「それでは、次。中堅の選手は土俵に上がりなさい」
中学生のショウマとレイカが、土俵に上がった。 二人は同級生で、よく知っている同士だったが、まさかこの土俵上で会うことになるとは、ショウマは夢にも思わなかった。
「アンタたち、ウチらのことなめてたでしょ? 西の男子もそうだったよ。女なんかに負けるわけないって言ってた。でも、結果はウチらの余裕勝ちだったんだよね。何でもありの試合だったら、女子が男子に負けるわけないじゃん」
「な、なんだと?」
「今まで女子が出なかったのは、ただ単に裸になるのがイヤだっただけなんだよね。でも今年こそ絶対、神輿は西に持って帰るからね」
レイカは自信ありげに胸を張っていた。すでに予選で西地区の男子たちを負かしている以上、その自信も根拠のないものではなかった。 しかしその態度以上にショウマが気になったのは、レイカの胸であった。 制服の上からでは気づかなかったが、レイカの胸は、中学生とは思えないほど大きかった。 しかも下にチラリと目をやれば、そこには薄目のヘアーに包まれた、レイカの秘部がある。 同年代の女の子の裸を生で見たことのなかったショウマは、土俵際に座っているときから、すでに興奮してしまっていたのだ。
「あ…ちょ、ちょっと待って…」
座っている時には何とかこらえていたが、改めてレイカの裸を目の前にして、ショウマの股間はオスの反応を示し始めてしまった。 堅くそそり立ってきたその肉棒を手で隠し、腰を引いて興奮を抑えようとする。
「どうしたの? 早くしなさい」
宮司がいぶかしそうに声をかけた。
「あー、コイツ、勃起しちゃったんでしょ。サイテー。西の男子もみんなそうだったけどね。ったく、男ってこれだからさ。どこ見てんの?」
「まあ、そうなの? 神聖な神前相撲の最中なんですよ。変なことを考えないようにしなさい」
「は、はい…」
そう言われても、これは生理現象のようなものだと、ショウマは思っていた。 土俵際で座っているリュウタでさえ、向かい側のユズキの裸をできるだけ見ないようにして、平静を保つのが精いっぱいだったのだ。 それが女の子たちの作戦なのか、男の子たちは、相撲を取る前から精神的に消耗させられてしまっていた。
「もう始めますよ。位置について」
宮司にうながされて、やむなくショウマは仕切り線に手をついた。
「プッ。ビンビンじゃん。サイテー」
同じく手をついたレイカの目には、ショウマの股間で彼の肉棒が反り返っているのがよく見えた。
「始め!」
宮司の掛け声とほぼ同時に、二人は立ち上がった。 先程のセイヤの反省からか、ショウマはすぐにレイカの両手を掴みにいった。 金玉を掴まれてしまえば、絶対に逃げることはできないと思ったからだった。
「くっ!」
「んっ!」
実際、レイカはすぐさまショウマの股間に手を伸ばそうとしたのだが、その手をガッチリと掴まれてしまった。 二人は両手を頭上に挙げて、押し合いのような状態になる。 こうなると、力の強いショウマが有利に思えた。 ショウマもまたそう思い、一気に押し倒そうとしたその時、
「くらえ!」
レイカの蹴りが、ショウマの股間を狙って飛んできた。
「うわっ!」
かろうじて後ろに下がり、直撃を避けた。 しかしレイカのつま先のわずかな部分、親指の爪あたりが、ショウマの金玉をかすめたようだった。
「あっ、くそっ!」
かわされたと思ったレイカは、悔しそうな顔をした。 実際、彼女自身は何の手応えもなかったのだが、やがてショウマの顔がゆっくりと歪んでいき、徐々に力が抜けて、両手を離してしまった。
「うぅ…」
むき出しの股間を、両手でおさえて前かがみになる。 何が起こったのか、金玉を蹴ったレイカでさえも一瞬、よく分からなかった。
「え? 今の、当たってたの?」
「くぅ…ぐぐ…!」
じんわりとした痛みが、ショウマの下半身全体に広がっていた。 かろうじて後ずさりし、レイカと距離を保つことができたが、そこから動くことはできなかった。
「ウソー! 今のって、当たった? ちょっとかすったくらいじゃん。それでそんなに痛いの? ウケる!」
予選でも何度か経験していたが、やはり男の金玉は、彼女にとって不思議な急所に他ならなかった。
「ホント、男子ってウケるよね。ちょっと足がかすったくらいで、そんなに痛がるなんてさ。金玉ってバカなんじゃないの? なんでそんなに弱いの?」
神前相撲の真っ最中であることも忘れて、レイカは笑っていた。
「かわいそうだから、ちょっと待ってあげるね。こんなんじゃ、ウチも勝った気がしないからさ」
馬鹿にしきったレイカの態度に、ショウマは怒りを覚えながらも、どうすることもできなかった。
「金玉ガンバ! 金玉ガンバ! ハハハ!」
重苦しい痛みを発する睾丸を抑えながら、レイカの股間をチラリと見る。 そこはうっすらとした陰毛に覆われて、ショウマやセイヤのように、余計なものは何一つ付いていなかった。 ショウマは男に生まれて初めて、女の子をうらやましいと思った。
「ん? また、どこ見てんの? 言っとくけど、ウチのアソコを蹴っても、痛くもなんともないからね」
レイカの言うとおり、彼女のその部分は完璧で、男のように見るからに脆そうな要素は少しもなさそうだった。 それに気づいたとき、ショウマはレイカに対して、どうしようもない敗北感を感じてしまう。
「レイカ! 遊んでないで、さっさと決めちゃいなさい!」
土俵際のユズキが声を飛ばすと、レイカもうなずいた。
「はーい。じゃあ、そろそろ行こうかな」
と、ショウマに近づこうとしたとき、ショウマが前傾姿勢のまま、勢いよくタックルをしてきた。
「あっ!」
不意を突かれたレイカは、そのまま土俵際まで押し込まれてしまう。 足を上げて金玉を蹴ろうとしても、腰を引いた体勢のショウマの股間には届かなかった。 追い詰められたショウマの作戦と、レイカの油断が招いたピンチだった。
「うおお!」
ショウマもまだ下半身に痛みを抱えていたが、懸命に踏ん張って、レイカを押し出そうとした。
「こ、この! いい加減にしてよ!」
大きく踏ん張って、突き上げられたショウマの尻が、レイカの眼下にあった。 レイカはその尻の間に手を突っ込んで、そこにぶら下がっているはずの金玉袋を探り当てると、思い切り掴んだ。
「ぐぎゃあっ!!」
ショウマの悲鳴が響いた。 レイカの手は、ショウマの尻の間から金玉を引っ張り出すようにして捻り上げていた。 そこには一切の手加減はなく、先程とは比べ物にならない、恐ろしい痛みがショウマを襲うことになる。
「降参しないと、潰しちゃうよ!」
「うう…ぐぐぐ…!」
「いいんだね? 潰れろー!」
「ぐえぇっ!!」
レイカが思い切り握りしめると、ショウマの体から力が抜けて、ガックリと土俵に崩れ落ちた。
「それまで。勝者、東のショウマ!」
え? と、レイカは宮司を見た。
「レイカ! 足が!」
ユズキの声にハッとして下を見ると、レイカの足はわずかに一歩、土俵から出てしまっていた。 ショウマの金玉を握りしめた拍子に、踏み外してしまったようだった。
「ウソ―! ウチの負け? もう、このバカ金玉! 潰れろ!」
泣き出しそうになったレイカが、ぐったりと倒れているショウマの金玉を、再び握ろうとした。 慌てて、リュウタがそれを止める。
「お、おい! やめろよ!」
「レイカ! やめなさい!」
リュウタとユズキに止められて、レイカは我に返った。 神前相撲には勝ったものの、ショウマにはすでに意識がないようだった。
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