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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。

翌日の放課後、体育館の裏にある中庭で、3年2組の男子と女子が真っ二つに分かれて対峙していた。
女子の数は10名。全員、カエデにキンタマ攻撃のレッスンをたっぷりと受けている女の子たちだった。
対する男子は15名。元々、このクラスは男子の数の方が多かったのだが、今日は「せんそー」をするということで、大人しい女子たちの数名は、参加を見送ってしまったのである。

「なんだよお前ら、10人しか来てないのか?」

ズラリと並んだ男子達のリーダー格、コウタが挑発するように言った。

「こっちは15人もいるんだぞ。これじゃ、勝負にならないじゃないか」

コウタはいかにも腕白そうな男の子で、腕組みしながら仁王立ちしていた。
その他の男子達も、女の子なんかにケンカで負けるわけがないと、完全になめきっている様子だった。

「関係ないでしょ! 男子より女子の方が強いんだから、これで十分よ! ね?」

カエデが威勢よく言うと、他の女の子たちもうなずいた。
コウタはその言葉にプライドを傷つけられたようで、子供っぽく怒りだした。

「なんだと? 女より男の方が強いに決まってるだろ! お前ら、女だからって手加減してやらないからな!」

「いいよー! こっちも手加減しないから」

カエデの態度は、コウタだけでなく男子全員の怒りに火をつけた。
元々、この「せんそー」は些細なことから始まったケンカであった。

「みんな、ユイちゃんのカタキ、取ろうよ!」

「うん!」

カエデが言うと、女子全員が力強くうなずいた。
ユイちゃんとは、この「せんそー」の発端になった女の子で、今ここにはいない。
このクラスの男子たちはとにかく腕白な連中が多くて、昼休みは全力で遊び、その後の掃除の時間に遅れてくることはしばしばだった。
それを度々注意してきたのは、同じ場所で掃除をしなければならない女子たちだったのだが、男子達にとってはそれがうっとおしく、ついにある日、ユイから注意を受けたコウタがそれに腹を立て、暴力を振るったのである。
ユイは泣いてしまい、女子たちはコウタに謝罪を求めたが、コウタは聞く耳を持たなかった。ついにはそれが、クラスの男子と女子全員を巻き込んだ対立につながってしまい、現在に至っているのである。

「おいみんな、男に逆らったらどうなるか、女たちに思い知らせてやろうぜ」

コウタの言葉に、男子達はすでに勝ち誇ったような顔をしてうなずいた。
男子の誰一人として、女子とケンカして負けることなど考えもしていないようだった。

「よおし! じゃあ、始めるからな。女子が全員降参するまで、やめてやらないからな!」

「そっちこそ。男子全員泣いて謝るまで、許してあげないからね!」

コウタとカエデが言い放って、3年2組の「せんそー」が始まった。
10メートルほど離れて対峙していた男子と女子が、相手に向かって一斉に駆けだした。
男子達はとくに打ち合わせもせず、作戦など考えもしていなかった。ただ、男の強さと闘争本能にまかせて、女子のお腹でも2,3発殴れば、決着がつくくらいに考えていたのだ。
一方の女子達は、昨日のカエデのキンタマ攻撃レッスンを入念に受けて、さらに実戦的な攻撃の手順までシミュレーションしていた。
男子達にとっては、油断こそが最大の弱点だっただろう。

「おい! お前、泣かすぞ!」

男子で一番最初に相手を見つけたのは、背が低くてすばしっこいシンイチだった。
シンイチは自分よりも背の高い、女子のマリエを選んで、掴みかかっていった。

「何よ、チビ!」

マリエは掴みかかってきたシンイチの両手を、自分も両手で受けた。二人は両手を頭上に上げて、押し比べの状態になる。
シンイチはマリエの言葉にかっとなって、マリエを睨みつけ、力任せにねじ伏せようとした。
さすがに単純な力では、マリエに勝ち目はなさそうだったが、シンイチの注意をマリエの顔に向けさせたのは、作戦通りだった。

「がら空きよ。えい!」

マリエはその長い脚を使って、思いっきり踏ん張って大股開きになっていたシンイチの股間に蹴りを打ち込んだ。

「あっ!」

マリエの顔ばかり睨みつけていたシンイチは、マリエの右脚が自分の急所に伸びるのに、まったく気がつかなかった。
ただ、軽い衝撃を股間に感じたと思ったら、そこからぞわぞわした感覚が全身に広がり、やがて全身の自由を奪うような痛みが襲ってきた。

「あれ? どうしたの?」

今までかなりの力で自分を押しこんでいたシンイチが、急に手を放し、へなへなと座り込んでしまったことに、誰よりもマリエが驚いてしまった。

「うう…」

シンイチはキンタマをおさえてしゃがみこみ、重苦しい痛みにうめき声をあげている。
マリエは自分の攻撃が予想以上の効果をあげたことに、驚きながらも満足した。

「ホントに一発なんだ、キンタマって。超弱いじゃん」

マリエはシンイチを見下ろしながら、誇らしげに笑った。



サッカーのクラブに所属し、運動神経がいいはずのリョウヘイは、女子の中でも活発なミキに、すでにノックアウトされていた。

「痛いよー…」

開始早々、リョウヘイはミキに狙いを定めて、突っ込んでいったのだが、それを狙いすましていたミキの膝蹴りが、リョウヘイの股間にカウンター気味に入ってしまったのである。

「なによ、一発くらいで泣いちゃって。男の子でしょ」

リョウヘイはミキの膝蹴りを受けると、すぐにその場に座り込んでしまい、男だけにしか分からない痛みに体を震わせながら、泣きだしてしまった。

「まあ、男の子だから痛いのか。弱いキンタマなんか、いらないのにね。変なの」

ミキは完全に動けなくなったリョウヘイから離れて、他の男の子を探すことにした。
何しろ女子の方が人数が少ないのだから、一人倒すだけでは足りないのだ。しかしそのあたりの戦術も、女の子たちは万全に計画していた。

「あ、ユカリちゃん!」

ミキが目をつけたのは、体格の大きなダイスケにおされている、女子のユカリだった。

「痛っ! ちょっと待って!」

「この野郎! 卑怯なことしやがって!」

ダイスケは興奮した様子で、背を向けて防御しているユカリの背中を叩いていた。
どうやらユカリは、最初のキンタマ攻撃に失敗して、逆にダイスケの怒りを誘ってしまったらしい。
男の最大の急所を狙われた恐怖は、相手が女の子だということを忘れさせてしまうほど、ダイスケを興奮させてしまっていた。

「ユカリちゃん、大丈夫!?」

そこにミキが駆けつけて、後ろからダイスケの両腕を取って、羽交い絞めにした。
興奮して周りが見えなくなっていたダイスケは、突然背後から腕を取られて、パニックになってしまった。

「なんだよ、お前! 放せ!」

「あ、ありがとう、ミキちゃん!」

この隙に逃れたユカリが振り向くと、ミキが背後からダイスケの両手をおさえて、さらに両脚をダイスケの足の内側に入れて、二人は大きく足を開いて重なった状態になっている。
実はこれが女の子たちの奥の手で、男子と女子の体の違いを利用した必勝法だったのだ。

「ユカリちゃん、今だよ!」

ミキがそう言うと、ユカリはうなずいて、ミキの足によって無理矢理開かれたダイスケの股間に、先ほどは外してしまった渾身の蹴りを叩きこんだ。

「あぐっ!」

ユカリの蹴り足は、ダイスケのキンタマを直撃し、さらに重なり合ったミキの股間にも届いていたが、キンタマのついていないミキは、多少の衝撃を感じただけで、痛むというほどではなった。

「あぁ…っ!」

一方のダイスケは、ユカリのキン蹴りをまともにくらい、無残にも崩れ落ちてしまった。

「やったあ! ユカリちゃん、ナイス!」

「ミキちゃん、ゴメンね。助かったあ。痛くなかった?」

二人は前のめりに崩れ落ちたダイスケを見て、勝利を確信したらしい。

「ぜんぜん。ちょっと靴が当たった感じがしたけど、痛くもなんともないよ。ダイスケも同じ力で蹴られたんだよね? それで、こんなに痛がってるんだ」

見下ろすと、ダイスケは股間を両手でおさえ、頭を地面にこすりつけて呻いている。

「そうだよね。ホントに急所なんだ、キンタマって」

ミキとユカリは、改めて男のキンタマの脆さに驚く思いだった。
するとユカリが、ダイスケの後ろに回り込み、無様に尻をつき上げて苦しんでいるその股間をじっと見つめた。

「さっきはよくも、アタシのこと叩いたわね! 百倍にしてお返しするからね! それ!」

そう言うと、ユカリは後ろから、ダイスケの股間めがけて、つま先を蹴り込んだ。
ダイスケのキンタマは、その両手によってしっかりと包まれていたのだが、蹴りの衝撃の何割かは伝わり、今のダイスケにとっては、十分すぎるほどの苦痛を与えた。

「あうっ! はうっ!」

ユカリは続けて2回3回と、つま先を蹴り込んでいく。
どうやらダイスケは、しばらく立ち直れそうになかった。




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