いかけるように掴んだのだ。
「はがっ!」
コウジは自分の金玉を握る娘の細い手首を掴んで、プルプルと体全体を震わせた。 すでに重苦しい痛みが下腹部に広がっているのだが、さらにじわじわと締めつけられる感覚が、二つの金玉から沸きあがってきている。
「ナ、ナツキ…」
コウジは涙目になりながら、娘の顔を見下ろした。 ナツキは目を上げて、父親の顔を睨みつける。
「お父さん。約束する? もうこんなことしないって?」
さもないと握りつぶすぞ、と言わんばかりのナツキの問いかけに、コウジは震えながらうなずいた。
「そう。良かった」
ナツキは不意ににっこりと笑いかけた。 その顔はコウジが良く知っている、娘の笑顔だった。 しかし次の瞬間、ナツキはコウジの金玉を思い切り握りしめた。
「……っ!」
声にならない叫び声を上げて、コウジは白目をむいて倒れてしまった。 その拍子に、コウジの胸元から、ナツキの携帯電話がこぼれ落ちた。
「あー、やっぱり持ってたんだ。返してよね」
ナツキは父親の金玉から手を離して、携帯電話を拾った。
「さて。変な時間くっちゃった。遅れちゃう!」
ナツキは何事もなかったかのように、小走りで道場を出て行った。 後に残されたコウジは泡を吹いて気絶し、その弟子たちも金玉の痛みに震えながら、しばらく動くことができなかった。
終わり
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