この高校の1年C組の担任は27歳の女性教師、村田ユキエだったが、一部の生徒からはかなり恐れられている存在だった。 担当は数学だったが、その時間が来るたびに、男子生徒たちは緊張した顔つきになる。 特に今日は、先日行われた抜き打ちテストの答案を返す日だったが、これこそが最も恐ろしい時間だったのだ。
「それでは前回行った、実力テストの答案を返します。今回の平均点は、61点でした。いつものように、点数の高かった順に返していきます。佐倉さん。……林さん。……井口君」
ユキエはいつものように淡々とした様子で、テストの答案を返していく。 名前を呼ばれた生徒たちは、次々と答案を受け取りに教壇のユキエの元にむかった。
「……原口さん。……荒田さん。……上川さん」
名前を呼ばれて立ち上がるのは、女子の方が圧倒的に多かった。 もともと、この学校は女子生徒の数の方がかなり多い人数構成になっているのだが、このクラスは特に男子生徒が少ない。 選択科目のためとはいえ、女子が28人に対して男子は7人と、極端な女子クラスになっていた。
「……田中さん。はい、ここからは30点以下の人たちです。呼ばれたら、黒板の前に整列しなさい」
ユキエは毅然とした表情で指示した。 この学校では、平均点の半分以下は赤点と決まっている。赤点の生徒には何らかの罰が与えられるのは、学校の通例だった。
「橋本君。…山田さん。…松岡君。…岸田君」
ユキエに名前を呼ばれたのは、男子が3人と女子が1人だった。 唯一の女子である山田ミキは、名前を呼ばれると、バツが悪そうな顔で立ち上がり、黒板の前に並んだ。 一方、男子3人は、名前を呼ばれると一様に真っ青な顔をして、いかにも弱々しい返事をして、恐る恐る黒板の前に並ぶのだった。
「さて。アナタ達は、平均点の半分も取れなかったわけね。どういうことかしら?」
黒板の前に、横一列に並ぶ生徒たちを見つめて、ユキエは問いただした。その口調に怒りはないが、冷静な追求による圧力のようなものがある。 ユキエの身長は165センチほど。スポーツの経験でもあるのか、引き締まった良い体格をしていた。濃紺のスーツをきっちりと着こなし、いつも糊のきいたワイシャツを着ている。少し短めのタイトスカートからは、ストッキングに包まれた太ももが長く伸びていて、キュッと締まったヒップラインが、いかにも官能的だった。 教師にしておくにはもったいないほどの整った顔には、それを隠すように、真っ黒で大きなセルフレームの眼鏡をかけている。
「山田さん、どういうこと? 今回は難しかったかしら?」
ユキエはその手に、アクリル製の大きな定規を持っていた。 数学の授業では図形を書いたりするのに必須なもので、ユキエは黒板を指し示す指示棒としても使用している。 その定規を、片手でパシパシと鞭のようにしならせながら、生徒に問いかける。
「すいません。ちょっと、難しかったです」
ミキは謝りながらも、ちょっとはにかんで笑った。 その姿に、クラスの女子生徒たちから失笑が漏れる。 しかし男子生徒たちは、そんな雰囲気に呑まれることなく、赤点で整列している3人も、席に座った残りの生徒も、みな緊張した面持ちだった。
「ふざけないの。次はもっと頑張りなさい。はい!」
ユキエはミキの背後にまわり、お尻をアクリル定規で叩いた。 ピシャッと大きな音がして、ミキのお尻に衝撃が走る。
「いったーい! 先生、手加減してよー! イタタタ…」
ミキは体をのけぞらせて、打たれたばかりのお尻をおさえて痛がった。 クラスの女子たちはその様子を見て、どっと笑った。
「これでも、手加減してます。はい、次は、橋本君ね」
山田ミキはお尻をさすりながら席に戻り、次にユキエは、橋本の前に立った。
「は、はい。先生、すいませんでした。反省してます!」
橋本は名前を呼ばれると背筋を伸ばし、ユキエの追求を待たずに、自発的に頭を下げた。
「そう。反省するのはいいことだわ。でも橋本君は、この間のテストでもそう言ってたわね? ちゃんと、勉強したの?」
アクリル定規をしならせながら、冷淡な調子で言う。
「は、はい。それは…」
橋本はつい、口ごもってしまう。
「前回も赤点で、今回もっていうのは、ちょっと反省が足りないみたいね。口で言っても分からないようなら、こうするしかないわ」
「先生、すいません、すいません!」
必死に謝る橋本を無視して、ユキエはアクリル定規をしならせ、橋本の股間を下から叩き上げた。
パシィン!
と、大きな音がして、橋本の金玉はアクリル定規に叩き上げられた。
「はうっ!」
電撃のような衝撃が突き抜け、橋本は股間を両手でおさえる。 直後に重たい痛みが波のように下腹部全体に広がっていき、橋本の膝から力が抜けた。 橋本はたくさんの女子たちが見つめる前で、金玉をおさえてしゃがみこんでしまった。 先ほどのミキのときよりも大きな笑いが、クラスの女子たちを包む。
「聞いた? はうっだって!」
「超ウケる! てか、毎回、痛がりすぎだから」
「あれ、マジで痛いの? 演技じゃなくて?」
女の子たちは、お互いに顔を見合わせて笑った。 一方男子達は、沈痛な面持ちで、痛みに震える橋本を見つめていた。
「静かにしなさい! 橋本君、席に戻っていいわよ。次も赤点をとったら、もっと強く叩きますからね」
ユキエは笑い転げる女子たちの雰囲気に呑まれることなく、毅然とした調子で指示した。
「は、はい…」
橋本は青い顔をして、立ちあがると、前かがみになって股間をおさえたまま、歩き出した。 女子たちはいったん静まるかと思われたが、そんな橋本の姿を見て、さらに爆笑の渦に包まれた。
「見て、あの歩き方! おもしろーい!」
「痛いよ、絶対痛いんだ。アハハハ!」
女の子たちは指をさして大笑いしていたが、男子達の表情は堅く、特にこれから罰を受けなければいけない2人の表情は、曇っていた。
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