女性の社会進出が本格化し始めて数十年。世間ではようやく男女の雇用が均等化され、各国の政府にも、男性と同数かそれ以上の数の女性議員が存在するようになった。 ようやく完全に、社会における男女の性の差がなくなったのである。 しかし一方で問題になっているのは、増え続ける性犯罪だった。 社会進出に成功した女性たちは、もはや男性の助けを借りることもなくなり、恋愛や結婚に極めて消極的になっていった。 また女性議員たちの主張により、性風俗の取り締まりが厳格化されると、世の中の男たちは性欲を持て余すようになってしまったのである。 結果、性犯罪の件数は以前の何倍にも増え、大量の性犯罪者を刑務所は収容しきれなくなってしまった。 そこで新たに造られたのが、性犯罪者のための特別刑務所だった。 性犯罪を犯した男たちは、すべてここに収容され、その程度によって、更生や社会復帰のためのプログラムに従うことを余儀なくされるのだ。
「整列ッ!」
刑務官の怒号のような声が響き渡ると、四方を壁に囲まれた体育館のような広いフロアに、百人以上の男たちが整然と並んだ。 咳一つたてる様子の無い囚人たちの様子を、刑務官は正面の壇上からじっと見つめている。 その様子は、通常の刑務所と何ら変わることのない、厳粛かつ緊張に満ちたものだった。 ただ、この性犯罪者特別刑務所、通称PSCが普通の刑務所と違う点は、まず一つに、刑務官が全員女性であることだった。
「そこの貴様! 列からはみ出している! 貴様の囚人番号は!」
「はい! 1096番です!」
「1096! 半歩下がれ!」
フロアに十数人いる刑務官のすべてが女性であり、しかも彼女たちの平均年齢は20代後半だった。中には大学を卒業してすぐ、ここに勤め始めた者もいる。 男女の雇用機会が完全に均等化された時代では、職場での性別など問題になることはなかったが、それでもこの光景は異様だった。 男の刑務官では務まらない理由が、この特別刑務所にはあるのだ。
「そこ! 1020番! ゴーグルがずれている。かけなおせ!」
「はい!」
刑務官が指示すると、囚人の男は顔に付けた大きなゴーグルをかけなおした。 スカイダイビングのときに着けるようなそのゴーグルは、この施設の囚人たちの全員が就寝時以外、常に装着することを義務づけられているもので、適当な理由なく外すと、厳しく罰せられる。 一見して普通のゴーグルのようだが、その中には様々なテクノロジーが詰め込まれているのだ。
「全員、休め!」
一通り整列が完了したとみると、正面壇上にいる刑務官が号令した。彼女は看守長という階級で、刑務所内における実務のほとんどを指導する立場だった。
「今から上映会を始めるが、今日は特別に最新作を仕入れてきてやった。社会のゴミである貴様らには、もったいない話だ! 上映を許可してくださった所長に感謝しろ、クズども!」
看守長の言葉に、囚人たちは一斉に「はい、ありがとうございます」と言って頭を下げた。 看守長の言葉遣いは、およそ公的機関の職員とは思えないものだったが、性犯罪特別法が制定された現在では、珍しいものではない。 その法律によれば、性犯罪者に対しては、あらゆる女性が一定の罵倒や侮辱行為を行うことが認められているのだ。 それは社会進出した女性を守るための権利で、刑務官という職責よりも上に来るものだった。
「では、上映開始!」
看守長が指示すると、室内が暗闇に包まれた。 そして囚人たちの正面にある大型スクリーンに、プロジェクターからの光が投影され始める。 そこに映っているのは、スーツ姿の若い女性だった。
「あ…いや…! やめて…!」
画面の外から伸びた手が、女性を追い詰め、その衣服を乱暴にむしりとっていく。場所はどこかのオフィスのようで、どうやらそれは、世間でよく見られる、レイプ物のアダルトビデオのようだった。
「あ…! ああ…そんな…! やめてください!」
あっという間に下着姿にされてしまった女性は、もちろんAV女優なのだろう。 涙声で抵抗する中にも、色っぽさが感じられた。
「……」
異様なのは、これを囚人たちは直立不動のまま、声一つ上げずに見ていて、その様子を女性の看守たちが子細に観察していることだった。 そこには普通、アダルトビデオを鑑賞するときのようないやらしさや興奮した雰囲気などはなく、囚人たちは極度に緊張した様子で、刑務官たちも彼らに厳しい視線を送り続けていた。
「…おい。2045!」
ひときわ厳しい表情で囚人たちを観察していた看守長のマヤが、最前列の囚人の番号を呼んだ。
「はい!」
呼ばれたのは、20代くらいの若い囚人だった。 彼が着用しているゴーグルの前面が、赤く点滅している。
「貴様は、盛りのついた犬か? 上映が始まってまだ10分も経っていないのに、なぜそんなに興奮している?」
「はい! す…すいません!」
「貴様は、入所したばかりだったな? 上映会は初めてか。貴様の罪はなんだ? 2045番」
「はい! その…強姦罪です」
「ほう。それでは、今日のビデオは、貴様の趣味とピッタリ合うわけだな。面白いだろう。え?」
マヤは、囚人の顔に吐息がかかるほどに接近していた。 刑務官たちの制服は、基本的には普通のそれと変わらないが、女性の自由が叫ばれて久しい現代、制服といえどもそれぞれの好みの着方で着るようになっている。 結果、この特別刑務所の女性刑務官たちの服装はみな、胸を大きく開いたり、極端なミニスカートになってしまっているのだった。 看守長のマヤは特に巨乳が自慢で、その胸は、上から数個のボタンを外してもなお、はちきれんばかりに膨らんでしまっている。 その大きな胸の谷間が、囚人の鼻先にまで迫っていた。
「興奮するだろう? 貴様は女性の悲鳴が大好物なんだからな。女を無理やり裸にするのが、大好きなはずだ。私たちのことも、そう思ってるんじゃないのか? この服をはぎ取ってみたいと、想像してるんじゃないのか? え? どうなんだ?」
アダルトビデオの映像と、マヤの耳元での囁きで、2045番の囚人の興奮は、どんどん高まっていった。
「い、いえ…。そんな…」
言葉とは裏腹に、大きく開かれたマヤの胸元を、チラリと見てしまう。 その瞬間、ゴーグルの点滅は真っ赤な点灯に変わり、ピーという警告音が鳴り始める。
「見るな!!」
ゴスッ!
マヤの膝が、若い囚人の股間を突き上げた。 囚人の腰が浮いてしまう程の、強烈な膝蹴りだった。
「あうっ!!」
若い囚人は一瞬、飛び上がるようにして体を硬直させると、そのまま床にベチャリと這いつくばってしまった。
「あっ…!! ああ…」
両手で股間をおさえる囚人の顔色は、真っ白になっていた。 痛みと呼ぶにはあまりに絶望的な衝撃が、下半身を中心に、全身に広がっていくようだった。 奥歯を震わせながら、その苦しみに耐えていると、マヤの足が、囚人の頭を上から踏みつけた。
「2045番! 貴様は、まだ自分の罪を反省する気がないようだな」
囚人の顔面は床に押し付けられ、鼻血が出ていたが、マヤはなおも彼の頭を踏みにじり続けた。
「これからここで、たっぷりと反省させてやる。覚悟するんだな!」
吐き捨てるように言うと、ようやく足をどけてやった。 股間を蹴られた囚人は、そのままピクリとも動くことができなかった。 その間も、アダルトビデオの上映は続けられている。 すでに女優は裸にされていて、抵抗しつつも体のあちこちを触られ、感じているような声をあげていた。
「ああ…ん…。いや…やめて…!」
囚人たちは、相変わらず直立不動のまま、スクリーンを凝視していた。中には目をそらしたり、目を閉じようとする者もいたが、囚人たちがつけているゴーグルには、視線監視機能がついており、着用者がどこを見ているのか、正確に分かるようになっているのだった。
「そこ! 目をそらすな!」
上映会の間に目をそらしたり閉じたりすれば、すぐにゴーグルが点滅するようになっている。刑務官たちはそれを見て、囚人たちを注意しているのだ。 そしてさらに。
ピー、ピー
ある囚人のゴーグルが、先程の囚人と同じように赤く点灯し、警告音が鳴り始めた。 それは、ゴーグルをつけている囚人が、性的興奮を感じているというサインだったのだ。
「あ…いや…これは…!」
反応した囚人は、必死に警報を止めようとするが、すでに刑務官が目の前に来ていた。
「1321! 足を開け!」
そう言うのとほとんど同時に、彼女は持っていた警棒を、囚人の股間めがけて下から振り上げた。
グシャッ!
と、囚人の急所がひしゃげる感触が、警棒を通して刑務官の手に伝わった。 この警棒は、刑務官の職務遂行のため、見た目では分からないさまざまな機能がついているものだったが、最もよく使われるのが、この股間攻撃だった。
「ぐえぇっ!!」
股間を叩き上げられた囚人は、腹から絞り出すようなうめき声をあげて、男の最大の急所を両手でおさえた。 その場にしゃがみ込んでしまった囚人を、刑務官は無表情に見下ろしている。
「1321番! 3分以内に起立して、視聴を続けろ! 分かったな!」
「は、はい…! うぅ…」
苦しむ囚人に背を向けて、刑務官は去った。 その様子を、周りにいる囚人たちは、冷や汗を流しながら見ていた。もちろん、目だけはスクリーンを見つめたまま、横目でだが。 彼らが着けているゴーグルには、脳波を感知する機能がついており、着用者の性的興奮が一定以上になると、赤く点灯し、警報が鳴るようになっているのだ。 刑務官たちはゴーグルが点灯すれば、速やかにその囚人に身体的な罰を与えることになっている。性的興奮が即、痛みにつながるということを体に覚えさせることで、男性の性欲を減退させようという狙いだった。 これはまさしくパブロフの犬のような条件反射の強制で、男性の人権侵害に当たるという意見もあったが、増え続ける性犯罪の撲滅という大義のため、性犯罪者の人権は軽視されてしまう世の中になってしまっていた。
「820番! 足を開け!」
「は、はい!」
スパァン!
と、女性刑務官のブーツが、囚人の股間を背後から打ち抜いた。 痛みを与える方法は、現場での刑務官の判断に委ねられていて、当初はスタンガンによる電気ショックや鞭による打撃も行われていたが、そのうち男性の急所への攻撃が、最も効果的であることが分かった。 睾丸を攻撃された男性は、一瞬でその性的興奮が鎮まるし、その痛みと苦しみは、女性たちには想像もできないほど大きなものだった。 最小限の力で、最大級の肉体的・精神的ショックを与えることができ、なおかつ後遺症の心配も低い。仮に後遺症が出たとしても、それは性犯罪者の撲滅という観点から考えて、むしろ喜ばしいものだったので、刑務官たちは、何の遠慮もなく囚人たちの股間を攻撃することができるのだった。
「うぐ…ぐぐ…!」
刑務官に股間を蹴られた囚人は、その場にうずくまって、呻いてしまった。
「820番! 貴様は今日、三回目のレッド・アラートだ。あと一回、レッドになれば、特別刑務所法第7条3項に基づき、貴様の去勢を実行する権利が所長に発生する! 分かったか!」
「は、はい…!」
うずくまる囚人に、女性刑務官は冷たく言い放った。 それは脅しでも何でもなく、この特別刑務所では実際に囚人の去勢が実行されることも珍しくなかった。 不必要な性的興奮が、男性機能の喪失につながるという恐怖感を植え付けることが、この性犯罪者特別刑務所のやり方で、そうでもしなければ、彼らのような性犯罪者を社会復帰させることはできないと考えられているのだった。
「…1055番。貴様、今日は大人しいじゃないか。どうした? レイプ物は、貴様の好みじゃなかったか?」
看守長のマヤが、いまだにゴーグルの点灯していない囚人の一人に目をつけた。
「はい! …いいえ! 私は、性欲をコントロールすることを心がけていますので…!」
囚人番号1055番の囚人は、緊張した面持ちでそう答えた。 この上映会の目的は、まさしく彼が言った通り、性犯罪者である囚人たちが性欲のコントロールを身につけることだった。 プライベートな時間ならともかく、公共の場においては、決して性的興奮を催さないこと。アダルトビデオを視聴しても、眉一つ動かさないような男を作り上げることが、この特別刑務所の目的であり、そのための訓練だったのだ。
「ほう。それは感心なことだ。貴様もようやく、真っ当な人間に生まれ変わろうという気になったようだな」
「はい! ありがとうございます!」
性的欲求が減退したと確認されなければ、彼らがこの刑務所から出ることはない。囚人たちの刑期の長さは、刑務官の判断によるところが非常に大きかった。
「1055番、ズボンを脱げ」
「は、はい!」
刑務官の命令は絶対で、いかなるときでも速やかに従わなければならない。 囚人は素早くズボンを脱いだ。 囚人たちの下着は、かつてゴーグルが発明される前、男性器の勃起を視認していた時代の名残で、極端に面積の小さなブリーフに統一されていた。 1055番の囚人のペニスは、確かに興奮した状態ではないようだった。
「ふむ。確かに性欲をコントロールできているようだな。感心だ、1055番」
「はい! ありがとうございます!」
看守長のマヤの警棒が、囚人の股間に伸びた。 警棒の先端で、もっこりと膨らんでいる部分をつつくように刺激する。
「1055番。褒美に、閲覧できる指定図書の種類を増やしてやってもいいぞ。貴様は、若いアイドルが好きなんだったな。写真集なんかはどうだ? つい最近の話だが、アイドルの澤野なんとかが脱いだとかで、世間では話題になっているようだったぞ」
「は、はい! …さ、澤野…みな子…でしょうか?」
「そうそう。そんな名前だったな。その澤野みな子が、ヌード解禁だとか何とかで、ずいぶんと週刊誌をにぎわせているそうだ。貴様も見たいんじゃないか? え?」
1055番の囚人は、思わず答えにつまってしまった。 囚人たちの好みや性癖を細かく把握しているのは、看守長であるマヤの自慢の一つだった。 もちろん、彼女たち刑務官が持っている携帯端末から、囚人たちの罪名や逮捕された時の状況を詳しく知ることはいつでも可能だったが、マヤのように暗記していなければ、これほどスラスラと出てくるものではないだろう。 マヤが刺激し続けている囚人の股間が、わずかに膨らみ始めていた。
「世の中の流れは早いな。貴様がここに収監されてから、まだ1年半だというのに、清純派のアイドルが、もうヌード解禁だ。この調子だと、その澤野なんとかがAVに出る日も近いんじゃないか? 貴様が出所するころには、世間に出回っているだろう。楽しみだな。え?」
「は、はい…」
レイプ物のアダルトビデオで反応しなかった1055番の囚人の股間が、にわかに大きくなり始めた。 マヤの囁きに、想像してしまったのだろう。自分の好きなアイドルが、AVに出ているところを。世間の情報から閉ざされた環境にいる囚人たちにとっては、最新の情報は、何よりも価値のあるものだった。
「ほう。興奮してきたようだな、1055番。どうした? 性欲のコントロールができなくなってきたか?」
「あ…い、いいえ…! そんなことは…」
いったん興奮のスイッチが入ってしまうと、頭では止めようと思っていても、体が反応してくれなくなる。 特にここに収監されている囚人たちは、日常の射精はまったく認められておらず、やむなく夢精してしまった場合でも、反省文を書かされ、厳しく指導されるという始末だった。 こんな状態で性欲をコントロールしろという方が、男に言わせれば無理だったのだが、更生プログラムを組んでいる医師たちの見解では、「十分可能」ということらしかった。もちろんその医師たちの中に、半数以上の女性が含まれていたことは間違いないのだが。
「まあ、そう焦るな。焦るほど、性欲のコントロールが難しくなると聞くぞ。リラックスしろ。リラックスだ」
必死に勃起を鎮めようとする囚人のペニスを、マヤの警棒が柔らかなタッチで撫で続けていた。 その触れるか触れないかという刺激は、もちろん男にとっては快感以外の何物でもなく、囚人のペニスは、やがて小さなビキニブリーフを突き破らんばかりに反り立ってしまうのだった。
「ほう。警報が鳴っているな? 1055番」
囚人のゴーグルが真っ赤に点灯し、警告音が鳴っていた。 マヤはニヤリと笑って、今まで囚人の股間を愛撫していた警棒を離すと、クルクルと回しながら、遠心力をたっぷりとつけて、振り上げた。
「ほげぇっ!!」
刑務官の警棒は、堅さとしなりを両立させた最新の特殊合金でできており、思い切り打ちつければ、女性でも睾丸を潰すことは容易にできるはずだった。 しかしマヤをはじめとするここの刑務官はプロとして、睾丸を潰さず、最も効果的に囚人たちを苦しめる方法を心得ているのだ。 この1055番の囚人に対しても、意識が保てるギリギリの痛みになるように、マヤは手加減したつもりだった。
「ぐぐぐ…!」
両手で股間をおさえ、口から涎をながしながら、囚人はその場にうずくまってしまった。
「残念だな、1055番。写真集はお預けだ。貴様はもう少し、性欲のコントロールを学ぶ必要があるな」
自分には決して訪れることのない、男の苦しみに呻く囚人を見下ろしながら、マヤの口はわずかにゆがんでいた。 看守長である彼女がそうなのだから、ここにいる刑務官のほとんどが、男性に苦しみを与えることに喜びを感じる、サディストの気があった。 以前はこの特別刑務所にも男性の刑務官がいたのだが、やがてみんな転属を希望し、辞めていってしまった。 同じ男として、もたなかったのだろう。 当時、まだヒラの看守だったマヤが、囚人の股間に懲罰を加えるたびに、男性刑務官たちが痛そうに顔を歪めて見ていたのを、彼女は覚えている。 マヤは、この特別刑務所に来るまでは、自分が男性を苛めることに快感を覚えるなどとは思ってもみなかったが、今ではこれが自分の天職だと感じるようになっていた。
「よおし! 上映、やめ!」
スクリーン上で、AV女優のセックスが終わると、そこで上映は止められた。 フロアの照明が明るくなると、立っている囚人たちは、一様に安堵の表情を浮かべていた。 うずくまっているのは、不幸にも性欲を抑えきれなかった囚人たちである。今回は、全体のおよそ三分の一ほどが、犠牲になっていた。
「整列ッ!」
再びマヤが正面の壇上に上がり、声を発した。 このときに素早く立ち上がって、整列することができなければ、さらなる懲罰が待っているのである。 股間を痛めつけられた囚人たちは、必死の形相で立ち上がろうとしていた。
「本日の上映会は、これで終了する。言うまでもないことだが、この上映会の目的は、猿のように腰を振ることしか能のない貴様らに、理性というものを身につけさせることである! 今回、懲罰を受けたものはよく反省し、懲罰を受けなかった者も、それが持続できるようにしろ! このビデオのように、貴様ら性犯罪者の劣悪な遺伝子を受け入れてくれる女性など、社会には存在しないのだ! 貴様らのペニスは、小便をするためだけについている管だと思え! 貴様らのタマは、女性に痛めつけられるために、ついているものなんだ! 分かったか!」
「はい!」
囚人たちは一斉に返事をした。 やがて彼らは、係りの看守に率いられ、列になってフロアを出て行った。 その中にも、まだ前かがみになって股間をおさえている者や、ヒョコヒョコとガニ股になって歩いている囚人もいる。あまりにひどいようだと、容赦なく看守の怒声が飛んだ。
「1170番! 貴様、しっかりと歩け!」
「はい!」
警棒で思い切り背中を叩かれて、その囚人は背筋を伸ばした。それでも背中の痛みより、さきほど叩き上げられた股間の痛みの方がはるかに上だった。
「明日は、反省文を書かせる者が多くなりそうだな。…懲罰で済ませるかどうかは、それぞれの判断に任せる。そう伝えろ」
フロアから出て行く囚人たちを見ながら、マヤは部下の看守たちに言った。 上映会をした次の朝は、夢精をする囚人が多くなることは、この刑務所の常識だった。 あまりに数が多い場合、反省文を書かせることも間に合わないので、その場での懲罰に変更することもやむを得ないと、マヤは判断したのである。
「はい! 分かりました!」
刑務官の若い女性たちは、胸を張って敬礼した。 その姿は頼もしく、自信に満ち溢れており、いつ股間を蹴られるかと始終ビクビクしている囚人たちとは対照的だった。 男は女性よりも弱く、男の性欲は、女性に管理され、支配されるべきものだという感覚が、この特別刑務所にいれば、自然と身につくようになっていた。 自分たちの働きが、健全で安全な社会をつくるためになっているのだと、女性刑務官たちは信じて疑わなかった。
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