コウタは、まったく想像もしていなかった事態に困惑していた。 15人もいたはずの男子達は、自分をのぞき全員ノックアウトされ、今は女子10人に取り囲まれている。 できることなら逃げ出したい気分だったが、それもできそうになかった。
「お、お前ら卑怯だぞ! キンタマ狙いやがって! 反則だぞ!」
「えー。ケンカに卑怯とかあるんだ? でもさ、男子は女子よりずっと強いんでしょ? じゃあ、ちょうどいいハンデじゃない? コウタのも、ちょっと蹴らせてよ」
じりじりと歩み寄ると、コウタは慌てて、両手で股間を覆い隠した。 余裕の表情で迫るカエデとは対照的に、コウタは完全に戦意を失って、キンタマを守ることだけを考えている様子だった。
「カエデちゃん、手伝おっか?」
カエデの横にいた、ケイコが言った。
「そうだね。めんどくさいから、みんなでやっちゃおうか」
カエデがうなずくと、女の子たちは一斉にコウタを取り囲み、飛びかかった。 すでにそれぞれが男の子をノックアウトして、自信をつけていた。 キンタマ攻撃の恐怖に怯えるコウタは、あっという間に両手両足を取られ、大の字になってカエデの前に立たされることになった。
「や、やめろよ、お前ら! やめてくれって!」
コウタはもがくが、さすがに数人の女の子におさえられては、男の子といえど身動きができなかった。
「言っとくけど、アンタがいけないんだからね。アンタがユイちゃんを泣かしたから、こんなことになってるんだよ」
コウタは執念深い女の恨みを感じ、ユイに暴力をふるってしまったことを後悔したが、今となってはどうすることもできない。
「そうだ、カエデちゃん。アタシ、キンタマの実物が見てみたいんだけど」
「あ、わたしも。見たい見たい」
ケイコが言うと、女の子たちは口々に同意し始めた。
「あ、そっか。みんな、キンタマを見たことないんだっけ? じゃあ、コイツをやっつける前に、見てみようか」
カエデはいとも簡単そうに言った。 コウタはこの話の展開に慌ててしまう。
「ちょ、なんだよ! 見てみるって…」
「じゃあ、ズボンとパンツを脱がしちゃお。よいしょっと」
女子達にしっかりとおさえられて、身動きのできないコウタを無視して、カエデはズボンに手をかけて、パンツと一緒にずり下ろしてしまった。
「あっ!」
コウタが恥ずかしがる間もなく、その股間はクラスの女子達の目の前にさらされてしまった。
「きゃー!」
「あー、オチンチンだー!」
女の子たちは口々に叫ぶが、恥ずかしがる様子もなく、露わになった性器を注視している。
「ちょ、やめろよ! 見るなって!」
「うーんとね。これがオチンチンでしょ。で、この下にあるのがキンタマなの」
顔を真っ赤にして抵抗するコウタの叫びも空しく、カエデはコウタの性器を指差しながら解説を始めた。
「へー。そんなにちっちゃいんだー」
「なんか、プルプルしてて、カワイイね」
屈辱的な言葉をかけられても、どうすることもできない。 ついにコウタは黙り込んでしまった。
「そうそう。で、昨日も言ったけど、オチンチンはあんまり痛くないの。ね?」
カエデは、コウタのペニスに軽くデコピンをした。 コウタはちょっと顔をしかめて、痛がる様子だった。
「ほらね。全然平気でしょ? でも、キンタマは違うんだよ。えい!」
続いてコウタのキンタマに、先ほどと同じようにデコピンすると、コウタはうっとうめいて、大きく体を震わせた。 羽交い絞めにされながらも、腰を引いて、足を震わせている。
「えー! ウッソー。今ので痛いの?」
「ウソでしょ? 演技だよ、演技」
女の子たちは笑いながら、コウタの苦しむ様子を見ていた。 同時に、女の子たちは期待していた。カエデはどうやって、このデリケートすぎる男の急所を痛めつけてくれるのだろうか。 カエデもまんざらでもないように、足首のストレッチなどを始める。
「でもみんな、初めてなのにキンタマ蹴るのうまかったよねー。あとは、ちょっとしたコツがあってさ。足首の使い方なんだけど、できるだけ力を抜いたほうがいいんだよね。こんな感じ」
楽しそうに素振りをしてみせるカエデの蹴りを見て、コウタの顔は真っ青になってしまっていた。 一方の女の子たちは、感心してそれを見ている。
「あんまり力は入れなくていいから、スピードの方が大事なの。見ててね」
カエデがコウタに向かってかまえると、コウタはついに泣き出しそうな顔になってしまった。
「やめて、やめてくれよ! 俺が悪かったから。謝るよお」
いつも威張り散らしている普段のコウタからは、考えらない言葉だった。 必死の形相で許しを乞うコウタの様子に、カエデと女子たちは、思わず吹き出してしまう。
「ウソー。コウタ君が謝ってるよ」
「そんなにキンタマ蹴られたくないの?」
「大丈夫。そんなに痛くないよ。わかんないけど」
女の子たちは、同情するような目でコウタを見たが、かといってその手足を放してやることはしなかった。
「ま、男らしく諦めてよ。せえの!」
カエデも笑いをこらえながら、渾身のキン蹴りをコウタの股間に放った。 スパーンと、今日のキン蹴りの中で一番いい音がして、カエデの足の甲はコウタのキンタマを正確に打ちつけた。
「はぐぅっ!」
コウタは両手足を掴まれながらも、体を折り曲げて、腰を精一杯引いた。 女の子たちが解放してやると、すぐに両手で股間をおさえ、そのまま前のめりに崩れ落ちてしまった。
「はあぁっ!」
海老のように体を丸めながら、両足をジタバタとさせて、地面をゴロゴロと転がっている。
「すごーい。いい音したね。なんか、すごいことになってるよ」
「うん。今のはいい感じだったな」
「面白ーい。ジタバタしてるよ」
少しすると、コウタは地面を転がるのをやめて、その場にうずくまったまま、ブルブルと震えていた。 絶望的な痛みがコウタの全身を襲い、周りで笑い合う女の子たちの声も、まったく耳に入らなかった。
「さすがカエデちゃんの蹴りは、ホント痛そうだね。でも、コイツにはこれくらいやんないとねー」
「そうそう。ユイちゃんを泣かしたんだから、キンタマ潰すくらいじゃないと、納得できないよ。ユイちゃん、ちょっと痣になってたみたいだからね」
「ホントに? 痛そー」
コウタがユイに与えた痛みよりも、恐らく数百倍は大きな痛みをコウタは味わっているはずなのだが、キンタマの痛みが分からない女の子たちにとっては、痣ができたことの方がリアルなものとして共感できた。
「ねえ、コウタ! アンタこれに懲りたら、二度と女の子に暴力振るっちゃダメだからね! わかった?」
カエデはうずくまっているコウタの側にしゃがみこみ、言い放った。 しかしコウタは、その言葉に反応することができない。
「聞いてんの? もう一回蹴ってあげようか?」
痺れを切らしてそう言うと、コウタは慌ててうつむいたまま、首を横に振った。
「やめて…ください…。すいませんでした…」
コウタは大粒の涙を流しながら、息も絶え絶えにそう言った。 その様子を見て、カエデと女子たちも、自分達の勝利を確信し、満足した。
「じゃあ男子はこれから、真面目に掃除するんだね? 遅れたりさぼったりしたら、またキンタマ蹴るからね?」
カエデはコウタだけでなく、周りで苦しんでいる男子全員に向かって言った。 コウタは素直にうなずいた。
「はい…。真面目にします…」
「ホントだね? 一人でもサボったら、連帯責任で全員キンタマ蹴りだからね?」
「はい…」
ケイコが言うと、コウタをはじめとして、返事のできる男子は全員うなずいた。
「よし。じゃあ、このせんそーは女子の勝ちってことだね。みんな、ありがとー!」
カエデが満面の笑みで言うと、女子全員がそれに応え、笑い合って手を叩いた。 やがて満足げに女子たちが帰った後、男子たちは地面に這いつくばったまま、しばらく立ち上がることさえできなかった。
終わり。
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