その後、ユウキは2か月間で3回のテストを受けた。 アカリにテストを受けたい事を伝えると、アカリはいつも無表情にうなずいて、放課後の図書館に呼び出すのだった。 アカリは図書委員を務めていて、大抵、図書室に居残っている。そしてほとんど毎日、戸締りをして帰るのだ。
ユウキは誰もいない図書室でアカリと二人きりになり、テストを受ける。 アカリは前に言った通り、2回目のテストからは時間をかけてユウキを痛めつけた。 ブリーフ一枚になったユウキの体に、アカリはどこで覚えたのか、正確な打撃を加えていく。 脛に響く、鞭のようなローキック。脇腹への的確なパンチ。脳を揺らす、顎への打撃。いずれも素人とは思えない、熟練した技だった。 ユウキは中学のころからバスケットに打ち込んではいたが、ケンカや格闘技の経験はほとんどなく、そういった打撃には耐性がなかった。
そこでユウキは、アカリの攻撃に耐えうる体を作るために、部活動以外で密かに筋力トレーニングを始めていたのである。その甲斐あって、成長期のユウキの体は徐々に筋肉の鎧を身につけるようになっていった。 しかし、そんな努力も一撃で空しくするのが、金的攻撃だった。 最初のテストを含めて、今までに3回、ユウキはアカリの金的攻撃の前にひざを屈している。どれだけ筋肉をつけようとも、絶対に鍛えられない急所、それが男の急所だった。 そして今日再び、ユウキはテストを受けるためにきたのである。
「フフフ…。あと8回かぁ。今日は、どこを殴ってほしいのかしら?」
楽しそうに笑うアカリ。 ユウキはそんなアカリの様子に、少しゾッとするものを感じたが、テストの回数を重ねるにつれ、それにも慣れてきた。 いや、最初からアカリのそういう顔を見たくて、テストを繰り返しているのかもしれない。 ユウキがそんなことを考えていると、攻撃が始まった。
ドスッ!
と、ユウキの脇腹に、アカリの右足がめり込んだ。 アカリはまるでキックボクサーのような、しなやかな蹴りを繰り出す。 ひざから下のスナップのきかせ方が、とても素人とは思えなかった。
「うっ!」
ユウキは再び、息を詰まらせて、脇腹をおさえた。
「今日は蹴りを中心に、いきましょうか」
言いながら、アカリは右足でローキックを放つ。 ユウキの左ひざの裏に、ピシャリ! と音を立てて決まった。 ひざが衝撃で曲がりそうになるのを、ぐっとこらえた。
「あと6回」
言いながら、アカリは回りこんで、ユウキの脇腹にひざ蹴りを打ち込んだ。
「くっ!」
ユウキはアカリの連続攻撃に、息をつまらせる。 ひざ蹴りのせいで、アカリの短めのスカートがひらりとめくり上がり、ユウキの目はつい、アカリの白い太ももに行ってしまった。
「フフ…。どこ見てるの?」
アカリはユウキの反応を楽しむかのように、今度は逆の足でひざ蹴りをした。 またもスカートがめくり上がり、アカリの太ももが付け根の間際までのぞけた。
「あっ! ぐ…」
ユウキはアカリのひざ蹴りに苦しみながらも、つややかに躍動するアカリの美しい脚から目が離せない。
「あと4回ね。頑張って、岡田君」
アカリはほほ笑みながら言った。
「そうだ。こんなのはどうかしら?」
ユウキの正面にかまえていたアカリは、突然、右足を大きく真上に上げた。 まるでバレリーナのように、アカリの脚は垂直に上がり、ユウキの目にはアカリのスカートの中が飛び込んできた。高校生に似つかわしくない、赤いレースのパンティーだった。薄い生地の向こうに、うっすらとアカリの恥丘が盛り上がるところまで、ユウキの目にははっきりと見えた。
「えい!」
次の瞬間、ドスっという鈍い音と共に、ユウキの鎖骨にアカリの踵が突き刺さった。 うっと唸って、体をよろめかせるユウキ。 いわゆる踵落としだった。これは初めて経験する攻撃だった。
「やったあ。成功したわ。案外難しいのよ、これ」
珍しく、アカリがはしゃいだ声を上げた。 ユウキの鎖骨には、骨の芯まで響く鈍痛があったが、なんとかひざをつかずに、肩をおさえる程度で済んだ。 まさかアカリが踵落としまでできるとは、夢にも思わなかった。今までのトレーニングがなければ、到底耐えられるものではなかったと、ユウキは実感していた。
「もう一回!」
アカリは苦しむユウキをよそに、今度は逆の左足を高々と上げ、再び踵落としを放とうとした。 ユウキは先ほど打たれた肩をおさえて前かがみになっていたが、目だけはまた、アカリのスカートの中に釘づけになる。
「えい!」
今度はユウキの側頭部に、アカリの踵が振り下ろされた。
「うっ!」
と呻いて、ユウキは頭をおさえるが、ひざをつくまでには至らなかった。 これもまた、筋力トレーニングの成果と、今までアカリの試験に付き合ってきた結果、痛みに対するかなりの耐久性が知らぬ間についてきているらしかった。
「すごい。こんなに蹴っても倒れないなんて、新記録じゃないかしら?」
アカリはユウキの顔を見下ろしながら、感嘆の声を上げた。 そう言われると、確かにアカリの攻撃を8回まで耐えたことは、今までになかったかもしれない。
「う、うん。まあ…」
体のあちこちは痛んでいたが、ユウキは自分の肉体の耐久性を自分でも誇りたいような気持になった。 実際、アカリの攻撃は素人が簡単に耐えられるようなものではなく、下手をすれば一撃でKOされてしまいそうなものばかりだった。
「鍛えてきた結果ね。すごい筋肉だもの。触ってもいい?」
ユウキの体を改めて正面から眺めていたアカリは、その胸板にそっと手を伸ばした。
「あ、うん…」
ユウキは驚いたが、ほとんど反射的にうなずいた。
|