「リュウ! おい、あんなの反則だろ!」
「えー。ウチの拳法は実戦派だからね。目潰しも金的も、全然アリなんだけど。実戦的な空手は違うのかな?」
チヒロが意地悪そうに言った。 空手部の組手でも、金的に攻撃が入ってしまうことはたまにあったが、その時は組手を中断して、休憩をとってから再スタートするようにしている。
「く…。じゃあ、少し休憩を…」
「そうなの? 実戦に休憩なんかないでしょ」
チヒロの言葉を聞いたナナミは、素早くリュウの後ろに回り込み、高く上げた尻の間に見える金玉の膨らみを見つけた。
「ねえ、まだやる?」
リュウはもはや呼吸もままならないくらいに苦しんでいた。 女の子相手にギブアップすることなど、想像もしていなかった。男のプライドで必死に痛みに耐えていたが、まったく終わりの見えない地獄の苦しみに、そのプライドも崩壊寸前だった。
バシン!
ナナミはつま先を、容赦なく金玉に打ち込んだ。 他の部分に当たっても、痛みを感じないような蹴りだったが、すでに痛めつけられたリュウの金玉は、極端に敏感になっていた。
「あぐっ!!」
リュウは電撃に打たれたように、ビクッと体を震わせて、悲鳴を上げた。
「ギブアップしないの?」
ナナミは楽しそうに、リュウを見下ろしていた。 リュウはついに諦めて、ギブアップしようとする。
「ギ、ギブアッ…ぎゃあ!」
リュウが言い終わる寸前に、再びナナミがつま先を金玉に打ち込んだ。
「えー? なあに? 聞こえなかったよお?」
意地悪そうにほほ笑むナナミ。
「ギブ…ギブ…ぐえっ!」
リュウが言いかけると、ナナミが金玉を蹴る。 それを3、4回も続けると、リュウはもはや全身に力が入らなくなり、横倒しに倒れて、丸くなってしまった。 痛みに顔は青ざめて、Tシャツも汗でびっしょりになっている。 もはや金玉を守ること以外頭にはなく、細い息をしながら、震えていた。
「ねえ、まだやるの?」
ナナミは倒れるリュウの側にしゃがみこむと、すっと手を伸ばして、ジーパン越しにリュウの金玉を掴んだ。 もはやリュウは悲鳴を上げる事も出来なかったが、ハッと息を飲んで、ナナミの手首を握る。しかしその手には、まったく力が入っていなかった。
「お、おい! もういいだろ。もうやめろよ!」
リュウがナナミにやられる様を悔しそうに見ていたユウジだったが、さすがに見かねて声をかけた。
「えー。だってまだ、ギブアップって言ってないし。ねえ、先輩?」
「そうだねえ。降参したいなら、ギブアップって言わないとねえ」
二人はわざとらしそうに言う。
「ねえ、リュウ君、ギブアップしなよ」
「意地はらないでさ」
サキとエリコも声をかけるが、リュウにはもはや戦意はなかった。 痛みで呼吸もままならない状態なので、ギブアップと言いたくてもごく小さな声しかだせなくなっていたのだ。 それでも何とか声を出そうとすると、ナナミが金玉を痛めつけるので、それは悲鳴に変わってしまう。 金玉の痛みは声も出せなくなるほどのものだということを、サキとエリコは理解していなかったが、ナナミとチヒロは十分わかった上で、リュウを苦しめていたのだ。
「ゆ…ゆるして…」
すんなりとギブアップすることが無理だと悟ったリュウは、ナナミに許しを乞うことにした。 普段から空手で体を鍛え、相当の実力をつけていた自分が、こんな小さな女の子に許しを乞う現状に、リュウは思わず涙を流してしまった。 サキとエリコもその様子を見ているのだが、もはやそんなことを気にしている余裕はなかった。 ナナミの手はリュウの金玉をしっかりと掴み、もてあそぶようにコロコロと転がしている。その度にハンマーで叩くような鈍痛が、リュウの下半身を襲っているのだ。
「ん? なあに? 聞こえなーい」
ナナミはわざとらしく耳を向けた。 リュウは半分泣きながら、精一杯の大声で叫んだ。
「許して下さい! お願いします! ギブアップです」
そんなリュウの姿を、サキとエリコは息を飲んで見つめていた。 あんなに逞しい体をして、強さを自慢していたリュウが、ナナミのような女の子に負けてしまっているのだ。 驚くと同時に、不思議な高揚感を、二人は感じていた。
「すごい…」
「アソコをやられると、泣いちゃうんだね…」
そんな囁きが、ユウジの耳にも入る。 ユウジは悔しそうに、それを聞いていた。
「あれえ? ギブアップしちゃうの? 強い強い空手部様が、拳法部の一年生の、しかも女の子にギブアップしちゃうんだ。これは驚きだねえ」
チヒロは大声でそう言った。
「も、もういいだろ! 離してやれよ!」
ユウジはこれ以上、リュウの情けない姿を見ていたくなかった。
「え? 離すって、これですか? この、タマタマ?」
ナナミは確かめるように、掴んだ金玉を引っぱりあげて見せた。
「ああっ!」
リュウは甲高い、女の子のような悲鳴をあげる。 その滑稽な姿に、サキとエリコは思わず失笑してしまった。
「タマタマ、そんなに痛いんですかあ? 大変ですねー、男の人って」
ナナミは楽しそうに笑っている。 リュウはそんな辱めを受けながらも、黙って痛みに耐えることしかできなかった。
「そんなに痛いなら、離してあげてもいいけど。でも、さっきアタシのパンツ見たから、お仕置きね。えい!」
ナナミはそう言うと、両手でがっちりとリュウの金玉を掴み、これまで以上の力を込めてギュッと握りしめた。 その瞬間、リュウの金玉は、袋の中でグリッと変形させられる。
「ぐぎゃあ!!」
リュウは痙攣し、動かなくなった。
「はい、おーしまい! ありがとうございましたー」
ナナミはリュウの金玉から手を離すと、立ちあがってペコリと頭を下げた。 その様子はいかにも可愛らしくて、今まで男に地獄の苦しみを与えていたとは到底思えなかった。
「お疲れ。まあまあじゃない。腕上げたね」
「いやあ、先輩のおかげですよー。なんか、パンツ見せたら簡単に油断して、エッチな人で助かりました」
ナナミは照れ臭そうに言った。 リュウは床にうずくまって震えていたが、サキとエリコがそばに来て、介抱してやろうとした。
「大丈夫? アソコが痛いの? どんな風に痛いの?」
「潰れちゃったのかな。これ、どうすればいいんだろう」
リュウはそんな二人の介抱が、ありがたくも恥ずかしかった。 男の強さを見せつけるつもりが、逆に男にしかない急所の弱さを見られてしまい、泣いて女の子に許しを乞うという屈辱的な姿をさらしてしまったのだ。
「大丈夫だよ。タマタマ、潰れてはいないから。そのうちおさまるから、腰でもトントンしてあげれば?」
ナナミは他人事のように言った。
「腰? こうかな?」
エリコはぎこちない様子で、リュウの腰のあたりを叩いてみた。
「そうそう。トントントンって。良かったねー。タマタマ、お大事ね」
ナナミの言葉が、リュウにはこれ以上ないくらい屈辱的だった。 エリコの介抱には助かったが、それ以上にリュウの男としてのプライドはズタズタにされてしまったのである。エリコとサキに寄り添われながら、道場の隅這いずって、そのままうずくまってしまった。
「さあ。次はアタシとアンタかな? どうする? なんなら、防具をつけてもいいよ。ウチの男子が使ってるヤツがあるからさ」
チヒロは自信満々な様子で、ユウジに言った。 ユウジは内心、防具をつけることに気持ちを動かしていたが、挑発的なチヒロの態度に、ためらっていた。
「ああ、あのタマタマにつけるカップですか? 着けた方がいいよー。ちょっと動きにくいかもしれないけど。アレが無いと、男の子は痛いんでしょう? 大変だよねー」
ナナミはさも気の毒そうに言ったが、それは逆にユウジのプライドを刺激した。
「い、いらねえよ、防具なんか。お前の攻撃なんか、当たらねえんだからな。俺は、リュウみたいに油断しないぞ」
ユウジは強がってそう言った。 チヒロはナナミよりもずっと背が高く、拳法の経験も豊富なことが、空手をやっているユウジには分かっていた。 それを考えると、正直不安にならないでもなかったが、男の尊厳を守るために、ここは強がっても防具をつけるわけにはいかなかったのだ。
「あ、そう。じゃあ、やろうか。どうなっても知らないけどね」
チヒロは小さく笑いながら言うと、さっそく道場の中央に立った。 ユウジはちょっと気後れしていたが、やがて自分を奮い立たせて、チヒロの前に立った。
「あ、始めるんですか? 先輩、がんばれー!」
「よろしくお願いします」
「……」
チヒロは礼をして構え、ユウジは無言のまま、構えた。 先ほどのリュウとは違い、ユウジは極端に金的攻撃を警戒しているようだった。
「あれ? こないのかな? じゃあ、こっちから行こうかな…。えい!」
チヒロはごく自然な様子で間合いを詰めると、鋭い前蹴りを放った。 金的を狙ったものではなかったが、ユウジは反射的に腰を引いてかわした。
「ほらほら!」
チヒロは間髪いれず、突きや蹴りでユウジを攻め立てていった。 さすがにその攻撃は鋭いもので、ユウジはかわすのに必死だった。 しかしそれ以上に、ユウジの関心は金的攻撃に絞られていたため、どうしても腰がひけてしまう。
「おら!」
チヒロの攻撃の合間にチャンスがあっても、ユウジは腰の入った攻撃ができなかった。 何より足を上げて股間に隙ができることを怖がっていたため、ユウジは蹴りが出せなかった。 それを見抜いていたチヒロは、ホットパンツから伸びた長い足を使って、遠い間合いから攻撃をしかけるようになる。 自然、ユウジは防戦一方になってしまった。
「フフ…。それが空手なの? そんなんで勝てるの?」
チヒロはまだ勝負を決める気はないようで、余裕を見せながらユウジをあしらっていた。 ユウジは焦っていたが、それでも金的の恐怖が、思い切った攻撃をためらわせていた。 その様子を見ていたサキとエリコの囁きが、ユウジの耳に入る。
「なんか、ユウジ君、怖がってない?」
「あれだよ。やっぱりアソコ蹴られるのが怖いんじゃない?」
「あー、そうなんだー。でも、あんなに腰引いて、カッコ悪いね」
彼女たちのそんな会話が、ユウジのプライドに火を付けた。 注意していればかまわないだろうと、ユウジは大きく踏み込んで、回し蹴りを放った。
「おりゃ!」
しかしチヒロはそんなユウジの思惑を予期していたかのように、ユウジの回し蹴りをすっとかわすと、ごく軽い蹴りを、がら空きになったユウジの股間に放った。
「うっ!」
と、ユウジの動きが止まる。 チヒロは余裕の表情で、それを眺めていた。 思わず股間をおさえそうになるのを、ユウジは寸前でこらえた。 その様子を、サキとエリコが興味深そうに見ている。
「え? 今ので痛いの? マジで?」
「ほら、けっこう痛がってない? やっぱり、アソコって急所なんだねー。面白くない?」
金玉の痛みに苦しむリュウを介抱してやりながらも、やはり二人にとってはユウジが男性特有の急所に怯え、苦しむ姿を見るのがおかしかった。 チヒロもまた、得意げな表情でユウジを見下ろしている。
「あ、ごめんね? 手加減したけど、痛かった?」
その顔には、言葉ほどの申し訳なさはまったく読み取れなかった。 自分は決して味わうことのない急所の痛みに苦しむ男の姿を、蔑んでいるような微笑みを浮かべている。 ユウジは気を取り直して、再びチヒロに攻撃をしかけた。
「くそっ! この野郎!」
「お! そうそう。その調子! さっすが男の子!」
一発でも金的に入ると、男の動きは途端に鈍いものになってしまう。 チヒロはその経験から察して、ユウジの動きが万全の状態に戻るには、まだ10分以上の時間が必要だと思っていた。 それを分かっていながら、さらに組手を続けるつもりなのである。
「えい! これならどうだ!」
力んだ攻撃で完全に体が流れてしまったユウジの側面に回り込み、チヒロは再び金的蹴りを放った。 今度もまた、力を抜いた、軽い威力の金的蹴りである。
「ぐえ!」
それでも、ユウジの額に汗を浮かべさせるには十分な威力だった。 先ほどのダメージも残っていたので、今度は内股になって、前かがみになってしまう。 動きは止まってしまったが、チヒロは追い打ちをすることはなく、楽しそうにユウジの様子を見ていた。
「ハア…ハア…」
必死の形相で、痛みに耐えるユウジ。
「うーん、キンタマ痛―いって感じ? フフフ…」
チヒロはおどけて、自分の股間を両手でおさえて内股になってみせた。 それを見て、ナナミだけではなく、サキとエリコも笑う。 ユウジはしかし、それに反応するどころではなかった。
「ねえ、空手の強さを見せてくれるんじゃなかったの? 今、認めるなら許してあげるよ。空手は拳法にはかないませんって。キンタマを蹴られたら、僕は女の子にも負けちゃいますってね」
チヒロはあざけるように笑った。 それを聞いたユウジは、気力を振り絞って体を立て直し、鬼のような形相で構えた。
「ふ、ふざけんな! お前の蹴りなんか、きいてねえんだよ! なめんじゃねえ!」
チヒロはその言葉を聞いて、一気に表情を冷たくした。
「あっそう。せっかく人が親切で言ってあげてんのに、そういう態度とるわけ? ホント、男って馬鹿だねえ。キンタマ潰されないとわかんないか」
潰すという言葉を聞いて、ユウジは思わずゴクリと唾を飲みこんだ。
「あーあ。動いたら、暑くなってきたなあ。脱ごうっと」
突然、チヒロはそう言って、その場で着ていたニットを脱ぎ始めた。 ニットの下には何も着ておらず、チヒロの白い肌と豊満な胸を包んだ黒いブラジャーが、ユウジの目に飛び込んできた。 その大きな胸の谷間に、ユウジは状況も忘れて、見入ってしまう。
「ほら。あげる」
チヒロは自分の胸を凝視するユウジに向かって、脱ぎ終わったニットを投げた。 ユウジの目の前にニットが広がり、視界が奪われる。
「えい!」
チヒロは一瞬で間合いを詰めて、渾身の金的蹴りを放った。 力の抜き具合、入れ具合、足首のスナップ、蹴りあげの角度、すべてが完璧に近い、見とれるほど美しい金的蹴りだった。
パシィン!
という音も、ユウジには聞こえなかった。 ただ、踵が浮き上がるほどの衝撃が股間の真下からきて、自分の睾丸がチヒロの足と恥骨の間で潰れるギリギリまで圧迫されるのを感じた。 その瞬間、寒気が走るほどの痛みが背筋を突き抜けたが、さらにチヒロの足はユウジの金玉の裏をえぐるようにこすりあげて引き戻される。 金玉の神経が集中している副睾丸が捻るように圧迫されて、巨大な重りを叩きつけられたような感覚が襲ってきた。
「ぎゃばっ!!」
奇妙な叫び声を上げて、ユウジは顔面からべちゃりと床に倒れ込んだ。 堅い床の上で、顔面にも相当の衝撃があったはずだが、そんなことも問題にならないくらいの痛みが、睾丸から立ち上ってきている。
「はぐぅう!!」
もはや恥も外聞もなく、金玉を両手でおさえて、足をじたばたさせて、その場でゴロゴロと転がった。 それを見ていたサキとエリコは、最初は驚いたが、あまりにも滑稽なユウジの姿に、笑いをこらえきれなくなった。
「ちょっと、マジで? どんだけ痛いの?」
「ヤバイ、ヤバイ。おかしくなってる」
二人は初めて見る男の情けない姿に爆笑していたが、うずくまっていたリュウは、チラリとその様子を見て、ゾッとしたような表情を浮かべていた。
「手応えありましたね、先輩!」
チヒロはユウジの苦しむ様子を、当然のような顔で見つめていたが、ナナミの言葉にうなずいた。
「ちょっと、本気出しちゃった。潰れたかなあ」
やがてユウジは転がるのをやめて、亀のように丸くなって、震えだした。 口から涎を流して、鼻水を垂らし、目には涙が光っている。
「おい、まだ終わってないぞ」
チヒロはユウジの側にしゃがみこむと、いきなりユウジのジーパンに手を突っ込んで、トランクス越しにユウジの金玉を掴んだ。 ユウジは抵抗したかったが、体にまったく力が入らない。
「ぎゃう!!」
ただ背中を丸めて、痛みに震えることしかできなかった。
「アンタはもう、ギブアップしても許さないよ。拳法を馬鹿にした罪を、このキンタマで払ってもらうからね」
チヒロはそう言って、ユウジの二つの金玉を捻りあげた。
「ぎゃああ! ご、ごめんなさい! ごめんなさい!」
あまりの痛みに、ユウジは我を忘れて叫んだ。
「今ごろ遅い! オカマになって後悔しな!」
チヒロはしかし、手を緩める気配がない。 ユウジの金玉は、万力に挟まれたように変形する。
「すいませんでした! 許して下さい。何でもしますから…」
「ふーん。じゃあ、まず、空手は拳法にはかないませんって、認めな」
チヒロは少し、手を緩めてやった。
「空手は拳法にはかないません! すいませんでした!」
「よおし。じゃあ次は、僕は女にはかないませんって言いな。キンタマ蹴られたら、小学生の女の子にも負けちゃいますってね」
「そ、それは…」
ユウジに残されたわずかな男のプライドが、ためらわせた。 しかしそんなことも吹き飛ばすほどの痛みが、再びユウジの金玉を襲う。
「違うの? じゃあ、潰すね、コレ」
チヒロが再び、金玉を握りしめたのだ。
「あああ!! い、言います! 俺は、女には絶対にかないません! 金玉蹴られたら、小学生にも負けます! 認めますから、離して…」
「よおし。それでいいんだよ。ホントのことじゃない。弱っちいくせに、二度とでかい口たたくんじゃないよ!」
「わ、わかりました。わかりましたから…」
ユウジは今にも気を失いそうな痛みの中で、必死にチヒロに謝った。
「どう? アンタ達も、空手と拳法と、どっちが強いか分かったでしょ?」
チヒロはサキとエリコに向かって、言った。
「あ、はい。そうだねー。ユウジ君たち、ちょっとカッコ悪かったねー」
「だねー。アタシも習うなら、拳法の方がよさそうだなー」
「でしょ? 拳法部は、いつでも新入部員を歓迎してますよ!」
ナナミが胸を張って答えた。
「そうそう。ちゃんと稽古すれば、女の子でも男に勝てるようになるから。こんな風にね」
そう言うと、チヒロはユウジの金玉を一つだけ握り、これまでにない力を加えた。
「ひいぃい!!」
ユウジは奥歯を噛みしめて呻いた後、泡を吹いてゴトンと床に倒れてしまった。
「あれ? 気絶しちゃった?」
チヒロはようやくユウジの金玉から手を離すと、顔を覗き込んで、笑った。
「ま、このくらいにしといてやるか。おい、アンタ、コイツの後片付けしとけよ」
チヒロはいまだに痛みに震えているリュウに向かって、言った。 リュウはハッとして顔をあげる。
「言うこときかないと、キミのも潰しちゃうよ?」
その顔をナナミが覗きこんで笑う。 リュウはうずくまりながらも、必死にうなずくことしかできなかった。
「リュウ君、じゃあ、アタシ達もいくね」
「そうしよっか。頑張ってね」
サキとエリコは、連れだって道場を後にした。 その様子を、ナナミは面白そうに眺めた。
「あーあ。ふられちゃった。でも、あっちの人はタマタマ潰れちゃったから、もう関係ないか」
「バーカ。潰してないよ。ま、しばらくは使いもんにならないかもしれないけどね」
「えー。そうなんですか? 先輩、怖いなー」
二人は笑いながら、道場を出ていった。 リュウとユウジは、うずくまったまま、しばらく立ち上がることもできなかった。
終わり。
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