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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。


「や、やめろよ…何すんだよ…」

すでに戦意を失っているカツヤにも、これから何が起こるのか想像できたが、それは決して現実になってほしくなかった。
一方のアズサは、この様子をどきどきしながら眺めている。

「あなた、男にとって最も苦しいことは、何だか分かるか?」

総代は突然、アズサに尋ねた。

「あ、はい…。その…なんでしょう?」

覆面の下でよく分からないが、アズサには彼女が少し微笑んでいるような気がした。

「それはここ、股間を責められることです。正確に言えば、二つの睾丸。我々月下会は、これを金星と呼んでいる」

「き、きんぼし…ですか…?」

あまりにも大胆な総代の物言いに、アズサは面食らった。
カツヤの股間に目を向けると、盛り上がった部分の下の方に、柔らかそうな球体が二つ、ブリーフを押し上げているのが分かる。

「金星は男の象徴であると同時に、男の欲望の根源でもある。悪事を働く男は、金星を痛めつければ、大人しくなる。覚えておきなさい」

「は、はい。わかりました」

アズサは大きくうなずいた。

「では、月下会の名において、制裁を始める!」

「お願いします!」

カツヤの足をおさえる女たちが、頭を下げた。

「や、やめろー!」

カツヤの叫びも空しく、総代の細く美しい脚が、カツヤの股間めがけて振りぬかれた。

パシィン!

と、先程を上回る強烈な炸裂音がした。
無防備にさらされたカツヤの二つの睾丸は、総代の脚と恥骨にはさまれ、驚くほど無残にその形を変形させた。

「はがっ!」

もはや、カツヤの痛みは言葉では言い表せない領域まで達していた。
呼吸が止まり、本人の意思とは無関係に、全身が痙攣を始める。
しかし、

パシィン!

と、寸分たがわぬ正確な蹴りが、再びカツヤの睾丸を襲う。
一瞬、カツヤの意識は遠のきそうになったが、さらに3発目、4発目と、総代の蹴りは止まらなかった。

「ほげっ! ぐえっ!」

叫びにもならない、ため息のような声がカツヤの口から洩れた。
その目は半分白目をむき、口の端からは細かい泡さえ出てきている。
しかし総代は、決して蹴りの威力を緩めることなく、黒装束の女たちも、痙攣するカツヤの足を離そうとはしなかった。
彼女たちは恐ろしいほど冷静に、眉ひとつ動かすことなく、カツヤが苦しむ様子を観察していた。

「すごい…」

アズサはアズサで、総代の蹴りの美しさや、女たちの毅然とした姿にほれぼれする思いだった。
要するに、この場にいる人間の中で、カツヤの苦しみと痛みを理解できたのは、いまだに動くこともできないで床に這いつくばっているユウジだけだったのである。
さっき攻撃された彼の股間の痛みは、すでにだいぶ引いていたのだが、女たちのあまりにも残酷な仕打ちに足がすくんで、動けなくなってしまっているのだった。

「よし。放してやりなさい」

十数発目の蹴りを打ち込んだ後、総代はようやく蹴るのをやめた。
女たちが足を放すと、カツヤは力なくうなだれてしまい、両手に結ばれたロープで全体重を支えるような体勢になってしまった。

「三浦カツヤ。お前は反省しているか?」

総代は息一つ荒げることなく、冷静な口調で尋ねた。

「…は…はひぃ…」

しかしカツヤの方は、すでに意識が朦朧として、声が言葉にならない状態だった。

「反省しているかと聞いている。反省していないのなら、さらに続けるが?」

すっと、黒装束の女たちがカツヤの足に再び手をかけた。
これに反応したカツヤは、涙と涎でぐちゃぐちゃになった顔を、必死で縦に振った。

「反省してる! してますから! 許して下さい。お願いします!」

総代はこれを聞いてうなずき、女たちは手を離した。

「見ましたか? 男は金星を痛めつけられると、途端に従順になる。単純なものでしょう」

総代は振り向いて、アズサに話しかけた。
アズサにとっても、これだけ激しく睾丸を責められる男を見たのは初めての経験だったので、興味深いものがあった。

「この学校は当初、女子校として作られました。創立者である綺堂院桜子先生は生前、男女共学になることに固く反対しておられた」

この話は、アズサも聞いたことがあった。
綺堂院桜子は、当時としては珍しい女権論者で、女性の権利向上のために高等教育の場を作り、それがこの学園の基礎になっているのだという。学園が男女共学になったのは、彼女の死後で、今から10年ほど前のことだった。

「清純なる女子の教育の場に、汚らわしい男などが入りこむべきではないと、桜子先生は考えておられた。男は女と一緒にいれば、必ず問題を起こすと。それはまったくもって正しかった!」

語りながら、総代はカツヤの股間に手を伸ばし、その睾丸を鷲掴みにした。
ぐえっ、と、カツヤの呼吸が止まる。

「男は性欲の塊。性欲を処理することがすべてで、その他のことはついでのようなものだ。その原因がこれだ!」

総代はカツヤの睾丸を捻りあげた。
カツヤは背筋を逸らして、悲鳴を上げる。

「この金星が、男のすべて。男の象徴であり、性欲の根源」

「か…あ…!」

カツヤの睾丸は、今にもちぎれそうなほどねじあげられていた。

「こんなものをぶら下げていて、不便だろう? これがあるから、お前達は性欲をおさえきれないんだろう? 私達女性は、男の性欲の多さとしつこさに、いつもうんざりしているんだ。いっそのこと、潰してみるか? そうすれば、女性に迷惑をかける男が一人減ることになる」

総代は囁くように、しかし冷酷な声で、カツヤに言い放った。
その雰囲気はとても冗談とは思えず、カツヤは去勢の恐怖に身をよじって震えた。

「は…や、やめて…」

「ふん!」

泣きながら首を横に振るカツヤの顔を見て、総代は手を離してやった。

「覚えておけ、三浦カツヤ。我々月下会は、いつも学園内に目を光らせている。今度お前が悪事を働けば、そのときは…」

今度こそ睾丸を潰すぞ、と言わんばかりの総代に、カツヤは必死で許しを乞うた。

「はい…。すいませんでした…。許して下さい…」

あまりにも圧倒的なその仕打ちに、カツヤは心底恐怖した。
逆に、屈強な男に見えたカツヤをまるで骨抜きにしてしまった総代たちの姿を、アズサはまるでヒーローを見る少年のような目で見ているのだった。



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