「やっぱりさあ、ナマで蹴らないと、掴めないね」
「そうだね。いい機会だし、ナマで蹴ってみようか」
ナマで蹴るとはどういうことなのか、男たちはなんとなく察しがついたが、想像するだけで恐ろしく、それを口に出したくはなかった。
「ナマって、なんですか? このカップ着けないで蹴るってことですか?」
ナナミが無邪気な様子で言った。 男たちは密かに、息をのんで返答を待つ。
「そう。カップなしでね」
「ついでにパンツも脱ぐか、アンタ達」
「ああ、そうだね。その方が、タマの動きが分かりやすくない?」
二人は平然と言い放ったが、男たちの顔面からは血の気が引いていた。
「そ、それは…」
「ん?」
シンジが何か言いかけようとしたが、チヒロがにっこりと微笑み返したので、反論するわけにもいかず、うつむいて、ファールカップを外し始めた。
「えー! アタシ、明るい所でアソコ見るのって、初めてかもー!」
ナナミは一見、恥ずかしそうに、しかしどこかうれしそうに、男たちの様子を見ていた。 彼らはためらいながらもファールカップを外し、それぞれパンツに手をかけた。
「ほら、さっさと脱ぎな。別に減るもんじゃないだろ」
「私たちだって、別にアンタ達の裸を見たいわけじゃないんだからね。タマの動きがよくわかるように、脱いでもらうだけだから」
チヒロ達は冷たく言い放った。 男たちはやがて決心したように、三人同時にパンツを引き下ろすと、すぐに両手でイチモツを隠した状態で、床の上に立った。
「きゃー! へんたーい!」
ナナミはおどけて言うが、特に目を背けることもなかった。
「ちょっと、なんで隠してんの? 手、どけろよ!」
チヒロが厳しい調子で言うと、三人は一斉に手を股間から離した。 三人のペニスと金玉が、女の子たちの前に露わになる。
「ふーん。なかなか、いいモン持ってんじゃん。ウチの彼氏よりでかいかな」
「へー。シンジ君のチンチンって、こんなんなんだあ。皮が余ってるけど、コレ、包茎っていうの?」
チヒロとナナミは、三人の男たちのイチモツを、しげしげと眺める。 三人は恥ずかしさのあまり、質問に答える事はできなかった。
「ちょっと、脚も開いてよ」
リオがコウタにそう言うと、コウタは閉じていた脚を少し開いて見せた。 コウタの金玉は、脚の間にブラリと垂れ下がった状態になる。
「ほら。構えると、こういう状態になるわけでしょ。袋がダランとして」
「菊地君の道着の中は、こうなってるわけだ」
チヒロは笑いながら、コウタの金玉を眺める。
「ここに下から当てると…」
言いながら、リオはコウタの金玉に、真下から裏拳を軽く当てた。 パチン、と音がして、コウタの金玉は上に弾かれる。
「うっ!」
と、コウタは呻いたが、そんなことはリオはお構いなしだった。
「ほら、見た? タマがさ、袋の中で逃げたでしょ? だから、あんまりダメージがないんだよ」
「ああ、そっかあ。そういう仕組みになってるんだあ。便利ですねえ、金玉って」
あんまりダメージがないとは、コウタはまったく思わなかったが、女の子たちはかなり納得した様子だった。
「そういうことだよね。一応、急所だから。簡単には潰れないようになってるんだよ」
「これをうまく足に乗せるようにしたら、ダメージが大きいんじゃない? 当たった瞬間に、クッとスナップを利かせるんだよ。タマを追いかけるように」
「だから、足首を柔らかくするんですね」
「そう。で、この袋の裏にさ…。ちょっと、これ、邪魔だなあ」
リオはいかにも研究熱心な様子でコウタの金玉をいじっていたが、やがて金玉袋の前に垂れ下がっているペニスが邪魔になってきた。
「アンタさあ、これ、どうにかなんないの?」
「どうにかって…。すいません…」
コウタは謝るしかなかった。 するとナナミが、何か思いついたように更衣室に走って、すぐに戻ってきた。 その手には、ふだんの稽古で使っているテーピングがある。
「先輩、これでチンチンを貼っちゃえばどうですか?」
「いいじゃん。冴えてるね、ナナミ」
「へへー。じゃあ、失礼しまーす」
「え…!」
ナナミはためらいもせずにシンジの股間に手を伸ばし、ペニスを握って下腹部にあてると、その上からテーピングで張り付けてしまった。 あまりの手際の良さに、シンジは抵抗する間もなかった。
「おっきくなるといけないから、しっかり貼っとこう」
独り言のように言うと、さらにベタベタとテーピングを張り付けて、シンジのペニスは完全に見えなくなってしまった。
「ナナミ、終わったら、こっちにも貸して」
「私もやるわ」
チヒロとナナミも、それぞれヒロユキとコウタのペニスを下腹部に張り付け、三人の股間には、玉袋だけがブラブラと揺れている、滑稽な姿になってしまった。
「プ…! こうなると、だっさいなあ、男って」
「なんか、お股にポケットがついてるみたいですね」
女の子たちは、思わず笑い合った。 男たちはさすがに自分たちの姿を情けなく思ったが、それ以上に今から始まる防具なしの金的蹴りの稽古に恐怖を感じていた。 何も守るものの無い、むき出しの金玉を、彼らはこれ以上なく心細く思った。
「こうなると…。アレ、試してみようかな」
リオは三人の金玉をジッと見つめ、何事か思いついたようだった。
「アレって?」
「ほら。前に一度、菊地君に当てそうになったやつ。横からの…」
「ああ、アレね。そうだね。今なら、金玉がよく見えるしね。やってみれば?」
リオはうなずくと、自分が股間をテーピングしたコウタの前に構えた。 コウタは素っ裸で、真剣な表情で自分の股間を見つめる女の子の前に立つ。
「あ、あの…」
「アンタ、ちょっと構えてみてくれない? 私と同じように」
リオはコウタを無視して、指示を出した、 コウタは言われるままに、リオがしているように右足を後ろに引いて体を斜めにし、腰を落とした。 いかにも不器用だったが、一応、拳法の構えらしくなった。
「うん。それでいいわ。そのまま、動かないでね」
コウタはごくりと唾を飲んだ。 それを見ている他の男たちも、緊張した様子だった。
「えいっ!」
リオは数回、軽やかにフットワークを踏むと、一気にコウタとの間合いをつめて、その股間に鞭のようにしなる左の回し蹴りを放った。
べチンッ!
と音がして、コウタのむき出しになった金玉袋は、リオの足の甲の直撃を受ける。 その蹴りはコウタの金玉を真横から打ちつけ、激しい勢いのまま、コウタの内ももに金玉袋がぶつけられた。そして袋の中で二つの睾丸が互いにぶつかり合い、その形を変形させることになってしまった。
「くあっ!」
「入った!」
リオが足を戻すのとほぼ同時に、コウタは腰を引いて、そのまま床の上にべちゃりとうずくまってしまった。
「あうぅぅ…」
正座のような姿勢になり、背中を丸めて、両手で金玉をおさえる。 これまでとは比べ物にならない痛みと苦しみが、コウタの全身を襲っていた。
「すごい! 今のどうなったんですか、先輩?」
コウタのただならぬ苦しみ様を見たナナミが、リオにたずねた。
「今のは、タマを真横から蹴ったの。こうすると、袋の中でタマとタマがぶつかり合って、二倍痛いんじゃないかと思ったんだけど」
コウタはうずくまったまま、体を硬直させて震えている。 全身から異常なまでに汗が噴き出して、床を濡らしていた。
「予想以上にきいたみたいね。前に菊地君に決めたときも、こんな感じだったの?」
「うん。あのときは動いてたから、今ほどきれいに入らなかったけど。やっぱりうまく入れば、相当きくみたいね」
リオは自分の実験の結果に満足しているようだった。
「コウタくーん。大丈夫? 潰れてなーい?」
ナナミは無邪気な様子で、うずくまっているコウタの顔を覗き込んだ。 コウタはそれに答える様子もなく、口を半開きにしてよだれを流し、呼吸すらままならない様子だった。
「えー。そんなに痛いの? 頑張って! 痛いの、痛いの、飛んでけー!」
ナナミはコウタの腰のあたりをさすってやった。
「潰れてはいないと思うけど…。ちょっと見せて」
リオはそう言うと、うずくまっているコウタの尻の方にまわり、おもむろに股間に手を突っ込んだ。 コウタが必死に手のひらで包み込み、守っている金玉を、リオはギュッと握ってみた。
「がぁうぅ!」
コウタは電撃に打たれたように、背中を伸ばして顔を天井に向けた。 リオはそんな様子を見ても、表情を変えずにコウタの金玉を手の中で転がしている。
「ああ。大丈夫、二つともあるよ」
「は、離して…」
コウタはやっと、絞り出すように言った。
「はいはい。ったく、大げさだなあ」
リオはため息とともに、コウタの金玉から手を離した。 コウタはがっくりと力を抜いて、再びうなだれて動かなくなってしまった。
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