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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。

「おい、こいつらをぶちのめしたら、ボディガード代ももらうぜ。いいな?」

「え? は、はい。頼む!」

一方のユウジは、怯えきっていた。
カツヤとは対照的に、彼は典型的な運動音痴の肥満体形で、ケンカなどしたこともなかった。
ただ、悪事を隠そうとする卑劣さと、自分の身を守るためなら他人はどうでもいいという身勝手さは、多分に持っていた。

「…抵抗するな。制裁をする前に、痛めつけておとなしくさせなくてはならない」

大階段の上にいる女は、冷静だった。
そしてカツヤ達に迫る女たちも、眉ひとつ動かす様子はなかった。
遠目で見ていたアズサの目にも、拳を握りしめてリズムをとるカツヤの危険さが伝わるほどだったのだが、彼女たちにはそんなことは一切関係ないようだった。

「うるせえ!」

叫びながら、カツヤは女の方に踏み込んで、鋭いジャブを放った。
しかし黒装束の女は素早く動いて、これをなんなくかわした。

「! くそ!」

さらに連続してパンチを放つが、一発も当たることはなかった。高校ボクシングの大会に出場し、街中のケンカで腕を磨いたはずのカツヤにとって、これは初めての経験だった。
しかも黒装束の女は、カツヤが空振りするのに疲れたと見ると、すぐさまその懐に踏み込んで、いきなり目の部分を片手で引っ掻くようにして攻撃した。
ボクシングの実力があるカツヤも、完全な反則技であるこの攻撃の前には無力だった。

「うわっ!」

それは目を潰すようなものではなかったが、視界を奪うには十分で、カツヤは思わず顔面をおさえてしまう。
そのとき、女の脚が、カツヤの股間を鋭く蹴りあげた。

パシンッ!

乾いた音が、旧校舎の中に響いた。
同時にカツヤは「うっ!」と一声呻いて、そのまま顔面から床に倒れ込んでしまった。

「あぐぐ…」

黒装束の女の、見事すぎる一連の動きだった。
カツヤは何が起こったのかも分からずに、股間を両手でおさえて転げ回るハメになった。
外から眺めていたアズサは、意外すぎる展開に口をポカンと開けて、声もでなかったが、彼女たちこそ学園警察に違いないと確信していた。

「ひいっ!」

カツヤがいとも簡単にやられるのを見て、ユウジは悲鳴を上げた。
そして自分のすぐそばにも、もう一人の黒装束の女が迫っていることを思い出した。

「す、すいません! すいませんでした! 俺が悪いんじゃないんです! こいつが話を持ちかけてきて…。これは返しますから、許して下さい!」

必死に頭を下げて、紙袋を女に差し出す。
女は無言で、紙袋を受け取るかのように、手を伸ばした。
ユウジが安心しそうになった次の瞬間、

ボンッ!

と、股間に衝撃が走った。
黒装束の女が、紙袋で隠れた死角から、ユウジの股間を蹴り上げたのである。

「はうっ!」

状況は理解できなくても、股間に走る痛みは、すぐにユウジの脳天を突き抜けた。
そして両膝から力が抜け、持っていた紙袋を放り出し、校舎の床に這いつくばってしまった。
ユウジを蹴りあげた黒装束の女は、何事もなかったかのように足元に落ちた紙袋を拾い上げた。その中に手を入れると、女性ものの下着が数点、出てきた。

「やはり。有罪です」

それを聞いた大階段の上の女は、ひとつうなずいて、階段を降りてきた。

「自分の罪を認めないばかりか、抵抗するなど、言語道断だな」

厳しい口調の中にも、どこか美しい気品を感じさせるような声だった。
外から覗いていたアズサは、その声をどこかで聞いたような気がしていたのだが、目の前の衝撃的な展開に、頭が働かなくなってしまっていた。

「て、てめえ…いったい…」

苦しみながら、カツヤは階段を降りてきた黒装束の女を見た。
その女も頭巾のようなもので顔全体を隠していたのだが、よく見ると、頭の後ろで髪を結んでおり、その長い髪が、彼女が歩くたびに美しく揺れている。

「我々は月下会。この学園の創立者である綺堂院桜子の遺志により、学園の悪を裁く権利を預かっている。私はその35代目の総代だ。学園の名誉を守るため、お前のような者には制裁を加えるのが、我々の役目だ」

カツヤとユウジはもちろん、アズサもまた、そのような組織が学園内に本当に存在していたことに驚きを隠せなかった。しかし彼女たちの言動も服装も、とても嘘や冗談で行っていることとは思えない。
特にアズサは、いったんは自分で学園新聞の記事にしたのだが、それがいざ目の前に現れてみると、嬉しさと驚きが入り混じったような、複雑な思いだった。

「制裁…だと…? 何を…」

言いかけたカツヤだったが、総代と名乗った女が、すぐにそれを遮った。
床にうずくまって苦しんでいるカツヤの頭を、思い切り踏みつけたのである。
カツヤの顔面は冷たい大理石の床に押し付けられ、しゃべることもできなくなってしまう。

「静かにしろ。これは伝統に則った、神聖なる裁きである。以後、私の許可なく声を出すことは許さん」

あまりにも冷たい言葉だった。
しかしそれに従う二人の女も、それが当然というように黙りこくっていた。

「ではこれより、月下会の裁きを始める。…そう、その前に」

すると、総代を名乗る女は突然振り向いて、窓からのぞいていたアズサの方を見た。

「そこにいるあなた。こちらに来なさい」

振り向いた女と目が合ったアズサは驚いて、思わず叫んでしまいそうになった。
しかしアズサを見つめる女の眼は、一切の抵抗を許さぬような鋭さを持っていて、アズサは自分でも驚くほど素直に、旧校舎の中に入っていってしまった。

「あの…すいません…。覗くつもりじゃ…」

とりあえず、頭を下げてしまった。
しかし意外にも、総代や他の二人の女たちは、アズサに対して攻撃的な態度をとる風ではなかった。

「…あなたは、生徒会の学園新聞を書いているな? 私達のことを記事に書いただろう?」

意外なほど優しげな声で、総代を名乗る女は話しかけてきた。

「あ! はい! すいません。書いちゃいました…」

覆面で顔を覆い隠してまで、活動している彼女たちである。噂を元にしているとはいえ、新聞に書かれることは好まないのではないかと思った。
しかし女たちは、そのことについてアズサを責めるわけではないようだった。

「…よく見ておきなさい。我々がどんな信念を持って、何をしているのか。その後でまた記事にするかを、考えればいい」

意外な言葉だった。
アズサはハッとして、覆面の隙間からわずかに覗いている女の目を見た。
しかし、総代を名乗るその女は視線をそらすかのように振り向いて、再び足元のカツヤに目を下ろした。

「立て」

厳しく言い放つと、カツヤは股間を片手でおさえ、もう片方の手で鼻血の出ている顔面をおさえながら、ゆっくりと立ち上がった。
カツヤの股間には、まだダメージが残っており、先ほどのような素早い動きはできそうもない。

「三浦カツヤ。お前は昨日、女子水泳部の部室に忍び込み、部員の下着数点を盗んだ。そしてそれを、そこにいる蒲田ユウジに売却しようとした。間違いないな?」

罪状を読みあげるかのように、女は言った。

「う、うるせえ!」

ようやくダメージから回復しかけていたカツヤは、力を振り絞って右拳を固め、目の前にいる総代を殴ろうとした。
しかし。

「うっ!」

突然、後ろから、先ほどカツヤの股間を蹴りあげた黒装束の女が、その腕をとって、カツヤを羽交い絞めにした。
そして間髪いれず、総代の右膝が、無防備になったカツヤの股間にめり込んだ。

「ぐおっ!」

「月下会の制裁は、お前が心から反省するまで続けられる。覚悟しなさい!」

「くぅぅ…」

総代の膝蹴りは、正確にカツヤの二つの睾丸を射抜き、その持ち主に恐ろしい痛みを味わわせている。
しかし彼女たちはそんなことを気にする様子もなく、淡々とした様子で、彼女たちの言う「制裁」の準備を始めた。
股間の痛みで全身を震わせているカツヤをひきずり、その両手を捻りあげ、大理石でできた大階段の手すりに、ロープで結び付けてしまった。
そして、素早くカツヤのズボンのベルトをほどくと、一気にズボンを脱がせてしまった。ピッタリとフィットしたボクサーブリーフがそこに現れ、その中心には、男の象徴である膨らみが、もっこりと盛り上がっている。
両足を黒装束の女二人がそれぞれ掴み、大きく股を開かされたその正面に、総代が立った。



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