性行為を経験した後の若者は、異性の見方が変わるというが、ユイの場合、実際の性行為こそしなかったものの、それに近いものがあったのかもしれない。 翌日、アツトの方から謝ってきたときには、ユイは自分でも不思議なほどの余裕を持って、彼を許すことができたのだ。 さらに驚いたことに、今度は彼女の方から、アツトを自宅に誘うことまでしたのである。
「ん…! ああっ…!」
ユイの初体験は、噂で聞いていたほどの痛みはなかった。 彼女はハードル走の選手で、普段から脚や股関節の柔軟体操をしていたから、あるいはそれが良かったのかもしれない。 アツトの方も、ハッキリとは言わなかったが、おそらく初めてだったのだろう。 ぎこちない動きで腰を振る様子を、ユイはぼんやりと下から眺めていた。 今、アツトの男としての象徴は、雄々しく漲り、力強くユイの体内に入ってきている。しかしその付け根には、この上なく繊細で脆い二つの球体が、薄皮一枚に包まれた状態でぶら下がっているのだ。 アツトが腰を振るたびに、その無防備な袋状の物体がブラブラと揺れているのを、見えないが、ユイはしっかりと感じていた。
(今、蹴ったらどうなるのかな…?)
快感と呼ぶにはあまりにもきわどい、初めての感覚に身を任せながら、ユイはそんなことを考えてしまった。 位置的に膝を当てることは難しそうだったが、手を伸ばせばすぐ届く場所にある。
(握ってもいいんだよね…。握り潰したら…どうなるかな…。すごい痛がって、気絶しちゃうかな…。…ダメかな…)
二人が半裸で密着したこの状態は、憧れていた先輩の生殺与奪権を握っているような気がして、ユイは嗜虐的な快感を覚えた。 今、アツトは懸命に腰を振って、男の本能を満たそうとしているが、それができるのも、ユイが彼の急所を見逃してやっているからなのだ。もしユイがその気になれば、すぐにでもアツトの金玉袋をその手に握って、このセックスを終わりにすることができる。 つまりアツトは、ユイからすべてを捧げられ、征服したような気分になっているかもしれないが、実際には彼女の掌の上で踊っているようなものなのかもしれない。 少なくともユイはそう考えることで、このセックスにより一層の快感を感じ始めていた。
(先輩のあの顔…見てみたいな…。あの痛そうな顔…)
ユイの脳裏には、急所を蹴られた時のアツトの切ない表情が焼き付いていた。
(もうダメ…握っちゃおう…!)
ユイが我慢できず、アツトの股間に手を伸ばしかけたその時、
「あっ! ああっ!!」
アツトは背中を大きく反らして、果ててしまった。 その脈動は、ユイの体内にも激しく伝わり、不意に訪れた刺激に、ユイは伸ばしかけた手を止めてしまった。
「あ…ハア…ハア…」
力尽きたように、ベッドに倒れこむアツト。その男性自身も、ユイの体内で急速にしぼんでいくのが分かった。 これでは、面白くない。 はちきれんばかりに漲った男の象徴と、脆弱な二つの玉。そのギャップこそが、ユイの嗜虐心をそそるものだったのだ。
「ハア…ハア…。気持ちよかった…?」
「あ…うん…。気持ち…よかった…」
その言葉を聞くと、安心したように、アツトはほほ笑んだ。 まったくのウソではなかったが、完全な真実ではない。 ユイの欲求は、かえって大きくなってしまうようだった。
(握ってみたい…どうしても…。男の人のタマ…)
こんなことを一日中考えてしまう自分が、かなりおかしいとは自覚していたが、かといって一旦火のついてしまった若い欲望は、なかなか抑えられるものではない。 ユイはもう、すべて見てしまったからだった。丸裸になった男という生き物を。その象徴である性器を。 筋肉に覆われた体はたくましく見えても、その脚の付け根には、珍妙な物体がちょこんと飛び出すようについている。 初めてまじまじと見た男の裸は、ユイが思っていた以上に滑稽なものだった。 自分たち女性には、あんな無様なものはついていない。その股間は、すっきりとしてスマートだ。 その物体は、男の象徴であり急所。そこを掴めば、思いのままに男をコントロールすることができる。 もはや、蹴ったり叩いたりするだけでは足りなかった。 この手に掴んで、男を支配してみたい。 アツトとのセックスを経て、ユイはそんな風に思うようになっていた。 そして、アツトとの初体験を終えてから一週間後、ついに行動を起こすことになる。
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