ユイが所属している陸上部には、もちろん何人かの男子生徒がいる。 その中の三石タクマという一年生に、ユイは目を付けた。 なぜ彼だったのかというと、ユイは知っていたからである。 タクマがユイに、恋心を抱いていることを。
タクマは成績が悪いのか、週に何回か、宿題やテストのやり直しをさせられて、部活に遅れてくる。 この日も、陸上部の練習が始まって30分ほどしてから、制服姿のタクマが、男子が更衣室代わりにしている体育用具室に、慌てた様子で駆け込んでいった。 しかしそれもいつものことなので、怒ったり、注目している部員は誰もいない。 だから、ユイが何気なく体育用具室に入ろうとしても、誰もそれをとめる者はいなかったのだ。
「え!? うわっ!」
いきなりドアが開いたので、タクマは驚いて声を上げた。 すでに上半身は裸になっており、これからズボンを脱ぐところだったらしい。
「あ、ゴメン。今、来たの? ちょっと探し物があって…」
とぼけたふりをして体育用具室に入り、ドアを閉めた。 タクマの動きが止まっても、気にする様子もない。奥の方に積み重ねられている陸上部の備品の中から、何かを探すようなふりをしていた。
「あ、あの…先輩…?」
「んー? 早く着替えた方がいいよー。先生、今日、機嫌悪かったから。えーっと…どこにやったかな…」
一応、タクマの方には背を向けてやるから、それで着替えろということらしかった。 タクマは憧れている女子の先輩の前で、さすがに恥ずかしかったが、仕方なく着替えを続けることにした。 ここの陸上部の男子のユニフォームはショートパンツタイプで、その下にインナーを履く男子がほとんどだ。 インナーといっても、ほとんどビキニパンツのようなもので、練習中にブラブラと揺れないように、ピッチリと押さえつけるタイプのものだった。 ベルトを外す音が、カチャカチャと聞こえると、ユイは肩越しにそっと盗み見た。
「あれー? どこにやったんだろう? ないなー」
タクマに着替える余裕を与えるように、探し物が見つからないふりをしていた。 タクマは一応、ユイにお尻を向けた状態で、トランクスを脱ぎ、素早くインナーを履いた。女の子のすぐ近くで着替えるというのは、なかなかのスリルだった。 しかし、インナーを履いたタクマがホッとして、ショートパンツに手を伸ばした瞬間。 グッっと、その股間の膨らみを、後ろから掴まれてしまった。
「はわっ!!」
タクマの口から、思わぬ声が出てしまう。 気がつくと、自分のすぐ背後にユイが立っていた。
「あ…せ、先輩…?」
「しーっ! 静かにして。外に聞こえちゃう」
耳元で囁いた。 タクマは何が起こっているのか、ちょっと理解できなかったが、とにかくユイの右手が、自分の股間の急所を掴んで離さないので、言うとおりにするしかなかった。
「ちょっとじっとしててね。すぐ終わるから…」
以前のユイには、考えられないほどの積極性だった。 タクマも、大人しく清楚な雰囲気のユイに憧れていただけに、彼女のこの行動は意外中の意外だった。 ユイ自身、そんなことは百も承知だったが、今、手の中におさめたタクマの柔らかな膨らみの感触は、彼女の理性を吹き飛ばすには十分すぎるほど蠱惑的なものだった。
「三石君…驚いちゃったかな…? 私ね、ずっとこうしてみたかったの。男の子のココを、握ってみたかったんだ…」
ユイの手は、タクマの睾丸を転がすように、手の中で弄んでいる。 そこにはまだ、痛みはなく、タクマも初めて経験する未知の快感があった。 さらに、ユイが後ろから抱きしめるようにして密着すると、その胸の膨らみが、背中で押しつぶされた。 タクマは戸惑っていたが、それよりも遥かに強烈な快感に身を任せることにした。
「気持ちいいの…? そう…。じゃあ、これはどうかな?」
手の中でタマを転がすたびに、タクマが身をよじるのを、ユイは嬉しそうに見ていた。 そして突然、その手にギュッと力を込めたのである。
「うっ! く…!」
いきなり首を絞められたかのように、タクマが息を詰まらせた。 ユイがその手に込めた力は、まだほんの肩を揉む程度のものだったが、今まで快感の最中にいたタクマにとっては、目を見開いてしまうほどの衝撃だった。
(ああ…もう…。コリコリして、気持ちいい…。このタマ、まん丸じゃないんだ…。ちょっと楕円形…? 小っちゃい卵みたい…)
すでに金蹴りもセックスも経験していたユイは、冷静に、余裕を持ってタクマの二つの睾丸の形や構造を観察することができた。 ユイの手が揉むようにタマを握るたび、タクマはしゃっくりのように呼吸を詰まらせた。
「うっ! あっ! はあっ!」
(まだちょっとしか力入れてないのに…もう痛いんだ…。かわいそう…)
そう思いながらも、ユイの口はほほ笑んでいた。 実際、タクマの下腹部には、じわじわと重たい痛みが溜まってきていた。 先輩のすることとはいえ、もうこれ以上は耐えられそうもない。タクマはそう思ったが、かといって今の状況から逃れるのは、ちょっと不可能だった。 ユイは体を密着させ、後ろから手をまわしてタクマの股間を掴んでいる。 股間を掴まれた場合、腰を引いて守るのが男の習性というものだったが、この状態では腰を引けば引くほど、ユイにとって掴みやすくなってしまう。 要するに、タクマがあとどれだけ急所の痛みに苦しむかは、完全にユイの気分次第なのだった。
「ああっ! 先輩っ…!!」
「まだまだ。もうちょっと頑張って」
ユイの手が、二つのタマを袋の中で擦り合わせるように動き始めた。 かねてから試したかったことを、この際、色々とやってみるつもりだった。
「ふわあぁっ!」
睾丸は圧迫され、かつてないほどの痛みが彼を襲った。 しかしユイの手はそんなことは意にも介さず、クルミを擦り合わせるように、ゴリゴリと二つのタマを締めつけるのである。
(これは…けっこう痛いみたいだな…。タマとタマが擦れて、二倍痛いって感じかな? じゃあ、こういうのは…)
細い指が、しなやかに動いた。 金玉袋の根元を押さえつつ、親指と人差し指で、タマの一つをつまむ。 そしてそれを、指で弾くようにして押し出したのだ。
「ぎゃあっ! うわっ!」
ユイにとっては、小さなゴムボールを弄んでいるような感覚だったが、タクマの痛みは尋常ではない。ユイが指でタマを押し出すたび、体を大きく痙攣させた。
(あ、これもけっこう…。えい! えい! 面白い…)
タクマの背中に、大粒の汗が噴き出しはじめた。 その両脚は内股になって、細かく震えており、目の前の棚にしがみつきながら、立っているのがやっとという状態だった。
「あれ? 疲れてきた? よいしょ」
腰を落としかけたタクマの様子を見て、ユイは股間を持ちかえることにした。 両手に一つずつタマを掴み、上に引っ張り上げようとする。
「はあっん!!」
睾丸が、袋ごとちぎれるかと思った。 すでにタクマの脚にはわずかな力しか残されていなかったが、それでも腰を上げていなければ、脳天を突き抜けるような痛みと、去勢されるかもしれないという恐怖が全身を襲う。 タクマは歯を食いしばって、男に生まれた以上、受け入れなければならない痛みに耐えていた。
(あーあ、引っ張ってもダメなんだあ。何しても痛いんだから、こっちも注意しないと…)
うつむいて、苦しそうに目をつぶっているタクマの顔が、背後からもはっきりと見えた。
「三石君、痛い? 我慢できないの?」
タクマは必死に首を縦に振る。
「そんなに痛いの? フフフ…」
大して力を入れているつもりもないのに、タクマの痛がり方は、ユイにしてみれば異常なほどに思えた。 今、こうしている間にも、ユイの手から逃れようとしているのか、細かく腰を揺らしたり、くねらせたりしている。 しかしそれは無駄な努力で、ユイがちょっと指先に力をこめれば、たちまちタクマの体はビクッと痙攣して、それ以上動けなくなってしまうのだ。
「じゃあ、そろそろ離してあげてもいいけど…。条件があるわ。一つ目は、このことを誰にも話したりしないこと。先生にも、男子の先輩たちにもね。約束できる?」
キュッと指先で睾丸をつまむようにすると、タクマの頭が跳ねあがって、内股のまま爪先立ちになってしまった。 約束できなければ、このまま潰されてしまうと、タクマは本能的に悟っていた。
「し、します! 約束します!」
「よし…。じゃあ、二つ目の条件は、今、三石君が感じている痛みを、私に説明してみて。私がそれを理解できたら、離してあげる」
それは意外な言葉だった。 今、タクマが感じている痛みは、極めて根源的で本能的なもので、男なら誰でも共感できる種類のものだった。男にとっては説明不要、というより、説明して思い浮かべたくもないものなのだ。 例えば小さな子供にだって、「金玉を握り潰す」といえば、例えようのない恐怖を感じさせることができるだろう。 それを、女であるユイに説明できるかどうか。痛みに支配されたタクマの頭では考えられず、うまく言葉が出なかった。
「どうしたの? もう痛くなくなっちゃったかな? じゃあ…」
ユイの手に再び力が込められそうだったので、タクマはとりあえず感じたままを叫んだ。
「あ…! その…痛いっていうか…苦しいって感じで…。お腹の中が…グルグル掻き回されるっていうか…気持ちが悪くなります…。うう…!」
「えー、そうなの? お腹が苦しいんだ? じゃあ、この…タマ…っていうのかな…? それは痛くないの?」
言いながら、無造作に力を込める。
「あうっ! あ…いや…タマも痛くて…! でも…だんだん、付け根の方から痛みがお腹に上がってくる感じで…。息が苦しくなります…」
「そうなの? 痛みが上がってくるんだ? 変なの。握ってるのはココなのにね」
タクマの説明を聞いても、ユイにはまったく実感が湧かなかった。 自分の体の中にあるどこを掴んでも、そんな風に痛みはしないだろう。
「あの…先輩…?」
もう限界だといわんばかりに、タクマは問いかけた。 しかしユイの手は、まだしっかりと彼の二つの睾丸を握りしめている。
「うーん…。なんかちょっと…どういう風に痛いのか、よく分からないんだけど。転んで捻挫したりするのとは、違う痛さなのかな?」
「ち、違います。全然…」
「ハードルに足をぶつけたときより痛い?」
「全然痛いです…!」
ユイはますます首をかしげた。
(ハードルもけっこう痛いけど、アレより痛いんだ…。なんか、よく分かんないけど…。まあ、いいか)
ユイはしまいに、深く考えるのをやめた。 結局のところ、股間に男性器を持たない彼女にとっては、そこがどのように痛むものなのか、想像することしかできない。 それよりも、自分にはついていないものが、そんなに痛く苦しいものだと分かったことが、彼女の優越感を満足させたのだった。
「フフフ…。男の子って、面白いね。こんなに敏感で繊細なものを、いっつもブラブラさせてるんだから…」
ユイにそう言われると、男の体の不合理さを、男であるタクマ自身、改めて実感する思いだった。 女の子の握力で握られただけで、まったく抵抗できなくなるなんて、なんて不便な体なんだろう。その思いを、今、ユイとタクマはまったく逆の立場で共感しているのである。
「三石君は、私のこと…好きでしょう?」
それは痛みの中でも、十分タクマの脳を覚醒させる言葉だった。 その分かり易すぎる反応を見て、ユイはちょっと笑ってしまう。
「いつも、私のこと見てたでしょう? 私が練習してるところ。エッチな目で」
陸上部の女子のユニフォームは、水着かと思う程に面積の小さいタイプのものだった。 思春期のタクマが、ユイのそれに目を奪われていたとしても、何ら不思議はないだろう。
(あ…これって…)
ユイの手に、タクマの肉棒がムクムクと大きくなっていくのが伝わってきた。 タクマ自身もまだ気づいていないようだったが、どうやらユニフォーム姿のユイのことを思い出して、興奮してきてしまったようだった。
(もう…男の子って、ホント…)
以前のユイなら、勃起する男に対して嫌悪感を感じていたかもしれないが、すでにセックスを経験し、男の最大の弱点を丹念に調べ上げていた彼女は、むしろそんな男の習性に、微笑ましいものを感じてしまった。
(じゃあ、離してあげるか。えい)
最後に区切りをつけるつもりで、ギュッと睾丸を握りしめ、離してやった。 その瞬間、タクマはぎゃっと声を上げて、その場に崩れ落ちてしまう。
「あ、ゴメンね。痛かった?」
タクマはもはやうなずくこともできずに、体育倉庫の床に正座するような姿勢でうずくまっている。 白いインナーサポーターの尻の間から、ぷっくりとした膨らみが覗いていた。 ユイは、自分がたった今まで握りしめていたその膨らみを、今度は撫でて、憐れんでやりたいような衝動に駆られたが、おそらくそれもタクマは痛がるだろうと思い、思いとどまった。
「三石君…? まだ痛いの?」
タクマは食いしばった歯の間から、かろうじて呼吸をしているようだった。 男の痛みを知らないユイの目から見ても、この後、部活動の練習ができそうには思えなかった。
「ゴメンね。先生には、三石君が気分が悪くて、帰ったって言っておくから。見つからないように帰ってね。じゃあ、またね…?」
少し名残惜しそうな様子で、ユイは体育用具室を出て行った。 最後に彼女に発した言葉の意味を考えると、タクマは痛みの中でもさらなる恐怖を感じ、背筋をビクッと震わせるのだった。
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