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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。


「はーあ…」

休み時間、ミサキはため息をついた。
ミサキは小学6年生で、少し大人しいが、明るい女の子だった。
ただ、ミサキには小学3年生になる双子の弟二人がいて、いつもその面倒を見るのに奔走していることは、クラスの友達にもよく話していた。

「どしたの、ミサキ? また弟の事?」

ミサキの友達の一人、エリが話しかけてきた。

「うん…。ウチの弟たちって、なんであんなにヤンチャなんだろう。もう、やりたい放題なんだけど」

「大変だねー。たまには、ビシッと怒ってやれば?」

「うん。言ってるんだけど。最近は、アイツらも大きくなってきたからさ。けっこう力が強いの。ほら、昨日なんか、思いっきり叩かれちゃった」

ミサキは左腕の内側を、エリに見せた。
そこには、大きな青いあざができている。

「うわあ。痛そう。叩いてくるの? 危ないね」

「うん。学校でもけっこう暴れてるらしくて。このままだと、ちょっと心配かも…。なんか、いい方法ないかなあ」

「うーん…」

ミサキとエリが悩んでいると、教室の後ろの方から、賑やかな声が聞こえてきた。
どうやら、男子たちが寝転がって、プロレスごっこをしているらしい。男子たちは掴み合い、組み伏せあったりして、笑いながら楽しんでいる。
そこに一人だけ、小柄な女の子が混じっていた。クラスの女子でも一番活発な、サクラだ。どうやら男子に混じって、プロレスごっこをしているらしい。
ミサキは、ぼんやりとその様子を眺めていた。

「うっ! ちょっ、タイムタイム!」

不意に、サクラの上に覆いかぶさって、勝負をつけようかとしていた男子が、飛び起きて離れた。

「お前、タマ掴むなよ。反則だぞ」

男子はしゃがみこんで、股間を撫でている。
どうやら、サクラが下になった時、男子の急所を握ったらしい。

「へへーっ。女子は3秒ルールでしょ。反則じゃないよー」

サクラは悪戯っぽく笑う。

「マジかよ。もう、手加減しねえからな」

男子は再び、サクラに掴みかかった。
サクラも応戦するが、やはり力の差は大きく、今度は後ろから腕で首を絞めあげられてしまう。

「どうだ! ギブアップか!」

もちろん、本気で首を絞めているわけではないが、それなりに苦しい。
サクラは首にかかった腕を外そうとするが、無理と分かると、すかさず背後にいる男子の股間に手を伸ばした。

「うわっ!」

サクラの手は、男子の半ズボンの隙間から入り、ブリーフの上から睾丸を握りしめた。

「や、やめろよ!」

男子はすぐにサクラの首から腕を離すが、サクラの手は睾丸を握って離さない。

「いーち、にー…」

サクラは笑いながら、ゆっくりと数を数え始めた。3秒ルールとは、3秒間は急所攻撃をしていい、ということらしい。

「は、放せって…」

サクラのかなりゆっくりとしたカウントの間中、男子は顔を歪めて、苦しそうにしている。しかし、サクラの手を振りほどくことはできないようだ。

「さーん! はい」

サクラはようやく、男子の股間から手を放した。
男子はほっと息をつくが、睾丸からこみあげる痛みで、立つことができなかった。

「あれ? もうやらないの? ギブアップ?」

「ク、クソ…。もう、俺の負けでいいよ。お前、キンタマ攻撃しすぎだぞ」

男子は悔しそうに、サクラを見た。

「ゴメン、ゴメン。近くにあったから、つい、握っちゃった。痛かった?」

「痛えよ! あー、もう、お前とはやらない」

男子は痛そうに、股間をさする。

「ウソー。そんなこと言わないでさあ。またやろうよ」

サクラは笑いながら謝っていたが、男子はへそを曲げてしまっていた。
ミサキはその様子を見て、ルールはどうあれ、サクラが男の子をやっつけてしまったことに、ひどく感心した。
そしてそれが、自分の弟たちにも有効ではないかと思い、サクラに男子を大人しくさせる術を聞こうと思ったのだった。




「サクラちゃん」

放課後、帰ろうとするサクラに、声をかけた。

「なあに?」

「あの…ちょっと相談なんだけど。サクラちゃん、今日の休み時間に、男子達と遊んでたじゃない? そのときに、サクラちゃんが…」

「ああ、キンタマ攻撃で勝ったやつ?」

サクラが天真爛漫な表情でそう言ったため、大人しいミサキはちょっと面食らってしまった。

「そう。それなんだけど。実はね、ウチの弟たちが乱暴すぎて困ってるんだけど、弟たちにも使えるかしら?」

「もちろん。男子には、みんなキンタマがついてるんだよ。ミサキちゃん、知らないの?」

サクラはニコニコしている。
ミサキは弟がいるとはいえ、性的なことに関しては、まったくウブだった。

「あ、う、うん。そうだよね。知ってたけど…。ウチの弟たち、すっごい暴れん坊だから…」

「関係ないよー。キンタマをやれば、みんな大人しくなるよ。男子だもん」

「そ、そっか。でも、その…キンタマって、どうやって攻撃すればいいのかな?」

ミサキはだいぶ小さな声で、恐る恐る聞いてみた。

「うーん。何でもいいんだけどなー。ミサキちゃん、その弟くんたち、今日は家にいるの?」

「え? あ、うん。たぶん。3年生だから、もう帰ってるかも」

「じゃあ、私がちょっと見せてあげるよ。男子を大人しくさせる方法をさ」

サクラは満面の笑みで言った。
ミサキは驚いたが、サクラが弟たちを大人しくさせてくれるのであれば、こんなに心強いことはないと思った。

「ホント? じゃあ、お願いしようかな」

「まかせて!」

二人は連れだって、ミサキの家に向かった。




家に着くと、やはり二人の弟たちはすでに帰ってきていた。
乱雑に投げ出された玄関の靴から、それがわかる。

「ウチのお母さん、働いてて、いつも遅くなるんだ。サクラちゃん、あがって」

ミサキは当然のように、脱ぎ散らかされた靴を揃え直して、家に上がった。

「うん。お邪魔しまーす」

リビングのドアを開けると、そこにはさらに弟たちのヤンチャぶりを示す光景があった。
床に放り投げられた傷だらけのランドセル、ソファーに投げ出されたTシャツと靴下、開けっぱなしの冷蔵庫、ジュースのペットボトルはテーブルに置いたままで、その近くにはコップが倒れて、ジュースがこぼれている。スナック菓子の袋がカーペットの上に転がっていて、中身が散乱していた。

「ああ、もう。また、こんなにして」

ミサキはため息をついてそう言ったが、さして驚いた風でもなく、すぐに片づけを始めた。

「うわあ。こりゃ、ひどいね。いつも、こんなんなの?」

サクラは手伝おうかと思ったが、どう手を付けていいかわからなかった。

「うん、だいたいいつも、こうなの。もっとひどいときもあるよ」

「へー。これはちょっと、大変だね。で、その弟くんたちは、どこいったの?」

「うーん。もうおやつは食べたみたいだから、上の部屋かなあ」

そう言っていると、2階の部屋から、ドタバタと跳ねまわる音と、男の子たちの奇声が聞こえてきた。

「ミサキちゃん、もう片付けなくていいよ。弟くんたちにやってもらおう」

サクラは笑いながら、そう言う。

「え? でも、あの子たちがやるわけないよ。いつも、私が…」

「いいから、いいから。2階に行こ」

戸惑うミサキの手を引っ張って、サクラは階段に向かった。
2階の弟たちの部屋のドアを開けると、もはや収拾がつかないほど散らかった部屋の中で、上半身裸の半ズボンの双子の男の子たちが、プラスチックのバットを振り回して、対決ごっこをしていた。

「コラ! 二人とも! 何してるの!」

ミサキが怒声を上げると、二人は一瞬、止まったが、すぐにまた暴れ始めた。

「姉ちゃん、おかえりー」

「おかえりー。えい! おりゃ!」

ミサキの双子の弟、マサキとトモキは、まったく悪びれた様子もなく、遊んでいる。

「コラ! ちょっと、やめなさい! 一階を片づけないと、遊んじゃダメよ!」

ミサキが二人に割って入ると、ようやく二人は動きを止めた。

「えー。あれはトモキがやったんだよ。俺、知らなーい」

「ウソつけよ。マサキの方が散らかしたんだよ。俺も知―らない」

二人は口々にとぼけてみせる。

「いいから! 二人で一緒にキレイにするの! ほら、早く!」

ミサキは双子の腕を引っ張って、一階に連れて行こうとした。
しかし双子はそれぞれ反抗し、暴れ出す。

「イヤだ! トモキがやれよ!」

「俺だってイヤだ! 放せよ!」

やがて二人の矛先は姉のミサキに向かい、持っていたバットで、ミサキを叩き始めた。

「ちょっと、痛い。やめてよ。痛いって!」

ミサキはたまらず、二人の腕を放してしまう。

「いえーい。姉ちゃん、やっつけた!」

「俺がやっつけたんだぞ!」

はしゃぐ双子。
サクラはそんな姉弟の様子を、部屋の入り口で黙って見ていたが、ミサキが二人に叩かれてしまったのをきっかけに、動きだした。



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