記者 本日は、当空手道場の関東支部で、見事100人抜き組手を達成した、橘サヤカさんにお話をうかがいたいと思います。サヤカさん、よろしくお願いします。
サヤカ よろしくお願いします。
記者 サヤカさんは、先月の初めに、100人抜き組手を達成したそうですが。これが初めての挑戦だったんですか?
サヤカ そうですね。ウチの道場で、昔はそういうことをしていたということを知って、私もやってみたいと思ったのが、1年前でした。それから、稽古を積んで挑戦してみたんですが、まさか達成できるとは思っていなくて。自分でも驚いています。
記者 記録によれば、100人抜き組手を達成したのは、過去に5人しかいないそうですね。しかもそれらはすべて男性によるもので、女性で達成したのは、サヤカさんが初めてだということです。
サヤカ そうみたいですね。ただ、挑戦してみて思ったのは、男性とか女性とかは、あまり関係がないということです。今までは、女性が挑戦しづらい空気というか、伝統があっただけなのかな、と。今後は、私も周りの女性にもチャレンジを勧めてみようと思っています。
記者 そうなんですね。しかし、組手の相手は、男性が多かったんですか?
サヤカ そうですね。ほとんどが男性の方だったと思います。ただ、私にとってはそれは全然ハンデとかではないので。思いっきりいかせてもらいました。
記者 なるほど。確かに記録によれば、サヤカさんの決まり手は、ほとんどが金的によるものだったんですね。これは、相手が男性ならではというか。確かに全然ハンデではないですね(笑)。
サヤカ そうなんです。金的は、決まれば一番スピーディーに組手を終わらせることができるので、体力も温存できて、助かりました(笑)。
記者 相手の男性たちにとっては、たまらなかったでしょうね(笑)。
サヤカ だと思います。組手が終わった後、私と相手の女性たちはすぐに帰って祝勝会をしたんですけど。男性たちのほとんどは、ずっと道場に残ってたみたいで。帰ったのは、深夜になってからだって聞きました(笑)。
記者 サヤカさんには、得意な技などはあるんでしょうか?
サヤカ えーと、やっぱり、金的蹴りですかね。金的蹴りは、空手を始めた小学生のころから、ずっと練習してきましたし。今では、どんな相手にでも金的をきめられる自信があります。あ、女性には無理です。どんな男性にもですね(笑)。
記者 なるほど。特に、どんな形での金的蹴りが得意なんですか?
サヤカ はい。一番得意なのは、右前蹴りですね。相手が踏み込んできたところにタイミングを合わせて蹴るようにしています。
記者 素晴らしい。それが決まったときには、やはり組手に勝てますか?
サヤカ そうですね。うまく決まったときは、相手はダウンしてしまって、しばらく立ち上がれなくなりますね。少しずれて当たってしまっても、やっぱり大きなダメージを受けるみたいです。
記者 さすがですね。何か、コツのようなものはあるんでしょうか?
サヤカ そうですね。金的を蹴るときは、相手に悟られないよう、最小限の動きで蹴ることを心がけています。あまり力まずに、とにかくうまく当てることを考えています。金的は、当たれば倒れますから(笑)。
記者 なるほど。男性の方にとっては、背筋の寒くなるような話かもしれませんね(笑)。
サヤカ そうですね。ウチの道場では、私があんまり金的蹴りを指導するので、女の子たちがうまくなりすぎて、男性たちからクレームがでてしまうくらいなんですよ(笑)。
記者 そうなんですか。それは、困った話ですね。ちゃんと、ルールに則ってやっていることなのに。
サヤカ そうなんです。私たちはただ、そこにある急所を狙って攻撃しているだけなのに、金的は卑怯だとか、やめてくれとか言われてしまうんですよ。でも女性たちは、全然気にしてませんけどね(笑)。
記者 そうですね。気にする必要はないと思います。金的の問題は、男性たちだけの都合であって、我々女性にとっては、関係ありませんからね。
サヤカ そうそう。そんなに痛いなら、しっかり守ればいいだけなんです。きちんと防御をしていないから、蹴られてしまうのであって、自業自得ですよね(笑)。
記者 100人組手の際にも、そういった男性が多かったですか?
サヤカ そうですね。私とよく練習をする男性は違いましたけど、初めて組手をする男性などは、金的の防御が甘かったと思います。そういう人には、この機会にきちんと金的の重要性を知ってもらおうと思って、きつめに蹴ったりもしてました(笑)。
記者 そうなんですか? その時の、相手の反応は?
サヤカ それはもう、痛かったみたいで(笑)。うずくまって、その場から動けなくなる人もいて、次の組手をするために、どかすのが大変でした(笑)。
記者 なるほど。その男性も、今後は金的の防御の必要性を感じてくれるといいですね。
サヤカ そうですね。金的は、狙いやすくてとても効き目があって、これ以上ないくらいの急所だと思うんですが、そのわりには守りをおろそかにしている男性が多いと思います。
記者 それは、なぜでしょうか。
サヤカ 男性同士の組手では、まず蹴ることがないからかもしれません。男性は金的を蹴るのはよくない、というような意識がありますから。そこを蹴れば勝てるというがら空きの急所を見逃すなんて、理解できませんけどね。
記者 それは私たち女性には、理解できませんね。男性特有の暗黙のルールなんでしょうか。
サヤカ そうかもしれません。100人組手のときにも、私が次々と金的蹴りで勝っているのを、意外そうに見ている男性が多かったですから。金的を蹴っていいんだという意識が、今後は広まっていくといいですね。
記者 ちなみに、今まで一番印象に残った組手は、どんなものだったんですか?
サヤカ そうですね。以前、私が高校生のころに、それまでまったく勝てなかった先輩がいたんですが、その人に初めて勝った時が印象に残っています。そのときも、もちろん金的蹴りでした。
記者 どういう勝ち方だったんですか?
サヤカ 先輩の攻撃をかわしながら、ずっと金的を狙っていて、かろうじて当たったんです。軽い感じだったんですけど。そうしたら、先輩はちょっと顔をしかめるくらいだったので、おや、これはあまり効いていないぞ、と思ったんです。
記者 なるほど。うまく当たらなかったんですね。
サヤカ でも、金的って後からくるっていうじゃないですか。当たり所によって、ちょっとタイムラグというか、間があるって。確かにその先輩の動きが、ちょっと止まったように見えたんです。後で考えると、やっぱりあれは効いてたんだと思います。
記者 そうですか。それで、そのままダウンしたんですか?
サヤカ いいえ。そのときにはすでに、体が勝手に動いてしまっていて(笑)。もう一回、蹴っちゃいました。今度は思いっきりうまく入っちゃって。先輩の体が浮いちゃうくらいに(笑)。
記者 なるほど。それは、日ごろの練習の成果ですね。でも、その先輩は災難でしたね(笑)。
サヤカ だって、しょうがないですよね。目の前で動きが止まっちゃってるんですから。武道家の本能っていうか、女の本能がでちゃいました(笑)。後で女性の先輩に話したら、それは「女の二度蹴り」といって、女性ならではの技だと教えてもらいました。男性だったら、かわいそうで、とても二回は蹴れないって(笑)。
記者 痛かったんじゃないですか、先輩は?
サヤカ だと思います。その後、まったく動かなくなってしまって、しばらく医務室で休んでましたから。金的が腫れてしまって、道着が脱げなくなってしまったらしいですよ(笑)。
記者 なるほど。サヤカさんと組手をするときは、下段のガードを固めなくてはいけませんね。
サヤカ 男性限定です。女性には金的はしませんよ(笑)。
記者 本日はどうも、ありがとうございました。100人抜き組手の達成、改めておめでとうございます。
サヤカ ありがとうございます。これからも、頑張ります。
終わり。
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