とある空手道場の女子更衣室で。 稽古を終えた小学生の女子たちが、着替えをしながら楽しそうに話していた。
マナ 「あー、疲れた。でも、今日も男子に勝っちゃった!」
サヤカ 「そうだね。アタシも勝ったよ」
チヒロ 「そっか。今日はみんな勝ったよね。金的で」
三人の女の子たちは、嬉しそうに今日の男子相手の試合の結果を話している。 三人は同じ小学4年生で、この道場では、小学生まで男女混合の試合をすることを認めていたのだ。 しかし小学生高学年までの男女は、体格差も少なく、むしろ女の子の方が背が高い場合が多い。 そのうえ、金的攻撃も認めているのだから、男子にとって、女子と試合をすることはかなりのリスクを伴っていた。
サヤカ 「ていうかさ、マナの試合のとき、相手のユウキ君、超怖がってなかった? マナの下段蹴りに、超反応してたよね?」
マナ 「あー、そうだったかも。なんか、金的蹴るつもりじゃないときも、すっごい避けてたよね。やっぱり、怖いのかな? ウケるよね」
二人は笑いながら、マナとユウキの試合を思い出していた。
チヒロ 「あれさ、その前のサヤカとケンタの試合を見てたからでしょ。サヤカが思いっきり蹴るんだもん。ケンタのあの痛がり方見たら、男子はみんなビビっちゃうよ」
チヒロの言うとおり、マナとユウキの試合の前、サヤカは相手のケンタの金的を、いつも以上に激しく蹴りとばしていた。 ケンタはサヤカの蹴りを受けた瞬間、奇声を上げて、そのまま床に這いつくばり、白目をむいて失禁すらしてしまったのである。
サヤカ 「あ、そっかあ。まあ、あの時はアタシも怒ってたからねー。ケンタのヤツ、あたしのオッパイばっかり突いてくるんだもん。あったまきたから、思いっきり蹴ったんだ。いい手応えだったな」
マナ 「あー、それは自業自得だね。タマタマ潰されても、文句言えないかも」
サヤカ 「うん。一個くらいは潰すつもりで蹴ったよ。まあ、大丈夫だったみたいだけど。意外と潰れないんだよねー」
サヤカとマナは、男にとっては聞きたくもない恐ろしいことを、平然と口にした。
チヒロ 「ケンタがやられたときの他の男子達の顔、見た? みんな黙り込んで、自分のタマタマに手を当てたりしてたよ」
マナ 「ホントに? 見てなかったなー。自分のタマタマの確認してたのかな?」
マナが言うと、サヤカは笑った。
サヤカ 「えー。なんで? タマタマが大事だから? 人が蹴られてるの見ると、怖いんだ?」
チヒロ 「じゃない? ちょっとカワイイよね」
三人はうなずいた。
マナ 「あの、タマタマを蹴られてさ、ちょっと耐えようとするところも、カワイくない? ああーん、って感じで」
マナは自分の股間に両手をあてて、金的を蹴られた男子の真似をしてみた。
サヤカ 「分かる。内股になって、必死に我慢しようとするんだけど、やっぱりダメで倒れちゃうのね。カワイイよねー」
チヒロ 「軽く当たったときとかさ、最初は大丈夫かと思うんだけど、後からきいてくるんだよね。今日のジン君もそうだったもん」
サヤカ 「そうそう。軽く当たっても、すっごい痛い時があるみたいだよね。不思議」
チヒロ達が男の金玉の不思議を口にすると、マナは目を輝かせて、話し始めた。
マナ 「あ、アタシはね。最近、クリーンヒットしたときの感触が分かってきたよ。タマタマが足の甲に乗った感触があるときは、絶対立てないの。今日のユウキ君もそうだった」
チヒロ 「ホント? タマタマが乗った感触?」
サヤカ 「あー、それ、分かるかも。なんかさ、タマタマがクニってなる感じじゃない?」
マナ 「そうそう。蹴りの強さはあんまり関係ないんだよね。あと、当てた時に足首をクイって手前に引っ張ると、いい感じだよ」
マナは足を上げて、実際にやって見せた。
チヒロ 「へー。アタシも今度やってみよう。ユウキ君のタマタマが大きいから、やりやすいよね?」
マナ 「うん。あの三人の中では、ユウキ君が一番大きいよね。一番小さいのは、ケンタ?」
サヤカ 「うん。ダントツでケンタだよ。だから、簡単に潰れるかなーって思ったんだけど。大きい方が痛いってわけじゃないのかな?」
マナ 「みたいだね。あと、一個だけ当たった時でも、関係ないみたい」
チヒロ 「ホント? アタシはいつも二個とも狙ってるけどな」
サヤカ 「アタシも、どうせ当てるなら二個まとめて当てたいな。今度はこう、斜め横から蹴ってみようかな。一個だけ当てて、そのまま隣にぶつける感じで」
サヤカは気合十分に素振りをする。
マナ 「いいね、それ。タマタマ同士がぶつかって、すごい痛そう。あうーんって感じ?」
マナはまた、股間に手を当てて痛がるふりをする。
チヒロ 「でもホント、男子って可哀想だよね。タマタマなんかついててさ。絶対鍛えられない急所なんでしょ? 痛いだけじゃん、あんなの」
チヒロは憐れむような調子で言う。
サヤカ 「ホントだよねー。いくら男子の力が強くてもさ、金的蹴られたら、一発じゃん。アタシ、本気でやったら、全然負ける気しないんだけど」
マナ 「ホント、ホント。アタシ、女に生まれて良かったー」
マナの言葉に、サヤカとチヒロは深々とうなずいた。 やがて着替えが終わり、女の子たちは更衣室を出て、帰路についた。 すると道場の出口で、今日、女の子たちがノックアウトした男子二人、ユウキとジンに出会った。
ユウキ 「あ! お、お疲れ様…」
ユウキは明らかにバツが悪そうに、女の子たちに言った。 ジンの方も、女の子たちを見るなり、目を合わさないように無言でうつむいてしまう。
サヤカ 「あ、お疲れー。ケンタは?」
サヤカは明るく声をかけ、自分が思い切り金的を蹴りあげたケンタを探すが、そこに姿は見えなかった。
ユウキ 「あ、ケンタは…」
ユウキは口ごもった。
ジン 「ケンタは…まだ、残ってる…。その…痛いから歩けないって…」
ジンが少しずつ、言葉を選びながら説明した。 それを聞いた女の子たちは、すぐさま納得した様子だった。
マナ 「あー、そうなんだ。大丈夫かな? 潰れてないかな?」
サヤカ 「アソコが潰れちゃうと、超痛いんでしょ? ちょっと強く蹴りすぎちゃったかな?」
女子達は心配そうに言ったが、それはかえって男子達にとって心苦しいものだった。 どれだけ心配しているようでも、しょせんは金玉の痛みの分からない女の子たちの言うことで、そこに実感が伴っていないのは、男子達には良く分かっていたのだ。
チヒロ 「今日はなんかゴメンね。みんな金的を蹴られちゃったみたいで。男子達はみんな強いからさ、つい蹴っちゃうんだよね」
チヒロの言葉に、男子達は苦笑いするしかなかった。 確かに単純な腕力では、ユウキやジンの方が勝っているかもしれないが、彼らは目の前の女の子たちに、手痛くやられてしまったのである。 しかも、男として最も屈辱的な負け方で。
サヤカ 「でもさあ、金的ってそんなに痛いのかな? 我慢できないくらい?」
ユウキ 「あ、うん…。まあ…」
サヤカの言葉に、ためらいがちにうなずいた。 本当は、男のプライドにかけて否定したかったが、現実は、彼はマナの前でこらえきれずに床に這いつくばってしまっている。 股間をおさえてうずくまる姿は、女子達には絶対に見られたくない、情けないものだったが、あの痛みは、そんなことを即座に忘れさせてしまうくらいのものなのだ。
チヒロ 「アタシの金的蹴りは、いつものより痛かった?」
チヒロが素朴な様子でジンに尋ねた。
ジン 「え? いや…うん…どうだろう…」
ジンは思い出したくもないという風に、ためらいがちにうなずいた。
チヒロ 「ふうん。まあ、いいか。また今度蹴ったときに、比べてみてよ。じゃあね」
最後にジンの背筋が寒くなるようなことを言って、チヒロ達は去っていった。
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