それから数ヶ月。ケイゴの成績はグングンと伸び、その分だけ二人の信頼関係は篤くなっていった。 しかしそれに伴って、ミサトの指導もどんどんと厳しさを増していった。 勉強に集中できなければ罰を与えるのはもちろん、テストで平均点を下回れば、その教科の数だけ罰を与える決まりになっているのだった。 ミサトが選んだ罰は、ケイゴが最も苦しくて、最も嫌がる方法。つまり、急所攻撃だった。
「ほら、しっかり立って。腰が引けてるわよ?」
「は、はい…」
実力テストの答案用紙を持って、椅子に座るミサト。 その前に立つのは、両足を大きく開き、両手を後ろで組んでいるケイゴだった。 ズボンを脱ぎ、灰色のボクサーパンツ一枚になったその股間には、すでにミサトのつま先が伸びている。
「今回の英語は良くできたみたいだったけど。この問題が解けないのは、どういうことかしら? いい? これよ。第二問、次の日本語を英語に直しなさい。『彼らは先週の金曜日からずっとここにいます』。わかるわよね?」
「はい…。They were here in last Friday…」
「違う! それは過去形でしょ。これは、ずっとここにいますだから。わかる?」
体に問いかけるように、ミサトのつま先がケイゴの金玉袋を揺らした。 ミサトにとっては無意識の動きだったが、ケイゴの神経はどうしてもそちらに集中してしまう。
「あっ…。は、はい。あの…その…」
「現在完了よ、現在完了。何回もやったでしょ? もう忘れたの? これは、あと一回プラスね」
「あ…それは…」
言いかけた言葉を、ミサトが目でおさえつけた。 ミサトの指導は日を追うごとに厳しくなってきていたが、特にこの急所攻撃の罰を与えるときは、人が変わったようにケイゴに対して高圧的な態度を見せるようになっていた。
「アナタがきちんとすれば、痛い思いしなくて済むのよ。先生も、ホントはこんなことやりたくないんだから。ほらほら。プニプニして柔らかいタマね」
椅子の上で足を組みながら、黒いストッキングのつま先でケイゴの睾丸を弄んだ。 やりたくないといいながらも、その声には喜びを押し殺すかのような艶があり、口元には絶えず微笑が浮かんでいた。 ケイゴは今にも急所を蹴り上げられそうな恐怖を感じながらも、スラリと伸びたミサトの長い脚に目を奪われ、そのつま先が与える快感に身をよじった。
「あらぁ? ケイゴ君。大きくなってきてるんじゃないの? 大事な大事なタマを蹴られてるのに。どういうこと?」
ミサトの言うとおり、ケイゴのボクサーパンツの前は、もう少しすれば棒状の形がしっかりと浮き出てしまいそうなほど、盛り上がってきている。 ケイゴは自分でもしまったと思ったが、ミサトのつま先が離れることはないし、意識すればするほど、かえってペニスは膨張してくるのだった。
「ホント、ケイゴ君はいやらしいわね。ちょっといじると、すぐに感じちゃって」
笑いをかみ殺しながら、ミサトは囁く。
「授業中にいやらしいことを考えた罰として、もう一回プラスね。これで四回か。今日はケイゴ君のタマも無事じゃすまなさそうね?」
「そ、そんな…」
憐れみを乞うような目で弁解しようとすると、ミサトのつま先が素早く動いた。 ピシッと、足首から先の力だけで、金玉を跳ね上げたのである。
「あうっ!」
それでもケイゴにとっては十分な衝撃で、思わず内股になって、股間を両手でおさえてしまう。 ジーンと鈍い痛みが、両の睾丸から発せられてきた。
「これで許してあげるわ。大きくした分はね」
背中を丸めるケイゴの姿を、ミサトは椅子に座ったまま、面白そうに見つめていた。 一体いつの間に、こんなSっ気を発揮し始めたのか。重苦しい男の痛みに苦しむ自分を笑いながら見ているミサトに、ケイゴは戦慄する思いだった。 しかしケイゴ自身、この状況を受け入れてしまっている自分に気がついていた。下着一枚になって急所を蹴られるという異常な罰など、その気になればいつでも逆らうことができる。それをしないということは、自分もまたこの状況をどこかで楽しんでいるのかもしれないと、ケイゴは薄々感じ始めていた。
「ほらほら。お勉強は続いているのよ。現在完了って何だったかしら?」
ミサトはさらに容赦なく、ケイゴの股間につま先を突っ込んだ。 こういうとき素早く背筋を伸ばさなければ、ミサトからさらに罰を受けてしまうことを、ケイゴは知っていた。
「あっ! は、はい…。現在完了は…haveと過去分詞です…あっ!」
痛みの残る睾丸は、敏感になっている。 ミサトのストッキングのつま先がケイゴの股間で擦れる度に、ケイゴは情けない喘ぎ声を上げてしまう。
「そうよ。覚えてるじゃない。じゃあ、この問題はどうするの?」
「はい…。They have been…here…かな?」
ミサトはうなずき、つま先でタマを転がしてやる。
「あ…あとは…金曜日からだから、since last Friday…ですか?」
「正解!」
ミサトの膝が折り曲げられ、しなやかに跳ね上げられた。 パチンと、ケイゴの股間の膨らみはミサトの足の甲に打ち抜かれ、先程とは比べ物にならない衝撃が走る。
「はぐっ!」
今度は立っている余裕などない。 両手で股間をおさえて、ケイゴはその場にうずくまってしまった。
「よくできました。次は間違えないようにね。しっかりと体で覚えるのよ?」
うずくまるケイゴを、ミサトは腕組みしながら見下ろしていた。
「くくく…」
全身の筋肉が硬直し、冷たい汗が吹き出してきた。 ミサトの罰を受け始める前、ケイゴは股間を蹴られた経験などなかったが、こんなに痛いものだとは思ってもみなかった。 両手でかばようにおさえる二つの玉に変化はなかったが、そこからは激しい鈍痛が休むことなく発せられ続けている。 男の生存本能が、とにかく体を丸めて身を守れと言っている。そんなどうしようもない痛みに思えた。
「ほら、今日はあと二回も残ってるのよ。しっかりしなさい。男の子でしょ?」
ミサトは心底楽しそうだった。 普段の彼女は秀才らしく上品で、それでいて開放的な明るさも兼ね備えた申し分ない美女だった。しかしケイゴの股間を蹴るときだけは、ミサトは豹変する。 股間を蹴られて、男にしか分からない痛みに苦しんでいるケイゴを見るとき、ミサトの口元は妖しく曲がり、その瞳には恍惚とした光が差しているようにも見えた。 あるいはそれは、ミサトが心の奥底に秘めていた本性だったのかもしれない。 それは屈折した愛情の表現で、子供だとばかり思っていたケイゴの体に、意外なほど「男」が芽生えていることを知り、それを打ちのめしたくなったのかもしれなかった。
「ほら。早く立ちなさい。次は理科の分よ。平均より10点以上も下なんだから、今よりもキツくしないとね」
ケイゴにはミサトのこの変貌ぶりの原因は分からなかった。男女の性の機微を知るには、彼はまだ幼すぎたのである。 しかし原因はともかく、ミサトが母親やその他の人間に対しては決して見せない表情を自分にだけ見せているという事実は、幼いケイゴの心にも強烈に響いた。 そして男の急所であり最も大切な象徴である金玉を、ミサトのような美女に弄ばれているという感覚は、ケイゴの心に潜んでいたマゾヒスティックな欲望を呼び覚ましてしまったのだった。
「は、はい…。すいません…」
歯を食いしばってなんとか立ち上がり、また股間を広げた。 サッカーの部活動で鍛えた強靭な下半身がケイゴの自慢だったが、いまやその筋肉質な太ももは、痙攣するように震えていた。
「ふうん…。35点ねぇ…。ケイゴ君が悪い点数を取ると、私もショックだわ。私の教え方が悪かったのかしら?」
「い、いや…。そんなこと…ないです」
「ホントに? じゃあ、どうしてこんな点数取っちゃったの? 自分で原因は分かってる?」
ミサトは椅子から立ち上がり、ケイゴに迫った。 股間の痛みで自然と前かがみになっていたケイゴの鼻先にまで、ミサトの顔が近づいた。
「反省してるの? ケイゴ君」
大きな瞳がまばたきするたびに、長いまつ毛が音を立てるようだった。 そのまっすぐな視線にケイゴが目をそらすと、大きな胸の膨らみがブラウスシャツをはち切らんばかりに押し上げているのが見えてしまった。
「は、はい…反省してます…」
シャツのボタンの隙間から、黒いブラジャーが見えてしまいそうだった。 思えば、ミサトは最近わざとサイズが小さめのシャツを着ているような気がする。 シャンプーの香りに鼻先をくすぐられながらそんなことを思っていると、突然、 下半身に重たい衝撃を感じた。
ズンッと、ミサトの堅い膝がケイゴの股間をえぐったのである。
「あっ…!! かっ…!!」
ケイゴは常に、階下にいる母親に悟られないよう、股間を蹴られても叫び声を押し殺してきた。 ミサトの急所蹴りは、時には唸りたくなるほどの痛みをケイゴに与えたが、そういう時でも両手を口に当てて、必死に我慢していたのである。 しかし今回の膝蹴りは、痛みの次元が違った。 叫び声を上げようにも、ケイゴの呼吸器官は一瞬にしてその機能を停止し、息を吸うことさえできなくなった。
「またいやらしいこと考えてたでしょ? 反省しなさい」
まるで糸が切れた人形のように、ケイゴは膝から前のめりに崩れ落ちてしまった。額を床に擦りつけ、両手で股間をおさえつけるが、もはや痛み以外の感覚は、ケイゴの体にはない。 全身を覆い尽くす、鉛のように重たい鈍痛。 尻を高く突き上げて土下座したようなその姿に、ミサトは思わず失笑してしまったが、その笑い声もケイゴの耳にはまるで入らなかった。
「フフフ…。何回痛い思いしても、やっぱりおちんちんが大きくなるのね? いやらしいわ、ケイゴ君は。変態なんだから」
そう言いながら、ミサトの顔は笑っていた。 ケイゴはあまりの痛みに股間をおさえることを諦め、目の前にあったミサトの足首にしがみついてしまった。 ストッキングの滑らかな感触を通して、ミサトの体温がその手に伝わってくる。
「なあに? 先生の足が好きなの? この足で、いつもケイゴ君のタマを蹴ってるのよ」
ミサトの足は柔らかく、ふくらはぎからつま先に向かって理想的な曲線を描いていた。この足がいつも自分に地獄のような苦しみを与えているとは容易に信じがたく、反面、これだけ美しい足だからこそ、容赦のない罰を男に与えることが許されるような気がした。
「ほら。まだあと一回、残ってるのよ。お勉強を続けましょう」
「あっ…は…」
ケイゴが掴んでいる足を持ち上げると、ケイゴの体は床で仰向けになった。 ようやく呼吸は回復し始めたが、まだ下半身には重苦しい痛みが残っている。 さらに痛みのピークが過ぎたころから、ケイゴの体には強烈な虚脱感が広がり始めていた。 床に着いた背中から、魂が流れ出ていくような疲労と虚無感で、とてもミサトの授業を受け続ける余裕などなく、しばらくは立ち上がることさえできそうになかった。
「せ、先生…もう…」
ミサトを見上げながら喘ぐように言葉を発する。 しかし憐れみを乞うようなその目が、逆にミサトの心に火をつけた。
「なに? 立てないの? だらしないわねえ」
ミサトはケイゴの足元に回り込むと、その股間を足で踏みつけた。
「はうっ!」
途端に、ケイゴの体は電撃を流されたような反応をする。 ミサトはかまわず、右足でケイゴの股間にある二つの玉をグリグリと踏みしめ始めた。
「ここはこんなに元気になってるくせに。立ち上がることもできないなんて。そんな言い訳は通用しないわよ」
「あっ! せ、先生…やめて…」
ミサトの言うとおり、ケイゴのペニスは睾丸の激しい痛みにも関わらず、完全に勃起してしまっていた。 ケイゴ本人にもその理由は分からなかったが、それを発見したミサトは、嬉しそうに足の裏全体でペニスと睾丸を踏みつけるのだった。
「ケイゴ君は、歴史が苦手だもんね。でも、このままじゃ駄目よ。苦手なものは克服していかないと。鎌倉幕府ができたのは、何年だったかしら?」
股間を踏みつけながら、ミサトが尋ねる。
「あ…せ、1192ね…んん…!」
「なに? よく聞こえないわよ。鎌倉幕府を開いた人物は誰?」
「み、源…よりと…おぉ…!」
「何言ってるの、ケイゴ君?」
ケイゴが答えようとするたび、ミサトの足が動いて、ケイゴはその刺激に身を震わせた。 ミサトはそれがよほど面白かったようで、次々と問題を出しては、ケイゴの反応を楽しんでいた。
「ハァ…ハァ…。先生…もう許してください…」
何問目かの問題が終わった後、ケイゴは息を荒げながらつぶやいた。 ミサトの方もだいぶ興奮していたようで、その額にはうっすらと汗が滲んでいる。
「フフ…。もうギブアップなの? しょうがないわね。じゃあ、次が最後の問題よ。これに正解したら、社会の分は許してあげるわ。でももし、間違えたら…」
言葉の代わりに、ミサトはグッと足を踏み込んだ。 ケイゴの睾丸が、その足の裏に柔らかい弾力を伝える。 嬉しそうに輝くミサトの目を見つめながら、ケイゴは小さくうなずいた。
「いい? 1917年に起こった世界最初の社会主義革命の指導者の名前は?」
ケイゴの顔が強張った。 ミサトはそんなケイゴの反応も予測していたかのように、微笑している。
「わ、わかりません…」
ケイゴが首を横に振るのと、ミサトが足を振り上げるのが、ほぼ同時だった。 あおむけになっていたケイゴの股間に、ミサトのしなやかな蹴りが、鞭のように叩きつけられた。
バシン、という音は、ケイゴの耳には聞こえなかった。 それよりも早く、電撃に打たれたような衝撃が脳天まで突き抜けて、それによってケイゴの意識は朦朧としたものになってしまったのである。
「あ…は…」
半分白目をむいた状態で痙攣し、口のはしから涎がこぼれるのも気がつかないようだった。
「……あ、ヤダ…」
ミサトはそんなケイゴを見下ろして、しばらくは悦に入ったように荒い息をしていたが、やがて状況に気がついて、慌てた。
「だ、大丈夫、ケイゴ君? 気絶してるの? ちょっとやりすぎちゃったかしら…」
もちろん、ケイゴが受けた痛みはちょっとという程のものではなく、意識が飛んでしまったことが幸運という他ないほどの衝撃だった。
「え…と…タマは…。あ、大丈夫ね。潰れてないみたい。良かった。ちょっと心配しちゃったわ」
ミサトは無造作にケイゴの股間に手を伸ばし、その睾丸の無事を確認した。 ミサトのような女性にとっては、男の急所は潰れてさえいなければ大丈夫、という認識しかないのかもしれない。
「うーん…まあ、今日はこのくらいで終わりにしましょうか。時間もちょうどいいし。ケイゴ君、聞こえる? お母さんには、疲れて寝ちゃったって言っておくからね。いい?」
ポッカリと口を開けて、うつろな目をしているケイゴの耳元に話しかけると、わずかにうなずいたようだった。 ミサトはそれに満足したようで、一つため息をつくと、服装を整えて、鞄を手に取った。 ふと、机の上に置かれた社会の答案を見ると、そこには先程ミサトが出したのと同じ問題が出ていた。
「1917年の社会主義革命の指導者は…レーニン。ちゃんと正解してるじゃない。フフフ…。ケイゴ君ったら」
放心状態のケイゴを見下ろして、ミサトは笑った。 ケイゴの家庭教師は、当分は終わりそうになかった。
終わり。
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