「あ…あの…」
ダイチが興奮のあまり、肌触りの良さそうなそのパンティーに、思わず手を伸ばしそうになったとき、ミキはさっと振り返って、スカートを元に戻した。
「はい、おーしまい。よく見えたでしょ?」
「あ…う、うん…。ありがとう…」
よく分からないが、ダイチはとりあえずお礼を言ってしまった。
「えー。お礼はいいよ。ちゃんと、料金をもらうから」
「料金…?」
思えば、一輪車で転んだサユリも、そんなことを言っていた。
「うん。いくよ。料キーン!」
楽しそうなかけ声と共に、まだ興奮の冷めやらぬダイチの股間に、強烈な膝蹴りを叩きこんだ。
「あうっ!!」
ダイチが頭で理解するより早く、痛みが押し寄せてきた。 先ほどまで見とれていたミキの細い脚が、容赦なく、股間にある二つの睾丸を押し潰したのだ。 半ズボンの股間にテントを張っていたダイチのペニスは、一気にしぼみ、膝から力が抜けて、自然とその場にしゃがみこんでしまった。
「あ…あっ…!!」
絶望的な痛みが下腹部に広がり、ダイチは両手で股間をおさえ、足をバタつかせたが、痛みはますます全身に広がっていった。 やがて呼吸さえも困難になって、背筋に冷たい汗が流れ始めたころ、ようやく自分を見下ろして、楽しそうに笑っているミキの声に気がつくことができた。
「やったー! 一発KOだー! やっぱり、膝の方がきくんだなー。今度から、膝蹴りにしよっと」
ミキは、狙っていた獲物を仕留めたかのように、はしゃいでいる。 ダイチは脂汗をかきながら、ミキの顔を見上げた。
「ありがとうございます。確かに料キン、いただきました。キャハハ! そんなに痛かったー? ごめんねー? でも、これ、決まりだからさー」
「き、決まり…?」
ダイチは混乱した頭で、懸命に考えようとしていた。
「うん。ウチのクラスではね、1パンツ、1キンタマなの。一回女子のパンツを見たら、男子はキンタマを蹴られないといけないんだよ。それが、パンツを見るための料金なの。知らなかった?」
すっかり青ざめた表情のダイチの側にしゃがみこんで、ミキは説明した。 つまり、女子のパンツを覗いた男子は、罰として金玉を蹴られてしまうということらしい。 これはスカートめくりをするような、やんちゃでスケベな男子を懲らしめる方法としては、一見、合理的なように見える。 しかし、このルールを利用して、女子が自らパンツを見せてきた場合はどうだろう。 それは一転して、男子にとって恐るべき暴力となるのではないだろうか。
「ダイチ君は、アタシのパンツを見たから、アタシが料金もらったってこと。ちょっと痛いかもしれないけど、パンツが見れたから、いいでしょ?」
男にとって、難しい選択だった。 先ほどまで、ダイチは確かに幸せな興奮の中にいたが、その代償として、今は地獄のような苦しみを受けている。 女子のパンツを見れることは嬉しいが、その先にあるものを考えると、やはり他の男子のように、見ないという選択をしたくなる。いや、自分はもう、パンツなど二度と見ないと、とめどない痛みの中で、ダイチは決意するのだった。
「でもさー。ダイチ君みたいなおっきい男子でも、やっぱりキンタマは痛いんだねー。見せパンだったから、ちょっと手加減してあげたんだけどなー」
歯を食いしばって苦しんでいるダイチの様子を、ミキは小首をかしげて、不思議そうに眺めていた。 ミキ自身は、自分の力が強いと思ったことなど一度もなかったが、その自分の加減した蹴りひとつで、ダイチのような男の子が簡単に動けなくなってしまうことが、心から不思議で、面白かった。
「あ、アタシにキンタマ蹴られたって、先生とかに言っちゃダメだよ? そしたら、アタシもダイチ君にパンツ見られたからって言うからね? いい?」
女の子らしく、それなりに計算されているようだった。 金玉を蹴られた男子が、先生に告げ口したとしても、女子がパンツを見られたと言えば、怒られるのは男子に決まっている。 特にダイチ達のクラスの担任は女性教師で、男子の金玉の痛みなど、理解してもらえるはずもない。 ダイチは、力なくうなずくことしかできなかった。
「良かった。じゃあ、トントンしてあげるね? こうすると、痛くなくなるんでしょ? はい、トントントン」
どこで覚えたのか、ミキはうずくまるダイチの腰のあたりを、拳で軽く叩いてやった。 それはほんの気休め程度の効果しかないが、それでもダイチにとってはありがたかった。
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