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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。


木村は医務室に運ばれて、診察を受けた。幸いにも、急所が潰れたりしたわけではないということで、それを聞いたマドカは、ホッと胸を撫で下ろした。
しかし木村は、今日は自力で帰ることは難しいということで、同僚に付き添われながら、ジムに用意してある車いすに乗って帰って行った。

「はあ…」

マドカはジムを出た後で、何回目かのため息をついた。
今日一日の彼女に起こった出来事を考えれば、それもしょうがないことだろう。
一体、何が原因でこんなことが起こっているのか。自分は25年間の人生で、男性の股間を直接見たことすらないというのに、水着ごしとはいえ、握りしめてしまったのだ。
もう、何も考えたくない。とにかく家に帰って、ゆっくりと休みたいというのが、マドカの心からの願いだった。

ジムからマドカの自宅までは、徒歩で15分ほどだった。昔からある住宅地の中の一軒家で、そこに両親と暮らしていた。
子供のころから歩きなれた道だったから、多少暗くて人通りが少なくても、不安に思うことはない。そこに、マドカの油断があった。

「きゃっ!!」

小さな公園の前を通り過ぎようとしたときに、突然、背後から抱きしめられた。
叫び声を上げようとしたが、すぐに口を布のようなものでおさえられてしまい、声が出せない。

「ハア…ハア…!」

抱きしめたのは、どうやら男性のようで、マドカの耳元で荒い息をしていた。
マドカは突然のことに驚き、パニックになってしまい、必死で身をよじって男の腕を振りほどこうとした。
しかし男の力は強く、逆に小柄なマドカを抱きかかえるようにして、公園の中に連れ込んでしまった。

「し、静かにしろ…!」

公園の中には小さな公衆トイレがあり、その陰の暗闇の中に、男はマドカを引きずり込んだ。

「暴れなければ、放してやる…!」

小さいが、腹の底から絞り出すような、不気味な鬼気迫る男の声だった。
マドカは心底恐怖してしまい、男の言うことに従うわけではなかったが、その体から力が抜けてしまった。
すると男は、マドカを締め付けていた両腕を放してやり、彼女の目の前に姿を現した。

「…お、俺のこと…覚えてるか…?」

トイレの壁に体を押し付けられ、なおも口を布のようなもので塞がれていたマドカは、涙目になりながら男の顔を見た。
その顔は、帽子とマスクで半分以上覆われていたが、その特徴的な細い目に、見覚えがあった。

「へ…へへ…。そうそう。ずっと、アンタのこと見てたんだからな。忘れないでくれよ」

その男は、大学の図書館で良く見かける学生だった。
毎日のように本を借りに来るその男に、多少の違和感は感じていたものの、まさか自分のことを見ていたとは、マドカは夢にも思わなかった。

「いつも…本に手紙を挟んでたのに…。アンタは気づかなかった…。なんで…なんでだよ!」

血走ったその目は、暗い怒りに満ち溢れていた。
そんなこと、マドカは気がつかなかった。彼女はいつも機械的に、返却された本を元の棚にしまうだけだった。
しかしもし気がついていたとしても、マドカがその手紙に返事をすることはなかっただろうが。

「もういいよ…。アンタも俺のこと、馬鹿にしてるんだろ…。もういいから…。もういいから、全部終わりにするよ!」

まったく支離滅裂な男の言葉だったが、マドカには彼が何をしようとしているのか分かった。
必死でこの場から逃げ出す方法を考えたが、パニックになり、頭が回らない。叫び声を上げようとしても、口は塞がれたままで、何より恐怖で声も出ないし、指一本動かせる気がしなかった。

「アンタが悪いんだからな…。アンタが…」

男はブツブツとつぶやいて、マドカのワイシャツに手をかけた。
その拍子に、マドカが肩にかけていた鞄が地面に落ち、中の荷物がこぼれた。
男はそんなことにも気がつかない様子だったが、マドカがふと目を落とすと、そこにはあのお守りが転がっていた。
女性をかたどった埴輪が、丸い球の上に乗っているあのお守りである。

(……!!)

マドカの頭の中で、何かが弾けた。

(この人も…男なんだから…!)

そう思うのと、体が動くのが、ほとんど同時だった。
男の両脚は、無防備に大きく開かれており、マドカは思い切ってその股間に右膝を振り上げたのだ。

「うっ!?」

男の目が一瞬、大きく見開かれた。
男自身にも、何が起こったのかよく分からない様子だった。その手は今にもマドカのワイシャツを脱がしてしまいそうなところまできていたが、その動きがぴたりと止まる。
まったくの当てずっぽうで振り上げられたマドカの膝は、男の急所にクリーンヒットこそしなかったが、その動きを止めるには十分な威力だった。

(えい! えい!)

マドカは続けて二発、同じように男の股間を蹴り上げた。

「あ…! んん…」

男はあるいは、興奮のあまり、痛みに鈍くなっているのかもしれなかった。
三発目の急所蹴りをくらったとき、ようやくマドカの体から手を離し、自分の股間をかばうような仕草を見せた。
しかし、マドカは油断しなかった。
ダメージが少ないと見るや、少し体を丸め始めた男の股間に素早く右手を伸ばし、ジャージに包まれたその両脚の付け根にある物体を掴んだのである。

「うわあっ!!」

自らの最大の急所を掴まれて、ようやく男は状況を理解した。
彼の股間にある男性の象徴は、少し前までその先端でジャージの前を押し上げていたが、今はその付け根の最も弱い部分が、マドカの右手に掴まれてしまっている。

「んんーっ!!」

マドカは何も考えず、伸ばした右手に当たった小さな丸い物体を、全力で握りしめた。
数時間前、ジムで掴んだ木村の股間の感触は、まだ覚えている。男の反応を見る余裕はなかったが、握りしめるうちに、これが男の最大の急所だと、マドカは確信した。

「ぎゃあっ!! ああっあ…!!」

男はまず、肺の中の空気をすべて吐き出すように、大口を開けて叫んだ。
しかしその後は、痛みに呼吸も忘れてしまったらしい。爪を立てて急所を握るマドカの手を振りほどこうとしても、まったく体が動かなかった。
一方のマドカの握力も、限界が近づいていた。
マドカには男の痛みがどれほどのものか分からなかったが、今自分が握っている小さな玉を離してしまえば、また男が襲い掛かってくると思った。
それならばいっそ、潰してしまわなければいけない。この小さな玉が、男の欲望の源なんだということを、マドカは本能で悟っていた。

「えい! えい! えーい!!」

気合を込めて、三度、全体重をかけるようにして握りしめた。
最後に握りしめたとき、マドカの手の中から、男の丸い玉が消えてなくなったようだった。

「ぐ…ぐえーっ!!」

ヒキガエルのような声を上げて、男の口から細かい泡が噴き出てきた。
その瞬間、痛みで硬直しきっていた男の体から力が抜け、糸が切れた人形のように地面に倒れてしまった。

「ハア…ハア…」

それはほんの数十秒間のことだったが、マドカにとっては途方もなく長い時間に思えた。歯を食いしばり、かつてないほど全力で握りしめたその右手には、もはや感覚がない。
ふと我に返ると、急いで乱れたワイシャツを直し、地面に落ちていた鞄を拾い上げた。そしてその傍らに落ちていたあのお守りを握りしめると、わき目もふらずに家に向かって走って行ったのだった。




自宅に戻ったマドカは両親に男のことを話し、両親はすぐさま警察に通報した。
警察によれば、公園の公衆トイレの陰で男が一人、気絶しており、それはやはりマドカの勤めている大学の学生だった。
男はマドカを襲った事実を認め、逮捕された。その睾丸は潰れてはいなかったものの、その一歩手前の睾丸損傷ということで、しばらく入院したのち、拘置所に移送されるということだった。
大学は男を退学処分にし、マドカの身に危険が及ぶことはなくなった。
マドカの周りに、ようやく日常が戻ってきたのであった。

(……)

しかしマドカは、祖母のくれたあのお守りを見ながら、しみじみと考えるのである。

(あの日、男の人の股間にあんなに関わってなかったら、蹴ろうなんて思わなかったな…。そして、あのときこのお守りがバッグから落ちなければ、思いつかなかったかも…。やっぱり、これって…)

確かにそのお守りは、マドカの命の恩人といっても良かった。そして、マドカが偶然だと思っていた一連の出来事が、もしそうではなかったとしたら…。

(おばあちゃんは金運のお守りって言ってたけど、そうじゃない…。金運…金…金っていったら…)

「中根さん。中根さん!」

考え事に集中して、主任の来島が呼んでいることに気がつかなかった。

「は、はい!」

慌てて返事をして、お守りを握りしめたまま振り向く。

グシャッ!

と、来島の股間に、マドカのお守りがめり込む音がした。
そのお守りの女神は、丸い球の上に乗ったまま、来島の玉も踏みつけたようだった。

「ぐ…あ…!」

再び来島は、男の最大の苦しみに喘ぐことになる。

「あ…! 主任! また…。ご、ごめんなさい…!」

マドカの必死に謝る声も、来島には届かない様子だった。



終わり。


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[2014/07/08 Tue] // # [ 編集 ] @
復讐ものを書いてほしいです
[2014/07/16 Wed] URL // #- [ 編集 ] @
月下会の続きはないんですか?
水着姿で男子水泳部を成敗する話を書いてほしいです
[2014/07/22 Tue] URL // #- [ 編集 ] @
大学の野球部のエースがライバルチームのマネージャーから金玉を攻撃される話を書いてほしいです
[2014/07/27 Sun] URL // #- [ 編集 ] @

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