ある日の放課後。 高校2年生の久野カズシは、図書室から出てきたところを呼び止められた。 呼び止めたのは、同じクラスにいる女子生徒の原田エリカだった。
「おい久野、ちょっと来てよ」
カズシは彼女と同じクラスとはいえ、ほとんど話したことがなかった。 しかし気の弱いカズシは、クラスでも問題児とみなされているエリカにそう言われると、断ることができなかった。
「な、何? 原田さん?」
歩きながらそう訪ねても、エリカは返事さえしなかった。ただ不機嫌そうな顔をしながら、ガムを噛んでいる。 真面目でおとなしいカズシに比べて、エリカはまさしく問題児だった。 いつもだらしなく制服を着崩して、スカートはこれ以上ないくらい短くしている。その上ルックスは、モデルかと思うほどに整っていて、実際何かのファッション雑誌に出演したこともあるという噂もあった。
エリカの行先は、二人のクラスである2年2組の教室だった。 そこにはすでにクラスメイトの影はなかったが、エリカといつも一緒にいる女子二人が待ち構えていた。
「お待たせー。連れてきたよ」
「遅いし。超待ったから」
「それがさっき話してたヤツ? へー」
エリカと親しげに言葉を交わすのは、川上アイコと野口イズミだった。 二人はクラスは違ったが、いつもエリカと一緒に行動していて、エリカと同じように制服を着崩し、校則違反のピアスやハデなネイルをしていた。 もちろん、普段カズシと接触することは全くと言っていいほどない。 そんな彼女たちに呼び出され、誰もいない教室で取り囲まれると、気の弱いカズシは不安でいっぱいになってしまった。
「は、原田さん…?」
伺うようにしてエリカの顔を見る。カズシは小柄な方で、二人の身長差はほとんどなかった。
「お前さ。今日の授業中、勃起してたろ? 数学の時」
「え?」
カズシは一瞬、何を言われたかと戸惑った。しかし女の子たちは、弁解の暇を与えずに畳みかけてくる。
「アタシさ、コイツの斜め後ろの席だから、ばっちり見えたんだよね。コイツが必死にチンコいじって、隠そうとしてんのが」
「マジで? 授業中に勃起するとか、超ヘンタイじゃん」
「数学っていったらさあ、ユキエちゃんの授業じゃない? うわあ。先生見て興奮しちゃってるんだあ。最悪―」
女の子たちの口の速さに、カズシがついて行けるはずがない。 次々とまくし立てる言葉を否定したかったが、一方でそれらは大部分が事実だった。
「そ、そんな…。そんなことない…! うっ!」
さすがに大きな声を出そうとしたときに、カズシの呼吸が止まった。 エリカが着用している、超ミニのプリーツスカート。それと紺色のハイソックスのちょうど中間にある、白くて細い膝が、カズシの股間に突き刺さったのだ。
「あっ! ぐぅ…」
数瞬遅れてやってきた、下半身からの重苦しい痛みに、カズシは背中を丸めてうめいた。 それは、ほんの軽く叩き上げる程度の膝蹴りだったが、男を黙らせるにはそれで十分だった。
「うざいんだよ。もう、バレてんだって。男なら言い訳すんな!」
エリカは冷たく言い放った。
「あーあ。キンタマ蹴られちゃった。痛そー。キャハハ!」
うつむき、苦悶の表情を見せるカズシの顔を覗き込んで、アイコが面白そうに笑った。 童顔で、コケティッシュな雰囲気のアイコだったが、その口からはためらうことなくキンタマという単語が出てきた。
「さっきも話したんだけどさ、女の先生見て勃起するヘンタイとかがクラスにいたら、女子はみんな迷惑すると思うんだよね。ていうか、気持ち悪い」
エリカが言うと、アイコとイズミは大きくうなずいた。
「そうだねー」
「ユキエちゃん、ネタにされてるんだろうなあ。かわいそー」
「だからさ。お前みたいなイカ臭いヘンタイは、ウチらのクラスにいらないから。今からお前のキンタマぶっ潰してやるよ」
重苦しい痛みにじっと耐えていたカズシだったが、この言葉にはさすがに耳を疑った。
「え!? そ、それは…何言って…」
「はーい。じゃあ、始めましょー」
「痛かったら、言ってくださいねー。キャハハ!」
戸惑うカズシにかまわず、女の子たちは打ち合わせていたかのように、カズシの両腕を掴んだ。 カズシは抵抗しようとしたが、股間の痛みはまだ下半身に強く残っており、思い切った力が入らなかった。 そこへさらに、エリカがカズシの股間を鷲掴みにしたのである。
「うっ! あああ…」
エリカの右手は、遠慮なしにカズシの睾丸を締め付け始めた。 蹴られた時とはまた違った痛みが、ジワリジワリとカズシの下半身を襲い始める。
「キンタマ潰せば、もうチンコいじんなくてすむだろ。ヘンタイ君?」
「あー、エリカ。アタシにもやらせて」
「アタシも。やってみたい」
女の子たちは楽しそうに、それでいて無慈悲に、カズシの最大の急所を潰してしまおうとしていた。 カズシは痛みにと恐怖に震えながら、必死に叫んだ。
「ご、ごめんなさい! もうしませんから! 授業中に…勃起しませんから!」
「はあ? 何それ? キンタマ潰すなってこと?」
「はい! はい! すいません。絶対、もうしませんから。だから…。あうぅ!!」
カズシが必死に謝る間も、エリカは金玉を握る手を緩めなかった。 彼女にとってはまだまだ本気で握っているわけではなかったが、それでもカズシの二つの睾丸にとっては、かなりの圧力だった。
「マジで? …どうしよっか?」
「えー。マジで。信じらんない」
「男子が勃起しないとか、絶対ウソでしょ。ウチの彼氏とか、デートのときはずっと大きくしてるよ。キャハハ!」
エリカは本気で考えているようだった。その間も、カズシは必死に謝り続けている。 すると、エリカは突然、カズシの股間から手を離してやった。
「分かった。じゃあ、お前のことテストしてやるよ。アタシらを見て、勃起しなかったら、許してやる。でももし勃起したら、その時はマジでキンタマ潰すから。それでいいでしょ?」
金玉を締め付ける圧力から解放されたカズシは、肩で息をしていた。 エリカが提示した条件は、正直すぐに理解できなかったが、彼にはそれを断る選択肢はなかった。
「えー? 何それ? テストってどういうこと?」
「だからさ。ユキエちゃんで興奮するのは、まあしょうがないじゃん。ユキエちゃん、超美人だし。スタイルいいし。けど、アタシたちを見ても興奮するっていうなら、それはマジでヘンタイだから。キモイから。それをテストしてやるってこと」
「ふーん。まあ、いいけどね」
アイコとイズミがうなずいたように、カズシにもようやく状況が呑み込めた。
「じゃあ、お前、チンコ出して。見ててやるから」
「え?」
「チンコ出せって言ってんだろ! 勃ってるかどうか、わかんないじゃん。早くしろよ!」
「あ、ああ…はい…」
脅されるようにして、カズシはズボンのチャックに手をかけて、降ろした。 股間をまさぐっていると、再びエリカの怒声が飛んだ。
「めんどくさいな! ズボンとパンツ脱げよ。よく見えないだろ!」
「は、はい…」
力なくうなずいて、カズシはズボンとトランクスを一気にずりおろしてしまった。 クラスメイトに下半身を晒すなど、死ぬほど恥ずかしかったが、それでも金玉を潰されるかもしれないという恐怖には敵わなかった。 トランクスの下から、縮み上がったカズシのペニスと金玉袋が顔を出した。
「わー。チンチンだ、チンチンだ。キャハハ!」
「皮被ってんじゃん。情けなー」
女の子たちは口々に笑い、エリカもそれを見て、鼻で笑った。
「男のチンコって、汚いよなあ。キモイ。よくこんなのぶら下げるよな」
「それで? どうすんの、エリカ?」
「そうだね。とりあえず…」
エリカが言いかけた時、一番はしゃいでいたアイコが、突然カズシの金玉を足の甲で蹴り上げた。
「えい!」
「うえっ!」
無防備に突っ立っていたカズシは、もろに金蹴りをくらってしまう。 幸い、小柄なアイコの蹴りはそれほど強いものではなかったが、それでもカズシが背中を丸めるには十分だった。
「あーん。キンタマ、痛い、痛い。キャハハ!」
両手で股間をおさえるカズシの真似をして、アイコも自分のスカートの股間をおさえてみせた。
「ちょっと、アイコ。何やってんの?」
「え? あ、ゴメンゴメン。なんかブラブラして、蹴りやすそうだったから、つい。ごめんねー?」
はしゃぐアイコとは逆に、カズシの下半身には痺れるような鈍痛が広がって、今すぐにでも座りこんでしまいたかった。 しかし、それはエリカが許してくれそうにもないので、脂汗を流しながら、必死に耐えている。
「ったく。…まあでも、それいいかもね。コイツが勃起したら、キンタマ蹴り上げてやればいいんじゃない?」
「あー、いいね、それ。面白そう。やろうやろう」
カズシにとっての地獄は、どうやらこれからだった。
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