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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。



「次は、松岡君ね。アナタ、いつもいい点をとってるのに、今回はどうしたの?」

「あ、す、すいません。今回は、ちょっと部活が忙しくて…」

松岡は必死で弁解する。

「そう。部活動もいいけど、勉強の方も頑張らないとダメよ。わかった?」

そう言って、ユキエは松岡の股間をアクリル定規で軽く叩き上げた。
力にしてみれば、ほんの肩を叩く程度のものだった。

「うっ!」

それでも松岡の金玉には、ズン、と重たい衝撃が走った。
松岡はしゃがみこむまでにはいたらなかったが、下腹をおさえて、背中を丸めてしまう。股間を直接おさえる事は、やはりクラス中の女子が見ている手前、恥ずかしかった。

「はい。席に戻っていいわよ」

「は、はい…」

たったそれだけの衝撃で、顔を歪めて苦しむ松岡の姿に、女子たちは再び爆笑した。

「なに? たったアレだけでも痛いの? ウソだー!」

「松岡くーん、大丈夫? 大事なタマタマ、潰れてなーい?」

「潰れちゃうんだ? アレだけで? ウケる!」

女子たちはいかにも他人事のように、言い放題に言うが、当の松岡は反論する元気もなく、席に戻っても下腹をおさえて、じっと痛みに耐えていた。

「次は岸田君ね。アナタは前回も赤点だったわね。ちゃんと勉強するって言ってたけど、あれはウソだったのかしら?」

冷静な口調で追及されると岸田は返す言葉もなかった。

「しかも、今回はダントツの最下位よ。こんなこと言いたくはないけど、アナタ一人でこのクラスの平均点を相当下げているのよ。クラスのみんなに悪いとは思わないの?」

ユキエは岸田の答案を手に持って、本人の顔の前に突きつけた。

「いや…あの…すいません…」

岸田はクラスでも目立たない、小柄な男子だったが、小さな体をさらに縮こまらせて、頭を下げた。
ユキエはそんな岸田の姿を見て、小さくため息をついた。

「もうアナタには先生の言うことは通じないみたいだから、今回はクラスのみんなからの罰を受けてもらうことにします。それが、クラスの平均点を一人で下げてしまったことに対する責任ですから」

岸田はユキエの言葉の意味が分からず、頭を上げた。
するとユキエは、突然後ろを振り返って、生徒に語りかけた。

「今からみなさんに協力してもらって、岸田君に罰を与えます。先生がいつも使っているこの定規を渡しますから、これで一人一人、岸田君を叩いてあげて下さい。どこでも、好きな所をね。あ、顔はやめてあげてね。危ないから」

クラスが一気にざわめいた。
しかしながら、女子と男子の反応の仕方は真逆で、女子は好奇心に溢れた目で岸田を見ていたが、男子たちはみな同情の視線を向けた。

「じゃあ、こっちの席からね。はい」

ユキエは淡々とした様子で、一番前の席に座っていた女子に立つように促し、自分のアクリル定規をわたした。

「えー。どこでもいいんですか、先生?」

定規をわたされた女子は、嬉々とした様子で岸田の前に立ち、アクリル定規を右手に構えた。

「ええ、いいわ。でも、あんまり強くしたらダメよ。手加減しないさいね」

はーい、と女子生徒は返事をして、当然のように岸田の股間に目を向けた。
岸田は、ここまでのあっという間の展開に動揺しながらも、ユキエに意見する勇気もなかった。ただ不安そうな顔で、立ちつくしてしまっている。

「あ、あの…」

「一回、やってみたかったんだー。岸田、いくよ」

岸田が何か言いそうになるのを遮って、女子生徒は岸田の股間にアクリル定規を下から叩きつけた。
ピシャッっと音がして、岸田のズボンにアクリル定規がめり込む。

「はぐっ!」

岸田は瞬間的に、股間をおさえて前かがみになってしまった。
股間から、男の痛みが湧き上がってくる。

「アハハ! マジで? これだけで痛いの? ウケるー」

岸田の金玉を叩き上げた女子生徒は、苦しむ様子を嬉しそうに見つめた。

「全然痛くないじゃん、こんなの。ホラ」

ビシッ、ビシッ、と、女子生徒は自分のスカートの股間にアクリル定規を叩きつけて見せる。もちろん女子には金玉などついていないから、少し衝撃がある程度で、まったく痛みなどない。
岸田はそんな女子の様子を、苦痛に顔を歪めながら見ていることしかできなかった。

「はい、次の人」

ユキエは平然と、次の生徒を呼んだ。
次の生徒も女子で、もちろん岸田の金玉を攻撃するつもりでいるらしかった。

「アンタ、甘いって。アタシのやり方、見てなよ」

定規をわたされる時、その女子は得意げな顔で言った。

「いくよー。岸田、起きてよ」

女子生徒はやる気まんまんの表情で、定規をかまえる。
まだ金玉の痛みがひかず、前かがみになっていた岸田は、チラッとユキエの顔を見て、苦しみながらも上体を起こした。

「手、どけてよ」

股間をおさえる手を指されると、岸田は痛みに汗をかきながら、乞うような目で女子生徒を見た。

「あの…もう、ここは…」

「え? だって、どこでもいいってルールだし。アタシもキンタマ叩きたいもん」

「でも、もう痛くて…」

女子生徒は不満げに言うが、岸田はなかなか手をどけようとはしない。

「岸田君、手をどけなさい」

ユキエが冷たく言い放つと、岸田は観念したように股間をおさえる手をどけて、身構えた。
それを見つめるクラスの男子達は、発言こそしなかったが、自分のことのように渋い表情を浮かべていた。

「じゃ、いくよ。えい!」

女子生徒は右手に持ったアクリル定規を振りかぶると、股間に打ち付ける寸前でくるりと手首を返し、定規の側面で岸田の金玉を叩き上げた。

「えうっ!」

岸田にとっては、まったくしなりのない、堅いアクリルの棒で金玉を叩かれたのと同じだった。しかも定規の側面は数ミリしかなく、力が集中する。

「くくく…」

運悪くピンポイントで金玉に当てられてしまった岸田は、すぐさまその場に座り込んでしまい、苦しみに肩を震わせることになった。

「やった! やっぱりこっちの方が痛いでしょ? ねえ? どうなの?」

女子生徒ははしゃぎながら、岸田の顔を覗き込む。
岸田はもちろん、答えることなどできるわけがない。

「ちょっとアナタ、それは反則よ。危なくないようにしなさいって言ったでしょ。」

ユキエははしゃぐ女子生徒から、定規を取りあげた。

「岸田君、大丈夫?」

ユキエが声をかけたが、岸田は青い顔をしてうずくまり、首を動かすことすらできなかった。

「あーあ。岸田のキンタマ、潰しちゃった。カワイソー」

「明日から、女子の制服着てこないとねー」

苦しむ岸田を見ても、女子達はおどけて笑っていた。
それにひきかえ、男子達は岸田の様子を直視することすらできず、ただうつむいて、そのゾッとするような痛みを想像しないようにしていた。

「じゃあ、今日はこれで終わりにしましょう。またひどい点を取ったら、同じことになりますからね。岸田君?」

「は、は…い…」

岸田は絞り出すような声で、うなずいた。

「はい。じゃあ、授業に入りましょうか。岸田君、席に戻りなさい」

金玉にピンポイントの打撃を加えられた男が、ものの数分で立ち上がれるほどに回復できるはずもないのだが、ユキエは女性特有の無情さで、岸田に言ってのけた。
岸田はよろよろと立ち上がり、両手でしっかりと股間をおさえたまま、背中を丸めて自分の席まで歩いていった。

「岸田、やったね。明日から女の子じゃん!」

「女子トイレに入ってもいいよ。見つけたら、キンタマ蹴るけどね!」

岸田の情けない姿に、女子達は爆笑した。
ユキエ自身はあくまで教師として、生徒に当然の罰を与えているつもりだった。しかし、いつの間にかこの罰は男子達にとっては恐怖、女子たちにとっては楽しみの時間になってしまっていた。


テストの返却が終わると、ユキエはさらにテスト問題の解説と復習を始めた。その間も、金玉を叩かれた男子達の痛みが引くことはなく、はっきり言って上の空だった。
金玉の痛みは、最初は体の自由を奪うような激しく鋭い痛みだが、その後もずっと、重苦しい痺れのような痛みが下腹部全体にくすぶり続ける。少なくとも、この授業の間中は、集中できるような体調にはならないだろう。
この調子では、また赤点をとってしまうような悪循環だったが、ユキエや他の女子生徒たちにそれが理解できるはずもなく、金玉のことなどすっかり忘れて、淡々と授業を進めていたのだった。



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